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伊豆大島の惨劇 - 警察は捜査を、関係者の事情聴取を
伊豆大島の集中豪雨の被害は、死者・行方不明合わせて50人という大惨事になった。伊豆大島の人口は8000人。50人は全人口の0.63%に該当する。東日本大震災での宮城県の死者・行方不明者数は、県全体の人口の0.46%。小さな共同体である伊豆大島は、今、島の歴史が始まって以来の大きな悲劇に直面している。昨日(10/16)からずっとTWで乱打しているが、これは単なる自然災害による不運な犠牲ではなく、明らかに人災であり、不作為による業務上過失致死の刑事事件だ。避難勧告が事前に発せられていれば、また、特別警報が出されていれば、このような未曾有の惨劇が起きることはなかった。行政は住民の生命と安全を守る義務がある。災害から住民の命を守るために、防災上の法令と制度があり、責任当局が税金で運営している。今回のケースで言えば、島の住民が就寝する午後11時前に、避難勧告(町役場)なり、特別警報(気象庁)が出されていれば、多くの住民が命を落とすことはなかっただろう。過失責任の所在は否めない。昨夜、マスコミはどんな具合に責任のなすりつけをするだろうと興味津々でテレビ報道を注目したが、案の定、NHKも、テレ朝も、大島町長の川島理史を槍玉に上げ、責任追及して糾弾する姿勢に徹していた。予想どおりの図だ。しかし、これは気象庁とマスコミ自身の責任を隠し、スケープゴートに責任転嫁する狡猾な政治である。


首都圏に暮らす者は思い出して欲しい。昨日(10/16)の早朝、出勤前、台風の状況はどうだろう、交通機関は無事だろうかと、テレビ画面をずっと注目していたはずだ。そのとき、伊豆大島の問題は一言も登場せず、情報として紹介されることはなかった。テレビ局の報道部に災害の事実が入ってなかったか、ニュースで伝えるほどの事態として認識されていなかったのである。朝の番組でカメラの前で喋る者たちは、何も知らなかったのだ。けれども、そのとき、伊豆大島では数十人もの人々が土石流に流され、濁流に巻き込まれ、苦悶の中で息絶えるか、瓦礫や土砂の下に埋まって身動きとれないまま救助を待っていた。伊豆大島の惨事が情報で出たのは、午前11時頃だっただろうか。Yahooのトップトピに出た。テレビを見ていた人は、もっと早くテロップの速報で知ったかもしれない。いずれにせよ、マスコミの一報は実に遅かった。この先進的な情報社会の日本で、何事もリアルタイムにテレバイズされる日本で、そして、人の生命が比較的重く扱われているはずの日本で、東京都の一角で、一挙に60人が犠牲になる衝撃の事態が起きながら、マスコミ報道は異常に遅かった。しかも、その惨劇は台風によって起こされたもので、前日からずっと注意を呼びかけ、ニュースのネタとして報道し続けた延長で発生したものだ。一体どういうことなのだろうと、愕然とせずにはいられない。

マスコミと政府は、全責任を川島理史に押しつけるべく集中砲火を浴びせている。無論、町長には重大な責任がある。町長の過失責任は免れない。だが、それ以上に責任が重いのは気象庁とマスコミだ。昨夜(10/16)、テレ朝の報ステは、どうして伊豆大島で局地的に800ミリを超える未曾有の大雨が降ったのかを、気象図を映して解説していた。それによると、台風の進行に伴って、北からの冷たい空気と南からの湿った空気がぶつかり、伊豆大島の上空に雨雲が集中し、前線ができ、それで大雨になったと、ゲリラ豪雨を説明するときに常に聞く一般論(結果論)の口上を述べていた。一般論はそれで悪くないだろうが、問題は、その気象状況の説明が、24時間前に、つまり一昨夜(10/15)の報ステの放送時間に、気象予測として報じられなかったのかということだ。10/15のテレビ報道は、NHK(NW9)も、テレ朝(報ステ)も、雨雲が時間軸で地図上を移動する図を見せ、どこで雨が降るとか、どの時間に風が吹くという「今後の警戒情報」を詳報していた。10/15の報ステは、ウェザーニューズ社の職員だと思うが、この番組ではよく出演する女性予報士をトップからスタジオに生出演させ、30分近くずっと台風の話で埋めていた。記憶しているが、雨雲の移動図を辿りながら彼女が言ったのは、暴風雨圏の右半円が南からの湿った空気を呼び込むので、房総半島は特に豪雨に注意だという警告だった。

