仕事がさほどできるわけではないが、「社内政治力」と「体育会系で培ったゴマすり力」で出世街道を歩んできた。
ところが、やるべきことをやらずに、あるいはやれずにパナソニックを凋落させた経営層の典型的な人物でもあった。
広報はメディアとの対応が主な仕事となるが、鍛冶舎氏は「自分の周囲にいてお礼の手紙や挨拶を書いたりする秘書的スタッフを30人近くまで増やしたのに、本来やるべきメディア対応の人員を減らして現場を困らせていた」(パナソニック元役員)というから驚く。
津賀氏の就任と同時に解任されてもおかしくなかったが、発言は過激でも人事では穏便さを装ってきた津賀氏は、鍛冶舎氏を「温存」したままだった。鍛冶舎氏も生き残りをかけて懸命にゴマをすったが、中村邦夫氏や大坪文雄氏ら歴代トップには通じても、冷静沈着な津賀氏には通じなかった。
今回の人事は手始め、さらに津賀色は強まっていく
鍛冶舎氏は県立岐阜商業高校から早稲田大学に進み、強肩強打の外野手として名を馳せ、阪神タイガースからドラフト指名されるもそれを蹴って松下電器産業に入社した経歴の持ち主。
数年前まではNHKの高校野球解説でも知られたが、担当記者の中からは「あの爽やかな解説からは信じられないが、裏で何を画策しているか分からない人」との声も出ていた。
津賀氏が社長に就任して約1年3カ月。社内を完全掌握したように見える。
パナソニック全体の経営状況や将来展望には依然として厳しいものがあるが、キャッシュフロー改革などでは一定の成果も出始めている。
未定としていた2014年3月期決算での配当についても、復配して中間期に5円配当を実施することも決めた。10月末の中間決算の発表時には津賀氏自らが改革の進捗などについて説明すると見られる。
日本を代表する大企業の経営者として自信も少しついてきたのではないか。今回の役員人事はまだ手始めに過ぎないだろう。来年の役員人事や組織改編はさらに「津賀色」が強まるに違いない。
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