東電賠償:国民負担さらに膨らむ恐れ
毎日新聞 2013年10月16日 22時05分(最終更新 10月17日 01時05分)
会計検査院は16日、国による東電福島第1原発事故の賠償援助に関わる資金回収期間や実質的な国民負担の試算を初めて示した。しかし、今後は被災者の早期帰還や移住に向けた賠償の拡充や、兆円単位にのぼるとされる除染費用の手当ても課題になる。国の支援枠が現行の5兆円では不足するのは確実で、国民負担が一段と膨らむ恐れがある。
政府の原子力損害賠償支援機構を通じた東電支援では、現時点での被災者への賠償必要額が3・8兆円。避難の長期化などを背景に賠償必要額は今後も膨らむ見通し。さらに、自民党の原発事故被害者支援・事故収束委員会(額賀福志郎委員長)は被災者の帰還や移住を支援するため、賠償の拡充を提言している。この分も加われば、賠償援助分だけでも国の現行の支援枠が足りなくなる可能性がある。
今後の焦点は「最終的な費用が5兆円規模になる」(経済官庁幹部)とも言われる除染への対応。国は現在、除染費用をいったん立て替えており、将来的に東電や大手電力から資金を回収する意向。一方、東電や電力業界は国費による分担を求めている。
除染の費用負担を東電や電力会社に全面的に求めれば、電気料金に跳ね返る。このため、自民党内では東日本大震災の復興財源から除染費の一部を捻出する案も浮上している。しかし、政府の復興特別法人税前倒し廃止方針もあり、除染にまで使えば、復興財源が不足し、被災地再生に支障が出るとの指摘もある。「国が除染費を分担するなら増税が必要」(与党筋)との声もあり、そうなれば国民負担は一気に拡大する。【清水憲司】