羽生らの存在によって「結果を意識しすぎていた」。
「それはあったと思います。結果より中身を大切にしたいと思っていたのに、結果を意識しすぎていました。ほんとうは先を見据えて取り組まなければいけないのに、目先にばかり集中してしまった。負けたくないという気持ちは、ある面ではモチベーションになるのでいいことではあると思うんですけれどね」
ぎりぎりの勝負の局面では、選手の心理はどちらにも転ぶ、微妙なバランスの上にある。
「その前の2011-2012年シーズンは、結果より、少しでも成長できれば、と考えていたからうまくいっていたんですけどね」
不本意なまま終わったのはなぜか、あれこれと考えるうち、思い至った。
「あれをやった方がいい、これやった方が、と自分も欲求が強くて、それがよくなかったんじゃないか」
しかも、人を気にしすぎていた。
ブレード変更はマイナスに働いたが、迷いは消えた。
1986年3月16日、岡山県生まれ。'02年世界ジュニアで日本人男子初の優勝を果たす。'06年トリノ五輪で8位入賞、'10年バンクーバー五輪で銅メダル、世界選手権で金メダルを獲得。'12-'13シーズンのGPファイナルで悲願の初優勝に輝く。165cm、60kg。
周囲が日本代表争いをしばしば話題にするのは、日本男子のレベルと層の厚さを考えれば、自然な成り行きではある。
でも考えてみれば、周囲の状況がどうだろうとやるべきことが変わるわけではない。振り回される意味はない。自分が何をなすべきか、それに尽きる。それを見失っていた。だから思う。
「流れに逆らわずまわりに委ねる。自分はスケートをやるだけ。あまり考えず、なすがまま、なるがままに行きたい。想像も期待もしないと言ったらおかしいけれど、なるようにしかならないと思うんです。努力しないでだめなら後悔しますけれど、やってだめだったらそこまでの運だし能力だということです」
道具を変えたのも悪い方に転んだ1年だった。高橋は昨シーズン、それまで使用していたブレードから、より角度のきついものにした。エッジワークが生きる良さがあったが、その作りはジャンプを跳びにくくなるリスクもあった。ふたを開けてみると、滑りの良さを引き出す以上に、安定していたトリプルアクセルが不安定になるなどマイナスに働いた。
「もしそれが今年だったら、大変なことになっていた。でも失敗して、今までのブレードが合うんだと結論が出た。気持ちの面も含め、いろいろなことで迷いがなくなったのはプラスだと思うんです」
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2013年10月17日(木)22時56分 - 日刊スポーツ
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