台風26号:「まるで津波」絶句する大島住民

毎日新聞 2013年10月16日 21時53分(最終更新 10月16日 23時58分)

土石流の痕跡が大きく残る斜面の家屋周辺を捜索する消防隊員=東京都大島町で2013年10月16日午後4時35分、梅村直承撮影
土石流の痕跡が大きく残る斜面の家屋周辺を捜索する消防隊員=東京都大島町で2013年10月16日午後4時35分、梅村直承撮影

 町のシンボル三原山の斜面はえぐれ、中心部を大量の土石流が一気にのみ込んだ。16日、伊豆諸島最大の島「伊豆大島」(東京都大島町)を襲った台風26号。死者・行方不明者は約60人に及んだ。「早く見つかって」。町民は夜を徹して続く救出作業を見つめた。

 「40年近く住んでいるが、まさか山崩れが起きるとは想像もしていなかった」。元町地区で暮らす書店経営、成瀬田鶴夫さん(54)は、放心したような顔つきで恐怖の時を振り返った。自宅1階は土砂にのまれ、被害を免れた2階で妻純子さん(52)と2人で夜明けを待った。

 最初に異変に気づいたのは純子さんだった。午前2時半ごろ、1階居間でテレビを見ていたところ、雨音があまりに激しく、玄関を開けてみると目の前の道路に水があふれていた。2階の寝室で寝ていた成瀬さんを起こし、一緒に居間でニュースを見ていると、午前3時ごろに土砂がガラス窓を破って1階の居間に入り込んできた。直後に停電。真っ暗な中、足が泥だらけになりながら、2人で2階へ逃げた。

 「助けに来てほしい」。警察や友人に電話したが、散乱する流木やがれきに阻まれ、救出の手は届かなかった。「ガラガラガラ」。近くを流れる川(大金沢)から地鳴りのような大きな音が響きわたり、町が午前3時半過ぎに行った防災無線の呼びかけは「ほとんど聞き取ることができなかった」。ギシギシと揺れる自宅で、2人で肩を寄せ合って耐えしのいだ。

 16日午前6時ごろ、明るくなってから自力で避難した。自宅1階の片付けをしながら、成瀬さんは「台風が来るのはよくあること。町役場も我々と同じように『いつものこと』と考えていたのだと思う。皆、油断をしていた」と語った。

 土石流は沢に沿って押し寄せ、地区に甚大な被害をもたらした。無職の秋田隆三さん(66)は「土石流は周辺を大きく浸食し、深さ2〜3メートルの溝を作った」と話す。秋田さんの自宅は無事だったが、近所の住民と連絡が取れない。流木やがれきの中を捜索する地元消防団の姿を祈るように見つめていた。

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