何とか銅メダルを手にしたバンクーバー――。
3度目の大舞台を控えたシーズンが幕を開けた。
スケート人生の集大成。目指すものはただひとつ。
偽りのない表情が、真実味を感じさせた。
「こうやってスケートができていることは幸せだと思う」
本当なら気を張りつめていておかしくないはずだ。なのに柔らかい空気を漂わせる。夏の間、土台作りにと厳しく取り組んでいた陸上トレーニングについて尋ねられれば、「陸で動くのは苦手なんです(笑)」
ユーモア交じりに、軽妙に答える。
そしてもうすぐ始まる、4年に一度しかないシーズンへの心境をこう表した。
「なすがまま、なるがまま」
オリンピックシーズンにもかかわらず、達観しているかのようにも受け取れるその言葉は、昨シーズンの悔恨、出会い、そして競技人生への思いから形作られていた。
「けっこう、もう忘れているんですけれどね」
断りつつ、高橋は昨シーズンを振り返る。
GPファイナル初制覇など、昨季は悪くない成績だったが。
悪くないシーズンのはずだった。
昨年12月のグランプリファイナルでは、7度目の出場で初めて優勝。日本男子としても史上初の快挙であった。年末の日本選手権は総合2位だったものの、フリーでは競技人生で何度あるかという圧巻の演技であらためてスケーターとしての凄みを実感させた。
暗転したのは終盤にさしかかってからだった。年明け2月の四大陸選手権で7位にとどまると、翌月の世界選手権では6位と、ここ6シーズンで最も悪い成績に終わる。
「ちょっと焦ってしまったのかな」
高橋は言う。
「まわりの状況に流されたところがあるかもしれません。下からの突き上げもあって国内でも勝つのが難しくなってきていて、負けられないという思いが強かった」
羽生結弦をはじめ、日本男子の台頭が際立った昨シーズン、若い世代の成長は意識せざるを得なかった。だからなのか、大会のたびに成績へのこだわりを言葉にすることも少なくなかった。
<次ページへ続く>
Sports Graphic Number バックナンバー
- <赤ヘル軍団の黄金期> '84年 広島×阪急 「投手王国、最後の輝き」 2013年10月10日
- <プロフェッショナル対談> 権藤博×森繁和 「修羅場を制する投手論」 2013年10月9日
- <HONDA Method> ソルティーロが本田圭佑を超える日 連載第8回 「本田が示したスクールの方向性」 2013年10月1日
その他スポーツ ニュース
北島康介、現役続行に意欲「できる限り」
2013年10月17日(木)22時56分 - 日刊スポーツ
競泳男子平泳ぎの北島康介(31=日本コカ・コーラ)が17日、都内で自身が11年に設立した「キタジマアクアティス」の水泳教室と交流会を行った。 子ども会員の教室では、美しい模範泳法を披露すると大き…記事全文
その他スポーツ コラム
-
[NumberEYES]
今季NBAがいよいよ開幕。王者ヒートの対抗馬は?~3連覇阻止へ燃える男たち~ -
[オリンピックへの道]
自身が一番分かっているソチの遠さ。安藤美姫、関東選手権の笑顔の意味。 -
[SCORE CARD]
デ杯WG復帰を決めた、“優男”添田の変身ぶり。~錦織圭に続く2番手の意地~