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18時台の特集/バックナンバー
目次 › 2013年10月17日放送の18時台の特集/バックナンバー
「集団的自衛権」…イラク戦争から考える
「集団的自衛権」とはアメリカなどの同盟国が攻撃を受けた場合、日本が攻撃を受けてなくても同盟国のために武力を行使する権利のことです。
安倍総理は憲法を変えるのではなく、“解釈”を変えることで、この「集団的自衛権」を行使できる国になることに積極的です。
イラク戦争を通して改めて考えます。


【安倍晋三総理大臣】
「安全保障環境がますます厳しさを増す現実から決して目をそむけてはならない。私は現実を直視した外交安全保障の立て直しを進めてまいります」

 

いまの憲法のまま、集団的自衛権の行使ができるのではないか――。
安倍総理の私的懇談会で議論を重ねています。
メンバーのひとり、坂元一哉さんは、アメリカとの結束を強めるために集団的自衛権の行使が欠かせないと話します。

【大阪大学・坂元一哉教授】
「北朝鮮や中国が日本に攻めてくるということよりも、今の状況で緊張が高まった中で偶発的な軍事衝突が起こるということを防ぎたいわけなんです。やっぱり日米の協力を強化して抑止力を強化しようと思えば、もう少し気持ちのいい協力の仕方を考えなくてはならない。そのときに集団的自衛権の行使、まったくできないんだと言っているところが問題だと思うんです」

憲法9条は「戦争と武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」としています。
ただし、国民の生命を守るための“必要最小限度の武力行使”は自衛権の範囲で認められるという“解釈”を取ってきました。
9条の2項で「戦力は保持しない」としながら自衛隊を認めてきたのはこの解釈によるものです。
そして、同盟国に対する攻撃を武力で阻止することも“必要最小限度の武力行使”という解釈で、いまの憲法のまま実行可能だという話が持ち上がっているのです。

 

【大阪大学・坂元一哉教授】
「集団的に安全保障を考える時代に国民の生命と身体を守っていればそれだけでいいんですよと、それが中心になりますけどそれだけでは少しまずいのではと思います。近くで行動している他国の部隊も守る、こういうのは国際社会の責務ですね。限定的で、必要最小限でいいので、そういうものを認めていった方がいいんじゃないか」

ときには武力を行使して同盟国としての責任を果たす。
その結果、日本の防衛力が増すという考え方です。

この20年の間に自衛隊は積極的に海外に出るようになりました。
湾岸戦争では海底の機雷を除去。
アフガニスタン戦争では補給艦による給油活動。
イラク戦争では陸上自衛隊と航空自衛隊が派遣されました。
その背景にアメリカの意図があると専門家は分析します。

【明治大学・山田朗教授】
「世界の軍事費の半分をアメリカ1国で使っているわけですから、今まで歴史上なかったぐらいの超軍事大国。しかし多くの犠牲を伴う政策をやるとアメリカ国内(の世論)がまずいわけですよね。ですからイギリスだとか日本だとかそういうところにいろんな役割分担をさせて負担させていくという、こういうやり方に変わってきた。湾岸戦争で多国籍軍が編成されてからはっきりしてきた」

新型護衛艦「いずも」。
排水量も、搭載できるヘリコプターも4倍に増えました。
海上自衛隊の船は更新されるたびに大型化し、総トン数は20年前の1.5倍になりました。
“専守防衛”の装備の質に変化が出ています。

【明治大学・山田朗教授】
「日本近海で運用するならそこまでは必要ない。しかし自衛隊の機能が海外展開にシフトしていますから、そういう大型、長期間、強力な船、そういうところに基本的にはアメリカの要請にしたがって自衛隊の戦力も変わってきている」

自衛隊の変質を象徴するのがイラク派遣です。
サマワに派遣された陸上自衛隊の撤退後、航空自衛隊がクウェートからバグダッドまでの空輸を担いました。

 

イラクでは敵からのミサイル攻撃をかく乱するフレアと呼ばれる装備を初めて使用しました。
イギリスの同型機が撃墜されているからです。
これは情報公開請求によって明らかになった航空自衛隊の輸送の実態です。
陸海空の米軍兵に銃器の数々。
バグダッドに送り込まれた米軍兵はそこから掃討作戦に展開していたのです。

 

【ジャーナリスト・西谷文和さん】
「サマワで水を作っていたのは人道支援だと思うんですけど、航空自衛隊が隣の国のクウェートから武装した米兵を大量に運んでいた。現地では無料のタクシーだと。これは明らかに間接殺人」

<西谷文和 「イラク 戦場からの告発」より>
【外国人記者】「なぜ撃ったの?」
【検問で銃撃した米兵】「撃つなとでも?ヤツらがここを通させないからだよ」
【外国人記者】「あなたたちは何しに来たの?」
【米軍兵】「イラクを復興させにきたんだよ」

【ジャーナリスト・西谷文和さん】
「米兵も怖いので先に撃つんです、検問所とかで。子どもや大人を。その米兵を運んだのは日本の自衛隊であると」

ジャーナリストの西谷文和さんは米軍の武力行使がもたらす悲惨な光景を何度も目にしてきました。

【西谷文和さん 現地リポート】
「この子は銃弾が体の中に残ったまま」
「この子は銃弾が頭をかすめて歩行困難に」
「この子は生まれつき足がねじれてます。背骨も曲がっています」

イラクには劣化ウラン弾の後遺症や銃撃の痕に苦しむ子どもたちがたくさんいます。

 

【ジャーナリスト・西谷文和さん】
「武力を行使したら必ず巻き添えで死ぬ人がいるので、軍事介入はその国の人を幸せにはしない。外交的な手段を最後まで追求しないと。トマホーク1発数千万円以上、何十発と撃つ。つくったところ儲かりますから、戦車も。戦争で儲けたい人たちが残念ながら米や英の後ろにいるので、そこを全然言わずにならず者国家だからやっつけないといけない。やっつけることで人々が幸せになるというけど、やっつけるときに皆死にますよ、巻き添えでね、どちらもね」

イラク戦争の犠牲者は16万人以上。
武装兵士の輸送という形でイラク戦争を支えた航空自衛隊の任務は憲法9条に違反するのではないか。
全国で起こされた裁判のうち、名古屋高裁が憲法に違反するとの判断を示しました。

 

「多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行ったもので、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」と認定したのです。

【イラク派兵差し止め訴訟の会・川口創弁護士】
「何でも自分を攻撃するのはテロだということになると、人の国に押しかけていって銃構えた時点で向こうからしたら米兵は敵。米兵から見たら全部テロになっちゃうわけですから、見境なく殺すしかなくなっちゃう。ファルージャなんかそうやってほぼ皆殺しにした。そこに日本の自衛隊が行きますかっていうのが集団的自衛権の行使の話ですよ、端的にいえば。そういう戦争に直接自衛隊が関わっていくんですかと」

【安倍晋三総理大臣】
「積極的に世界の平和と安定に貢献する国にならねばなりません。この積極的平和主義こそ日本が背負うべき21世紀の看板であろうと思います」

同盟国との結びつきを重視して有事に備えるべきか。
武力行使はできる限り限定的にとらえるべきか。
主権者である国民ひとりひとりに、その判断が求められています。
2013年10月17日放送
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