安倍晋三首相は29日午後、モンゴルのエルベグドルジ大統領と東京・富ヶ谷の私邸で約1時間会談した。現職首相が、外国の首脳と私邸で会談するのは極めて異例。モンゴルは中国の隣国のため、沖縄県・尖閣諸島の強奪を画策する中国を牽制する狙いもありそうだが、同国は北朝鮮とも深い関係を築いており、私邸会談の背景が注目される。
関係者によると、エルベグドルジ大統領が米ニューヨークでの国連総会出席後に日本を非公式に訪問する予定があり、安倍首相側に会談を申し入れていた。
会談では、安倍首相は「両国のハイレベルでの意見交換を持続し、政治、安保、経済での関係を強化していきたい」と強調。エルベグドルジ大統領は、安倍首相が両国関係の発展に尽力していることに謝意を伝えた。大相撲で、モンゴル出身力士が活躍していることも話題になったという。
最近、日本とモンゴルの首脳・閣僚級の往来が頻繁だ。
安倍首相は今年3月末に、古屋圭司拉致問題担当相は7月上旬にモンゴルを訪問。モンゴルからも、アルタンホヤグ首相が9月中旬に来日し、今回、エルベグドルジ大統領が来日した。
モンゴルでは、地下資源ビジネスが盛んだが、主要取引先である中国による乱掘や買いたたきが問題となっている。安倍首相は「平和、自由・民主、助け合い」の3つの精神を強調しながら、環境立国・日本としてモンゴルとのパートナーシップ強化する考えだ。
北朝鮮問題との関係も見逃せない。モンゴルはかつて社会主義国だったため、北朝鮮とも関係が深い。私邸会談には、北村滋内閣情報官が同席しているが、北村氏は第1次安倍内閣で秘書官を務めた、北朝鮮問題のエキスパートである。
朝鮮半島情勢に詳しい元公安調査庁調査第2部長の菅沼光弘氏は「北朝鮮問題を話し合ったはずだ」といい、続けた。
「安倍首相は先週、米ニューヨークでの国連総会で『自分が政権にいるうちに(拉致問題を)完全に解決する』と決意を示した。これに対し、北朝鮮は拉致問題を棚上げして、終戦前後の混乱期に同国でなくなった日本人の遺骨問題での対話を求めている。10月上旬には、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)中央本部の土地・建物の競売で、再入札が実施される。日朝双方が微妙な駆け引きを続けている。北朝鮮とも関係が深いモンゴルに、一肌脱いでもらう可能性もありそうだ」