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「命を守る行動」 - 気象庁のスパコンは動いていたのか
伊豆大島は、ずっと昔、一度だけ訪れたことがある。熱海から船に乗って行った。現在は高速ジェット船で45分だが、当時は2時間位かかった記憶がある。波が荒くて船室が揺れ、船酔いする乗客もいた。元町港に着き、泊まった民宿もその周辺だっただろう。それっきり足を踏み入れてないが、伊豆大島は私には近しい存在で、いつも空の上から見ている。帰省先から東京に帰るとき、大島上空の付近で「当機は間もなく着陸態勢に入ります」のアナウンスが流れる。「シートベルトをしっかりお締めの上、」の案内と共に減速降下が始まる。機体が大きく左に傾いて旋回を始め、左に眺望していた富士山が消え、窓いっぱいに相模灘の海が広がり、その下奧からピーナッツのような形の黒い伊豆大島が視界に入ってくるのだ。飛行機の操縦士は、伊豆大島を羽田への航空路の中継目標点としていて、それを目視で捉え、言わば左の主翼を伊豆大島に突き立て、左翼をコンパスの軸のようにして左旋回する。そして東京湾に侵入する。あるいは房総半島へ迂回する。西から東へ直線で向かっていた飛行機は、伊豆大島上空で左90度に針路を変え、北に向かって降下する。着陸モードになる。そのとき、三原山がくっきり見え、波浮港がきれいに見える。島の海岸線に立つ白波が見える。だから、伊豆大島は毎度の旅のなじみであり、東海道中の長旅を江戸に帰ってきた者の多摩川みたいなものなのだ。


空前の土砂崩れ災害に遭った元町地区は、伊豆大島の首都(主邑)であり、島の政治と経済の中心地である。島の中で最も活気のある場所。ここに大島町役場があり、玄関港である元町港がある。島の全9地区の中で世帯数も人口も最も多く、町の全人口8200人のうち、32%の2600人が元町地区に集中している。今回、ここで50人が犠牲になり、100棟以上の家屋が全壊の被害を受けた。火山灰の土砂が堆く積もった土地面積は広大で、行方不明者の捜索さえままならない。復旧と復興は大丈夫だろうかと心配になる。昨夜(10/17)、民放テレビは死者行方不明者の名前を公開したが、予想したとおり高齢者が多い。27年前、1986年の三原山噴火と全島脱出のとき、大島町の人口は1万人を超えていた。現在は8200人にまで減少していて、過疎化と高齢化が著しく進行している。大島町の首都圏であり、言わば、島社会全体の中では相対的に若年世代が住みやすい環境と思われる元町地区が、このような深刻な打撃を受け、しかも、またいつ次の土砂崩れが起きるか分からない不安の中にある状況を考えると、この地域の復興と再建が容易ではないことが窺われる。島で生活して子育てしようとする若者の意欲を下げ、島を離れる動きを加速化してしまうのではないか。それが気がかりだ。再生のためには若い力が要る。財力のある国と都には、早急に復興計画に着手し、島の住民が将来に希望を持てるようにして欲しい。

何度も繰り返しで恐縮だが、私が言いたいことは、台風接近のニュースでテレビ報道が埋まった10/15夜に、NW9の大越健介でも、報ステの古舘伊知郎でも、こう言えばよかったということである。「たった今、入った情報です。気象庁によりますと、現在、伊豆半島沖の太平洋上で猛烈に強い雨雲が発達中で、今夜の日付を跨いだ未明から早朝にかけて、特に伊豆大島周辺で記録的な豪雨になるという予想です。局地的に短時間に集中的な大雨となり、土砂崩れや河川の氾濫を惹き起こす危険があります。この地域にお住まいの皆様は、どうぞ厳重な注意と警戒をお願いします。危険を感じたならば、ただちに身を守る行動をとって下さい。繰り返します...」。こう言えばよかった。町長の避難勧告とか、町の防災無線とか、そんなもの以前に、テレビを見ている大島町の住民に、ダイレクトにそう伝えればよかったということだ。気象庁の「特別警報」の発表の基準と条件とか、そのような官僚の手続き問題はどうでもよいことで、伊豆大島の住民の生命を守るために、気象庁とマスコミが咄嗟の行動に出ればよかった。とにかく間違いなく言えることは、元町地区の人々は、10/15の夜にニュース番組を見ていて、テレビの台風情報を注視していたということだ。高齢者は必ず習慣でテレビを見ている。特にNHKの報道を信頼し、NHKニュースを見ていれば安心だと信じている。大越健介が、井田寛子が、伊豆大島の島民に危険を報せてやればよかった。

