イソナイト処理について 忘れたらアカン、ものづくり
忘れたらアカン、ものづくり のブログを書いている、マーシーです。
今日は、イソナイト(タフトライド)処理について書いてみます。
■ イソナイト(タフトライド)処理とは
タフトライド処理は、ドイツのデグッサ社が考案し、商標登録していたもので、
現在国内ではイソナイト処理といわれています。このコンテンツは、これ以降イソナイ
ト処理とします。
イソナイト処理とは、主としてシアン化カリウム(KCN)55~60%、シアン酸
カリウム(KCNO)33~35%からなる、溶融塩(温度は520~570℃前後)中で、被処理品
を処理する方法です。
熱分解及び酸化分解により生成するCOとNが被処理品の中に拡散浸入していきます
(ただし、実際は温度が高く、Nが主体となって拡散浸入していきます)。通常は軟窒
化または低温浸炭窒化といいます。
■イソナイトでの硬化の仕組み
イソナイト処理による硬化層の評価は、
(1)窒素の侵入による硬さ増加度
(2)窒素の侵入による硬化の深さ
によって決まります。これらの程度は処理される材料の化学成分によって変化します。
図1は、鋼に含まれる合金成分の量と窒化硬さとの関係をグラフにしたものです。
この図からわかることは、窒化で表面を降下させる目的のためには、Alが特に有効で
あることです。その次に有効な硬化元素はCr、V、Moなどであることがわかります。

ここで、窒化による硬化の仕組みについては、次の2つの仕組みがあります。
① 窒化物の形成により硬化する。
② 窒素の固溶に伴う格子ひずみの生成により硬化する。
①の窒化物の生成による硬化は、著しく硬くなりますが、窒素自身は内部への拡散
が妨げられるため硬化深さは浅くなります。一方②の窒素の固溶による硬化では硬さ
は①の場合ほど硬くはなりませんが、窒素の拡散速度が大きいため硬化深さを深くす
ることが出来ます。
処理層の組成は、①については、多量の窒素(8~9%)と少量の炭素を含むε相と
ν'相の化合物からなり、耐摩耗性・耐かじり性の向上に役立っています。②について
は、窒素が浸透した拡散層で、窒素をα鉄中に過飽和に固溶させることにより、疲労
強度が向上します。またこれは窒化処理に共通して言えることですが、浸炭処理等他
の熱処理と比較して処理温度が低いことは、変形が極めて少ないメリットがあります。
写真1に、S15Cにイソナイト処理を適用した場合の表面を示します。表面に形成され
た8~15μm程度の化合物層①と、その下に0.3mm程度の拡散層②が形成されます。

図1に示す効果に関与する元素のうち、Alは主として①の効果、CrとVは①及び②の
両方の硬化、そしてMoは主として②の効果によります。また、炭素は硬化元素ではあ
りませんが窒化物の生成を助けて、窒素の拡散を阻害します。
通常のガス窒化の処理温度が520~530℃に比較して、イソナイト処理は570℃と処理
温度が高く、一方処理時間は短いため、Al窒化鋼(SACM645)のような材料は、表面硬
さは著しく硬くなりますが、硬化層厚さは得られないので、イソナイト処理には不適当
です。もっともイソナイト処理に適しているのはCr-Mo-V系の低合金鋼でありこれらの3
元素が多い(特にMo量)ものほど、逆にC量が低いものほどイソナイト処理の効果が
期待できます。炭素鋼のような、効果に有効な元素を含まない鋼は、それ程大きい
表面硬化は期待できません(もちろん、耐摩耗性等の表面の改質には有効です)。
■芯部硬さの重要性
イソナイト処理で、合金元素とともに重要な要素は、被処理材の心部硬さです。
イソナイト処理は、熱処理温度が520~570℃で、材料はこの温度で長時間加熱されま
すので、軟化抵抗の小さい材料では、イソナイト処理中に心部硬さが次第に低下して、
処理時間を長くしても硬化層の厚みを厚くすることも出来ない上、強度面の効果もほと
んど得られない結果になります。
イソナイト処理による効果が期待できる材料は、硬化に対して有効な元素を含むのみ
でなく軟化抵抗も大きい材料、つまり650℃くらいで焼き戻しても要求される心部硬さ
を確保できるような材料です。また、イソナイト処理時に時効効果を生じて心部硬さが
高くなるような材料は比較的高温で窒化処理する材料としては有効です。
■色々な鋼種でのイソナイト処理による硬さ
イソナイト処理による主な材質別の表面硬さを表1に示します。何れも、Hv100grで
測定しています。また、前処理、処理時間はそれぞれの材質の最適値によります。

