- 糖新生
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(1)筋肉の乳酸から糖新生
筋肉でブドウ糖が燃えると乳酸が生じて筋肉内に貯まります。
乳酸は疲労物質で筋肉内に貯まると筋肉が収縮できなくなります。
乳酸は血液を通じて肝臓へ送られ、乳酸2分子からグルコース1分子が合成されて筋肉に返されます。
この糖新生によって筋肉の疲れが解消されます。
激しい運動後に軽い有酸素運動を行うと、血行を促進するので疲労物質の回復が早くなります。
(2)アミノ酸プールから糖新生
グルコースが不足すると、肝臓は血液中のアミノ酸からグルコースに合成します。
血液中の脂肪酸濃度が増加すると、肝臓のグリコーゲン分解酵素の活性が低下し、肝臓のグリコーゲンの分解がおそくなり、代わってエネルギー源が脂肪へ切り換わりますが、その間も肝臓のグリコーゲンは減少を続けます。
アミノ酸の糖新生が始まってから8時間が経過すると、計算上は肝臓のグリコーゲンが枯渇するはずですが、グリコーゲンが枯渇しては困るので、代わって糖新生が行われます。
- 糖新生はなぜ起こる?
人体には膨大な量のエネルギーが皮下脂肪に蓄えられています。
心臓、肺、消化器、肝臓などすべの臓器は脂肪が痩せるので、水さえ飲めば1ヶ月くらいは生き延びられるくらいの脂肪が貯蔵されています。
人体には膨大なエネルギーが蓄えられていますが、ただ1つだけ困ったことがあります。
それは、脂肪からブトウ糖が合成できないことです。
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私たちの大切な脳のエネルギーはブトウ糖なのですが、脂肪からブトウ糖が合成できないのです。
もしも、脳が脂肪を燃やせるのであれば、私たちのダイエットは簡単になるのですが、脳細胞は脂肪を燃やせないのです。
おまけに、脂肪からブトウ糖を合成することもできません。ブトウ糖はアミノ酸からしか合成できません。
肝臓が血液中のアミノ酸からブトウ糖を合成します。そのことを糖新生といいます。
- 糖新生は真夜中でも起こらない
脳は1時間に6gのブドウ糖を消費します。脳にはブトウ糖を貯蔵する場所がなく、肝臓に貯蔵されています。肝臓は約13時間分のブトウ糖を貯蔵することができます。
食後13時間が経過すると、肝臓が枯渇しますが、脳のブトウ糖が枯渇しては困りますから、糖以外の物質からグルコースを合成します。それが、糖新生です。
人体のブドウ糖消費量がわかっているので、食事に含まれる糖の量と経過時間がわかると、肝臓のグリコーゲン残量を知ることができます。
パソコンにこの計算プログラムを組み込んで、グリコーゲン残量を観察すると、糖新生は滅多に起こらないことがわかります。
たとえ、就寝時に腹ペコであっても、夜中に糖新生が起こることはありません。
- 炭水化物抜きダイエット
ダイエットでエネルギーをマイナスにすると、エネルギーの不足分が体脂肪で補われます。
肝臓、心筋、呼吸筋、消化器、筋肉は脂肪を燃やせるので、これらの臓器ために糖新生が怒ること歯ありません。
糖新生が必要な臓器は脳と赤血球のみです。
脳の血管の関門は細くて、ブドウ糖しか通過できないので、脳のエネルギーが不足したときにのみ糖新生が必要になります。
つまり、炭水化物抜きのダイエットをしたときにだけ、糖新生が必要になります。
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糖新生によって筋肉が失われるのは、炭水化物抜きのダイエットをしたときだけです。
1日に144gの炭水化物を摂ると、糖新生が行われず、筋肉が失われることはありません。
また、糖新生は、最初は血液中のアミノ酸からブトウ糖が合成されます。
ところが、炭水化物抜きダイエットのように、炭水化物の不足が長く続くような場合には、血液中のアミノ酸がなくなってしまします。
そうなるど、身体が筋肉をアミノ酸に分解して血液中に放出し、肝臓がブトウ糖に合成します。
炭水化物はブドウ糖でできています。炭水化物を制限しすぎると、ブドウ糖が不足するので、カラダが不足分を補うためにアミノ酸からブドウ糖を作り出します。ですから、炭水化物抜きダイエットは、脳のエネルギーに関しては絶食と同じなのです。
いくら肉や野菜をたくさん食べても脳に関しては絶食なので、炭水化物抜きダイエットでは筋肉が減っていくのです。
炭水化物は、摂り過ぎると脂肪になりますが、少なすぎると、筋肉が潰されます。
ですから、どんなダイエットでも、多すぎず少なすぎないように摂ることが必要です。
筋肉が失われるような栄養状態は飢餓状態ですから、そのような状態は長くはつづきません。このことを知らないと摂食障害に陥ります。
それでは、どの程度の炭水化物が必要なのでしょうか?