そんな大雨が降る真っ暗な夜中を避難しろと言っても、却って危険じゃないかという反論もある。一理あるが、やはり、危険発生を予め覚悟して身支度し、起きたまま緊張して待機するのと、何の警戒もなく消灯して就寝したのとでは、実際に災害に直面したときの対応と行動が違う。つまり、短い時間で、まさに「命を守る行動」をとることができる。上に書いたようなアナウンスが事前にあれば、NHKがNW9で放送していれば、そこから住民個人が各自の判断で、どこにどう動いて命を守るかを考え準備することができた。貴重品と水と着替えをリュックに詰めてとか、家族全員と打ち合わせをしてとか、近所の親戚に電話をしてとか、東京にいる娘や息子に連絡してとか、そういう、個人にとって必要なことができる。ひょっとしたら、それが最愛の者との最後の会話になる場合もある。だから、災害のときに「特別警報」的なものが必要なのは、何も避難所へ逃がして集めてとかの、単純な防災行政上の住民行動のためだけではないのだ。「命を守る行動」を各人に判断させ、短い時間で選択させなくてはいけない。その伝達と説得が可能な媒体はテレビだけであり、最も有効なコミュニケーション手段がテレビなのである。伊豆大島で雨脚が強まり、1時間あたり50ミリを超える豪雨になったのは、10/16の午前0時以降である。だが、10/15の午後9時から午後10時の時点で、4-5時間後の台風近辺の雨雲の発達や分布や変容は、気象庁は十分にシミュレーションして予測できていたはずなのだ。

どのエリアでどの規模の降雨量になるかは、数値解析して高い精度で掴んでいたはずである。その情報をNW9や報ステで放送させればよかった。そのために気象庁は日立製の最新鋭スパコンを稼働させている。気象庁が昨年(2012年)6月から運用を始めたスパコンは、「台風や局地的な大雨に対する予測精度の向上や防災気象情報の高度化」のために導入したものだ。気象庁の発表資料には、「新しいスーパーコンピュータでは、局地的な大雨等の従来予測の難しかった規模の小さな現象の予測を目的とした局地モデル(別添参照)の運用を新たに開始する予定です」とある。この話は、NHKの7時のニュースでも(得意気に)紹介されていた記憶がある。資料の別紙にあるように、気象庁はこのスパコンによって、従来の水平分解能5kmのモデルから、水平分解能2kmのモデルへと分析精度を向上させていた。測定範域のメッシュを細かくして、より精緻で精密な気象予測ができるようになったわけだ。おそらく、この高性能スパコンの運用で謳っている「局地モデル」の技術が、今年(2013年)の8/30から施行された「特別警報」制度の裏づけ(物質的土台)なのだろう。局地の大雨情報をより正確に予測できるシステムを整備できたから、「特別警報」で国民を新型災害(短時間局地豪雨)から守るように計らったのである。今回、気象庁は必死でアリバイを言い、「府県レベルの広がりがなかったから」と弁解するのだが、それは制度(紙の上)の問題であって、システムは「局所モデル」で予測を出力している。

伊豆半島沖の洋上で急速に雨雲が発達し、凶暴な前線が発生し、三原山の上に悪魔の豪雨弾を落下させようとしていたとき、伊豆大島の住民が注視していたテレビ報道(NW9、報ステ)は、新橋のカプセルホテルが満室だのと、台風ネタの些末な漫談を流していた。台風前夜のテレビ報道は、必ずと言っていいほど、レポーターを新宿駅南口や渋谷駅ハチ公口に立たせ、夜遊び客や通勤客が歩く絵を撮って中継で流す。定番の台風ネタだ。何かまるで、日本中のテレビの視聴者が、渋谷駅や新宿駅を利用するサラリーマンとその家族であるかのように報道する。余裕を持って早めに出勤しろとか、強風に注意しろとか、そんな話でニュースの時間を埋める。NHKの職員と家族に(私的に)見せるための中継かと疑う。首都圏の都市部に住む者以外のほとんどは、1か月前の嵐山の洪水の映像を思い出し、この10年に一度の台風の雨で裏山は大丈夫だろうかとか、近くの川の水が溢れないだろうかとか、そんな心配をしながら画面に見入っていたはずだ。思い出すのは、3.11のとき、三陸沿岸の諸都市が津波で壊滅状態になり、街中が火災に包まれていたとき、東京のテレビ局は、渋谷駅東口の長いバス待ち行列だとか、甲州街道や綱島街道を徒歩で帰宅するサラリーマンの姿を見せ、こっちの方がずっと重大だと言わんばかりの報道をしていたことだ。2年半前の3/11の夜のマスコミ報道と、今回の10/15の夜のマスコミ報道は意味が同じだろう。思想が共通している。離島の住民だの、地方の高齢者だの、そんなものはどうでもいいのである。関心の対象外なのだ。

離島の住民だって税金を納めている。その税金で気象庁は高額なスパコンを購入し、気象予測と防災情報のシステムを運用している。「府県の広がりのない」気象環境の地域に住んでいても、同じ日本国民なのであって、気象庁の提供する行政サービスを等しく享受する権利がある。政府の防災システムの傘の下に等しくカバーされ、他の住民と同じく生命と安全を守ってもらう権利がある。離島だから差別されなければならない理由はない。離島の住民だってNHKに受信料を払っている。高い受信料をNHKに支払った分、台風についての正確な防災情報の提供を期待して、寝る前に大越健介のNW9を見るのだ。NHKが正確な台風情報を放送することは、高い受信料の対価である。NHKが何も言わなかったから、台風26号の夜、大島町の人々は安心して眠りについた。今回、土砂崩れで犠牲になった50人は人災(過失・事件)の被害者だ。その責任は気象庁とNHKにある。


by thessalonike5 | 2013-10-18 23:30 | Trackback(1) | Comments(0)
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