伊豆大島が豪雨になるとは一言も言わなかった。果たして、茂原では24時間で10月平均の1か月分の降水量に及ぶ大雨が降り、市中心部の住宅街が水に浸かる被害が出たている。彼女の気象予測は的中したことになる。そこまでの精度(技能)を持っていたという証明だ。であるなら、もっと早い時間帯に、もっと激しい豪雨を降らせる雨雲が伊豆大島にかかることを、その気象図が予示していないはずはないのだ。人間が見落としているのである。伊豆大島の24時間雨量は824ミリを記録していて、観測史上最多だと報じられている。そのような記録的な大雨を、気象庁にせよ、ウェザーニューズにせよ、5時間前の時点で探知分析できないはずがない。人の注意が関東・首都圏にばかりあったから、海上の伊豆大島を捨象したのだ。無視して報道から切り捨てたのである。だが、われわれは想像しなくてはいけない。午前2時すぎに突然の土石流の不意打ちで目が覚めた大島元町地区の人々も、それより5時間前の夜9時には、大越健介のNW9を見ただろうし、4時間前の夜10時には、古舘伊知郎の報ステを見ていたはずなのだ。夜のテレビのニュースを見て、台風の報道を見て、自分たちに危険が迫っていないことを確認して布団に入ったはずなのだ。死者・行方不明60人の多くが、おそらく全員が、前夜のニュース番組を見て、台風報道を確認していたことだろう。もし、そこで伊豆大島が危険という情報が出ていたら。

一昨夜(10/15)の夜のテレビ報道は何を見せていたか。NHKのNW9は新橋のサラリーマンがどうのと、明朝の出社に備えてカプセルホテルに宿泊する漫談をネタにしていた。テレ朝の報ステも、浜松町のカプセルホテルを取材撮影し、急な予約客が殺到して満室だというネタに興じていた。テレビのバカ連中の考えることは、NHKも民放も全く同じらしい。焦点を当てていたのは、東京の勤め人の翌朝の通勤事情で、人命に危険が及ぶ局地の豪雨は蚊帳の外だった。気象庁は、午後5時38分に大雨洪水警報を出したとか、午後6時5分に土砂災害警戒情報を出したとかアリバイを言い張っているが、テレビを見ていたとき、テロップに「伊豆大島」の地名が出ていた記憶がない。千葉県とか埼玉県とか茨城県とかは出ていたが、夜のニュースの放送時間中、テレビの画面上部を割いて出る気象警報で、「伊豆大島」という文字は出ていなかった。おそらく、伊豆大島の元町地区の人々も、そのテロップ情報は注意深く監視していただろう。また、仮に、気象庁が大雨洪水警報を出し、土砂災害警戒情報を出していたとしても、それは毎度のことで、通常は避難だの災害だのに直結するものではなく、言わば予備的な警報で、お役所事務のルーティンワークであり、それの発信を見て、身に危険が迫っていると判断する住民はいない。身の危険をリアルに感得するのは、8/30から鳴り物入りで導入された、あの「特別警報」が発せられた場合である。

実際のところ、「特別警報」はまさにそのために新設されたものだった。いろいろな警報制度が複雑で煩瑣になり、かつ、短時間局所のゲリラ豪雨の被害が頻出する環境になり、上から大声で「危ないぞ」と一喝する必要が生じて、国からの緊急事態宣言として活用されるべく制定されたものだ。だから、これは一刻の猶予もないもので、気象庁が自治体を飛び越えて、マスコミの電波で、「ただちに命を守るための行動をとってください」と警告するものだ。9/16に滋賀・京都・福井に特別警報が出されたときは、雨量の基準値を満たす前に、プリエンプティブに午前5時5分に特別警報が発せられている。この発表の判断は正解だっただろう。午前5時なら、もう起床している者もいる。遅すぎては何の意味もない。9/16のときは、杓子定規な基準を裁量で無視して、生命の安全優先で特別警報を発表しておきながら、今回、「府県程度の広がりがない」だの、基準値を超えた地点が9地点しかなく10に届いてなかっただのと気象庁が弁解するのは、明らかに矛盾していて、この制度の趣旨を逸脱した官僚の保身の言い訳だろう。大雨の襲来を確実に予測した午後10時頃に、先行的に、伊豆大島に対して特別警報を出すべきだった。気象庁が特別警報を出せば、自治体(大島町)はすぐに避難勧告・避難指示を出したに違いない。今、犠牲者は60人に及んでいる。司法当局はこの事態を看過放置すべきではなく、事件として捜査するべきだ。結果として立件見送りでもいいから、関係者を事情聴取して取調べするべきである。責任当事者に証言をさせるべきだ。

