--オーストラリアも研究されていますが、日本と比較するとどのようなものでしょうか。
オーストラリアの憲法自体は、20世紀初頭にできていますので、日本より半世紀古いのです。憲法そのものより、国家運営など関連する法や運営の方法、直接的には選挙制度に興味があったので留学しました。オーストラリアは強制投票制なんですよ。また、区割り委員会を作って定期的に投票価値の格差を是正することや、1票の格差が約2倍を超えたら自動的に選挙区を分けることを法律で定めています。第三者機関が強制的にやるのです。イギリスにならって小選挙区を採用していますが、投票価値の平等は厳格に実現しています。わが国は未だにこの問題に苦しんでいますが、オーストラリアのシステムを参考にすべきだと思います。議員にとっては自分たちの利害にかかわることだけに、簡単には決定できない問題です。実質的な決定権を持たせた第三者機関を作ればいいだけですので、わが国の国会議員も前向きな決断をしてほしいですね。
オーストラリアに留学したのはもう随分と前のことですが、日常生活の中で日本よりも進んでいると感じることが多々ありました。移民の国ということもあり、平等については法律上徹底していました。バリアフリー化も進んでいる印象を受けました。日本も東京五輪があることですし、見習うべきですね。
--憲法や法律に興味を持ったのはいつごろですか。
小学生のころから比較的良く新聞を読んでいたので、何となく政治や社会問題に興味を持っていました。高校生のころに世の中の基礎は法律だろうと感じたので、法学部への進学を決意しました。大学では佐藤功先生(上智大名誉教授、東海大学法学部初代学部長、故人)の憲法講義に感銘し、先生の憲法ゼミに入りました。
−−東海大法学部の特色を教えてください。
海洋・宇宙法や医療の法と倫理などのめずらしい授業があります。統治機構(総論)など最小限の必修科目はありますが、基本的には自由なカリキュラムになっています。将来の目標を見据えて、その目標実現に有益な科目を選択できます。他学部の講義も受講できますので、総合大学のメリットを生かせます。学生にはよく言うのですが、法学部は大化けできる学部です。法学部で勉強して、司法試験や司法書士、行政書士などの国家試験に挑戦して合格することができるのですから。
--今後の研究テーマは?
残された期間はあまり長くはありませんので、これもまた答えにくい質問ですね。やっておきたいことの一つは、憲法制定時期のさまざまな事がらの再確認です。なんせ生まれる前のことなものですから。もう一つは、ロシア憲法でしょうか。東海大学はソ連時代から交流を続けてきていますが、私自身はロシア憲法を全く承知していません。東海大学の教員として、少しは勉強しておこうかなと思っています。
--若者にメッセージを。
夢と希望を持ってそれに向かってがんばりましょう。目標があれば、がんばれるものです。
東海大学法学部教授
吉川 和宏(よしかわ かずひろ)
1953年3月、北海道芦別市生まれ。71年に上智大法学部に入学し82年、同大学院博士課程を満期退学。84年、東海大法学研究所(現法学部)講師。96年から教授。2006年4月〜12年3月、法学部長を務める。