■イソナイト処理の問題点
性能が優れているので、非常によく使用されている表面処理ですが、シアン酸塩を
使用するので環境問題が厳しくなってきた現在では公害防止対策に相当な費用と労力を
かけなければならず、これらの排水・排ガスなどの処理コストにも大きい影響を受け
ます。近年低公害用として新しい方法が開発されています。
今日は、イソナイト(タフトライド)処理について書いてみます。
■ イソナイト(タフトライド)処理とは
タフトライド処理は、ドイツのデグッサ社が考案し、商標登録していたもので、
現在国内ではイソナイト処理といわれています。このコンテンツは、これ以降イソナイ
ト処理とします。
イソナイト処理とは、主としてシアン化カリウム(KCN)55~60%、シアン酸
カリウム(KCNO)33~35%からなる、溶融塩(温度は520~570℃前後)中で、被処理品
を処理する方法です。
熱分解及び酸化分解により生成するCOとNが被処理品の中に拡散浸入していきます
(ただし、実際は温度が高く、Nが主体となって拡散浸入していきます)。通常は軟窒
化または低温浸炭窒化といいます。
■イソナイトでの硬化の仕組み
イソナイト処理による硬化層の評価は、
(1)窒素の侵入による硬さ増加度
(2)窒素の侵入による硬化の深さ
によって決まります。これらの程度は処理される材料の化学成分によって変化します。
図1は、鋼に含まれる合金成分の量と窒化硬さとの関係をグラフにしたものです。
この図からわかることは、窒化で表面を降下させる目的のためには、Alが特に有効で
あることです。その次に有効な硬化元素はCr、V、Moなどであることがわかります。
ここで、窒化による硬化の仕組みについては、次の2つの仕組みがあります。
① 窒化物の形成により硬化する。
② 窒素の固溶に伴う格子ひずみの生成により硬化する。
①の窒化物の生成による硬化は、著しく硬くなりますが、窒素自身は内部への拡散
が妨げられるため硬化深さは浅くなります。一方②の窒素の固溶による硬化では硬さ
は①の場合ほど硬くはなりませんが、窒素の拡散速度が大きいため硬化深さを深くす
ることが出来ます。
処理層の組成は、①については、多量の窒素(8~9%)と少量の炭素を含むε相と
ν'相の化合物からなり、耐摩耗性・耐かじり性の向上に役立っています。②について
は、窒素が浸透した拡散層で、窒素をα鉄中に過飽和に固溶させることにより、疲労
強度が向上します。またこれは窒化処理に共通して言えることですが、浸炭処理等他
の熱処理と比較して処理温度が低いことは、変形が極めて少ないメリットがあります。
写真1に、S15Cにイソナイト処理を適用した場合の表面を示します。表面に形成され
た8~15μm程度の化合物層①と、その下に0.3mm程度の拡散層②が形成されます。
図1に示す効果に関与する元素のうち、Alは主として①の効果、CrとVは①及び②の
両方の硬化、そしてMoは主として②の効果によります。また、炭素は硬化元素ではあ
りませんが窒化物の生成を助けて、窒素の拡散を阻害します。
通常のガス窒化の処理温度が520~530℃に比較して、イソナイト処理は570℃と処理
温度が高く、一方処理時間は短いため、Al窒化鋼(SACM645)のような材料は、表面硬
さは著しく硬くなりますが、硬化層厚さは得られないので、イソナイト処理には不適当
です。もっともイソナイト処理に適しているのはCr-Mo-V系の低合金鋼でありこれらの3
元素が多い(特にMo量)ものほど、逆にC量が低いものほどイソナイト処理の効果が
期待できます。炭素鋼のような、効果に有効な元素を含まない鋼は、それ程大きい
表面硬化は期待できません(もちろん、耐摩耗性等の表面の改質には有効です)。
■芯部硬さの重要性
イソナイト処理で、合金元素とともに重要な要素は、被処理材の心部硬さです。
イソナイト処理は、熱処理温度が520~570℃で、材料はこの温度で長時間加熱されま
すので、軟化抵抗の小さい材料では、イソナイト処理中に心部硬さが次第に低下して、
処理時間を長くしても硬化層の厚みを厚くすることも出来ない上、強度面の効果もほと
んど得られない結果になります。
イソナイト処理による効果が期待できる材料は、硬化に対して有効な元素を含むのみ
でなく軟化抵抗も大きい材料、つまり650℃くらいで焼き戻しても要求される心部硬さ
を確保できるような材料です。また、イソナイト処理時に時効効果を生じて心部硬さが
高くなるような材料は比較的高温で窒化処理する材料としては有効です。
■色々な鋼種でのイソナイト処理による硬さ
イソナイト処理による主な材質別の表面硬さを表1に示します。何れも、Hv100grで
測定しています。また、前処理、処理時間はそれぞれの材質の最適値によります。
■イソナイト処理の問題点
性能が優れているので、非常によく使用されている表面処理ですが、シアン酸塩を
使用するので環境問題が厳しくなってきた現在では公害防止対策に相当な費用と労力を
かけなければならず、これらの排水・排ガスなどの処理コストにも大きい影響を受け
ます。近年低公害用として新しい方法が開発されています。
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