気象庁の中で、伊豆大島に史上例のない短時間局所の集中豪雨が襲来すると、そう予測し得たのはいつか。誰がその情報を確認したのか。その者はどう対応したのか。東京都の気象担当者は何をしていたのか。伊豆大島とのコンタクト・パーソンは誰だったのか。大島町の総務課長はどこで何をしていたのか。時系列で、どことどういうやり取りがあったのか。町長・副町長との連絡の経緯はどうだったのか。マスコミの気象報道の関係者はどうだったのか。それらの事実が、ドキュメンタリーとして正確に整理されなくてはいけない。それが可能なのは司法権力(警察)だけだ。犠牲者の多さ、事の重大性から鑑みて、これは責任者が特定されて訴追されるべき刑事事件だろう。避難勧告があれば逃げられたのに、特別警報(=「ただちに命を守る行動を」)がマスコミで流れれば対応できたのに、それがなかったために土石流にのまれた犠牲者の遺族は、損害賠償請求を責任者に対して起こさないといけない。今回、鳴り物入りで導入された「特別警報」の防災システムは、あのSPEEDIと同じ運命となった。事前に危機を予知しながら、そこで人の命を救うべく発動されなくてはならなかったのに、人為(怠慢)による不具合で機能不全の結果となった。官僚の為せる業として二つは同じだ。SPEEDIを操った官僚たちが、浪江町の住民のことなど人間と思わなかったように、気象庁と東京都とマスコミの官僚たちも、伊豆大島みたいな小さな離島はどうでもいいと、頭からバカにして切り捨てたのである。

50人は無責任な官僚行政の犠牲者だ。最後に、伊豆大島と防災避難と言えば、誰もが、1986年の三原山噴火と全島一丸となった奇跡の脱出劇を思い出す。一人の落伍者も出さず、怪我人も出さず、あの広い島で、1万人の島民が驚くべき早業で、わずか13時間で島からの避難作戦を成功させた。全員が助け合って、何の混乱もなく。それは偉業として讃えられ、NHKのプロジェクトXの題材にもされた。それから27年。恐るべき集中豪雨が襲来し、土砂崩れの危険が迫りながら、避難勧告は出されず、どれもこれも無責任のまま、多くの犠牲者を出す始末となった。このコントラストに立ち竦む思いがする。単に大島の問題ではなく、日本社会の問題として。


by thessalonike5 | 2013-10-17 23:30 | Trackback | Comments(2)
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Commented by 旅マン at 2013-10-17 20:43 x
震度1のテロップを見ていらつくこと、正直あります。せめて3以上にしろ、しょぼいのは後のニュースでいいだろうと。
しかし、かなりのピンポイントな、まあ、現実的には隣町だろうが大差はないんだが、とにかくやたら精密な予報を売り物にしている最近で、どうしてblog主の指摘するようなことになったのか?
ここまで掲載する以上、また、この御仁の日頃の書き振りからして、これは事実と信じるが、にしても『商業的にも』異常気象ネタは視聴率稼げる美味しいネタなはず!
おそらく、馬鹿どもが高をくくっていたのだろ。所詮は離島。こじつけるつもりはないが、やはり沖縄や東北の棄民を連想してしまう。
Commented by カプリコン at 2013-10-17 21:10 x
今回の伊豆大島の大災害、本当に悲惨ですね。東日本大震災後に津波警報も改善したの気象庁ですよね。まだ、東北の復興(原発事故も含む)も進んでいない中で,ニュースなどで取り上げられるのは「東海」「東南海」「南海」の大地震による被害の予想や都市機能の心配ばかりで嫌気がさしていました。

「特別警報」の防災システムも変更にしたのも気象庁です。「直ちに命を守る行動をしてください」でしたっけ。システムがきちんと機能しなかったのだから、責任は気象庁にあるのは間違いないです。記事にあるようにニュースは首都圏のことばかりでした。途中でTV消しました。万が一の場合は携帯の緊急速報を頼りにすればいいやと思って(8月9日の豪雨ではきちんと速報伝わっていたので)。

伊豆大島の方々にはそういった通報が無かったのですよね。気象情報を把握している気象庁の責任は重いです。「現象が県レベルの広がり」ではないから、なんて許せないです。

国民の命を守るために税金を使って築いた特別警報のシステムじゃないんですか!?
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