2013年10月17日木曜日

私の講義を聞いた阪大一年生諸君へのメッセージ

前の投稿で、環境問題の授業の中で行った、阪大一年生の原発と被曝に関するアンケート結果を紹介しました。この授業での私の担当が今週で終わったので、学生たちに以下のメッセージを送りました。(昨年のメッセージを少し改訂したものです。)
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大部分の大学教員よりは、かなり踏み込んで大切だと思う事を話したつもりです。政治や政策がからむことは、多くの教員は避けるのが普通で、3年前まではボクもそうでした。Non-politicalな人間の代表例でした。(といっても、今特に自分がpoliticalになったとは思っていない。子供の頃と何も変わっていないつもりです。)

ただ、このままいくと日本の将来は無いと気付いてから、非常に大きな危機感を持ったので、方針を変える事にしました。国やメディア等の批判をしても、大学で研究をやって行く上で、時間は取られるし、他の不利益はあっても得な事はありません。しかし、大学教員、特に教授は、世の中の多くの人と比べれば、非常に自由に発言できる立場にあります。おかしいと思った事を私のような大学の人間が発言しなくて、他の誰が代わりにできるでしょう?そう考えて、twitter等で積極的に意見を言うようにしています。この授業でも、昨年と今年は皆さんを説得する形を取りました。この授業で、NHKに義務づけられている様に「公平」にどちらの立場も解説するつもりは毛頭ありません(NHKが公平だなどとは、思っていませんが)。 そうではなく、間違っていることは批判する形で紹介しながら、私が最も真実に近いと考える情報を提供しました(授業では普通そうでしょう)。世の中では、国からマスメディアまで、一部の稀な例外を除いては基本的に原発推進であり、原発に反対する考えは、ほとんど普通では知る事ができません。いくらかでも、これで公平な情報が得られる方向に行くならうれしいです。

原発と現在の経済システムを維持するために、今どれだけのウソがこの国でまかり通っているか、それがどれだけ民主主義をねじ曲げているかを、自分の目と頭でよく確かめてください。事実の隠蔽の影響は、原発関連のことに影響を与えるだけでは済みません。2020年東京オリンピックを招致するために、どれだけあからさまなウソを首相ともあろう人が世界に向かってついたか。こんな人物を首相にしていることを私は本当に恥ずかしく思います。オリンピックなどは、どうでも良い事ですが、原発を無理やり動かすことから始まって、それに連動して国の他の場面でも、どれだけのウソと偽装が必要か想像してください。人々の生活や考え方、世の中の空気、国民の知らない所で多くの大切な事が決まって行ってしまう事など、社会が回復不能になるところまで腐って来ています。 普通の新聞やテレビだけを見ているだけでは、それは見えません。多くの新聞やテレビも真実の隠蔽とウソの流布の役割を担っているのですから。ぜひ、自分で確かめながら調べ、勉強してください。もちろん、私の言う事、紹介した情報も鵜呑みにしてはいけません。

なぜ現状ではいけないか?最終的には、次の問いに集約されると思います。 ウソが蔓延する世の中で、希望や夢をもって生きて行けますか?ボクにはできません。まあ、ボクみたいな先の短い人間の希望など、どうでもいいですが、問題は皆さんのようにこれからの若者や子供たちの希望や夢です。原発を止めずに、子供から大人までがウソを許容し、原発の事は話題に出さないというタブーを守りながら、他の所でいくらがんばっても、世の中も経済も政治も良くなるわけがないでしょう。自分が嘘つきになるか、周りの嘘を(見ない知らないフリをして)許容しなければ、組織では生き残れない国になりつつあります(既になってるかも)。原発の不都合な真実を人々が知らないようにと、世界の常識を知らせないように、人々が自覚しないように仕向けられた国の人間が、国際化だとか、中国や韓国や他の国々の人たちと対等に競争や協力していけると考えているとしたら、笑止千万です。無知で騙されているアホが国際人になれるんですか?冗談はやめましょう。若者が内向きだとか、そんなことをどうこう考えたり言ったりする前に、原発を止めることが必要です。これだけ良いところは何もない有害な原発ごときを止められないようでは、この国は他の面で頑張る以前に終わっているという事です。 もちろん、他の国、例えば中国のメディアもコントロールされて、ネットもアクセスできない部分も多く有るのはよく知られています。しかし、彼らは少なくとも国営ニュースは信用ならないと自覚している。新聞やNHKを含めてテレビを基本的にさも有り難そうに信じている多くの日本人とは、そこが違うと思います。普通の日本人が見る範囲の外にアンテナを伸ばして、良く世界のことを知って下さい。まずはそれからです。そのためにも、英語は絶対必要です。

欠陥技術である原発には、さっさとおさらばするのが勝ちです。日本にとってのチャンスとも言えます。20年以上前(1990年)に原発を止めたイタリアを除いて、G8と呼ばれるいわゆる「先進国」の中で、今直ぐ原発を全てストップしても平気でやって行ける国は、日本だけです。日本は、今既に「脱原発状態」なのです。実際、イタリアは自国の原発は止めたと言っても、他国の原発に10%もの電力供給を依存しています。日本の人々がそうすると決めれば、明日にでもこの状態を永遠にすることができます。地震の度に、原発の心配をするより、太陽光発電や(夜や雨天の日のための)蓄電技術に力を入れた方が、遥かに前向きだと思いませんか? それ以上に、原発を止めれば、これほどウソをつき、ウソを許容する必要がなくなります。もう、事実上できているのですから、実際は簡単なことです。難しいと言っているのは、実は原発から利権を得ている人と、そういう人々に「買われた」人だけではありませんか? (あるいは、長年の洗脳が抜けない人)何をモタモタしているのでしょうか?もう原発は一切使わないと決める事ほど、前向きでポジティブなことは無いはずです。原発事故に比べれば、電力会社の破綻など取るに足りないことです。

くれぐれも食べ物には少しは気を使ってください。軽率に「食べて応援」をしないで下さい。外食の時は、実質的には避けようがありません。ですから、外食だけで暮らす事はあまりお薦めできません。米など毎日食べるものは、特に注意してください。理由はセシウムもストロンチュームも皆さんの体内で濃縮されるからです(講義3のスライド56)。セシウムを毎日基準の1/10 の10Bqずつ食べ続けると、2年後には1400Bq以上の濃度で体内に溜まります。文部科学省の小中高向けの副読本で最初に紹介される自然界に存在する放射性物質であるカリウム40は、生体濃縮されません。この違いは副読本では触れられていませんが、重要な点です。

講義資料は元々、ネットから得られたものがほとんどです。使った図表の著作権の観点から、資料へのアクセス方法を自分のブログやfacebook等で公開することは避けてください。ただ、友人や家族との議論や勉強会等で、私の資料を使うことは全く構いません。むしろ、タブーだと考えずに、ぜひ大いに議論してほしいものです。PowerPointファイルも置きました。

P.S. 余りに多くの資料を紹介したかもしれません。どれか一つと言われたら、下記のこれだけは読んでください。古いですが、書いてあることは全く古くありません。
「原発がどんなものか知ってほしい(全)」:平井憲夫
(20年間原発の配管に関する作業をした方の1996年頃の講演録。 1997年に亡くなられています。)

大澤五住