国家戦略特区:「雇用」見送り 無期契約の権利制限も白紙
毎日新聞 2013年10月18日 08時15分
政府は17日、首相主導で規制改革や税制措置を行う「国家戦略特区」について、解雇の要件などを明確化して従業員を解雇しやすくする仕組みの導入を見送る方針を決めた。短期契約を5年を超えて更新した従業員が無期契約に転換できる権利の制限も検討課題にとどめ、特区を利用した雇用規制の緩和構想は白紙に戻る。雇用分野の調整がついたことを受け、政府は国家戦略特区関連法案を11月に閣議決定し、今国会での成立を目指す。【念佛明奈、中島和哉】
政府の国家戦略特区ワーキンググループ(WG、座長・八田達夫大阪大招聘(しょうへい)教授)は今月4日、海外企業やベンチャー企業を特区に呼び込むため、(1)短期契約を5年を超えて更新しても無期転換しないことを使用者と従業員が事前に約束できる(2)解雇の要件や手続きを契約書面で明確化する−−という特例措置を提案した。しかし、厚生労働省の反対で政府内の調整が難航。野党や労働組合も「解雇特区」と批判を強めていた。
WG案を見送る代わりに、政府は「高度な専門的知識を有し、比較的高収入の人」を対象に、無期転換までの期間を全国一律で5年より延ばすことを検討し、来年の通常国会に関連法案を提出する方針。また、解雇に関する判例などをまとめたガイドラインを作り、各特区に「雇用労働相談センター」を設置。海外企業などに日本の雇用ルールを説明できる体制も整える。
政府は18日、安倍晋三首相と全閣僚が出席する「日本経済再生本部」を首相官邸で開催し、国家戦略特区の概要を了承する。