左表をよく読んでください。
- 糖新生で補う
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糖質の摂取量が180gを切ると、糖新生がおこる。
赤い点線は180gのライン。
- 1日中食物のことばかり考える

空腹になると、脳が空腹信号を出して次の食事を促します。ところが、食べても食べても、蛋白質や野菜ばかりで炭水化物が入ってこなければ、血糖が上がらず、脳はいつまでも空腹信号を出し続けます。これが、1日中食物のことばかり考える理由です。
朝、ご飯1杯を食べると、その日は食べもののことが気にならなくなります。糖質はどんなとダイエットきでも100g以上は摂らなくてはなりません。
- 食べれば食べるほどお腹がすく
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ある人は、食べ始めると食パン1斤とかアイスクリームホームサイズ1パックとかを一気に食べてしまいます。
食べれば食べるほど空腹感が増す感じがして、さらに食べたくなるので、これが過食の異常なところで、だから自分は病気なのだと思い込んでいいます。
しかし、これは病気ではありません。
皆さんは食事を抜いたり、運動した後、何も食べないでいると気分が悪くなったりしたことがありませんか?
人は空腹になると、体脂肪が溶け出し、肝臓がアミノ酸を材料にブドウ糖を作り出して、脳に供給します。
この状態で気分が悪くなる場合もあるし、気づかない場合もありますが、長くつづくと低血糖になり、気分が悪くなります。
糖質を1日に100g以上摂ると、糖新生はまれに睡眠中に起こりますが、炭水化物抜きダイエットなどの極端なダイエットでは常に起こります。
もしも、糖新生が盛んに行われているときに不用意に炭水化物を摂取すると、急激にインスリンが分泌され、糖新生に急ブレーキがかかります。
このとき、血糖が急激に低下しますが、胃で炭水化物が分解されて、小腸で吸収されるまでに15分以上かかるので、それまでの間は急激なインスリンのために低血糖状態がつづきます。これが耐え難い空腹感を起こします。
この現象は異常ではなく、誰にでも起こる現象です。原因は、糖新生が起こるような栄養状態をつづけたことと、不用意に炭水化物を摂取したことにあります。
- 15分ルール
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アメリカの糖尿病教室では、15分ルールというのを最初に教わります。15分ルールというのは、低血糖時には炭水化物を15g食べて15分待ち、なお空腹であれば15gを食べるというルールです。
ここで覚えなければならないことは、お腹がすきすぎたときは炭水化物を一気に摂取してはならないことです。アンパン半分とかクッキー2枚とかを食べて15分待ち、それでも空腹であればまた食べるというルールです。
次の機会に、このルールを実行してみてください。そうすれば、過食でも何でもなく、空腹を放置したことが原因だったことがわかると思います。
- 絶食1〜3日
糖新生は1日以上の絶食で起こります。
左図は、基礎代謝1800Kcalの人が1日以上絶食したときのエネルギー状態です。
左図の状態では、1日あたり75gの筋肉と160gの脂肪が分解されて、180gの糖新生が起こります。
- ケトンモード
上の人がさらに絶食を続けると、身体は省エネモードになります。
上図では体脂肪から出たFFA(脂肪酸)60gが肝臓にまわって糖新生に利用されていますが、ケトンモードでは、この経路がなくなって、脂肪酸160gがケトン体の合成に使われています。
ケトンモードでは、脳の活動も省エネモードになります。
ケトン体は水溶性で脳の血管が通れるので、省エネモードでは脳はケトン体を使います。
このとき、脳のグルコース消費は44gに減少し、筋肉の分解が1日あたり25gに減少、糖新生も1日あたり80gに減少します。
絶食を続けるか、または、炭水化物を抜くと、3日目あたりから身体から酸っぱいケトン臭が発生します。
- ベータ酸化の亢進とは
脂肪酸のβ酸化が亢進するとケトンモードになりますが、普通はベータ酸化が亢進することはありません。
脂肪酸が利用されるには、脂肪酸がベータ酸化されてアセチルCoAになり、TCAサイクルに入ってエネルギーが取り出されます。
この経路が順調に回っているかぎりベータ酸化の亢進が起こることはありません。
ベータ酸化の亢進が起こるのは、グルコースまたはアミノ酸の供給が途絶えてピルビン酸が得られなくなり、脂肪酸からのアセチルCoAがTCAサイクルに入れなくなったときのみです。
次のときに起こります。
・絶食
・炭水化物抜きダイエット。
・重症の糖尿病
注:
糖質制限食や炭水化物抜きダイエットでは蛋白質を摂取するので、ベータ酸化の亢進が起こらずケトンモードにならない。
- 断食時のエネルギー
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