兵庫県尼崎市の連続変死事件で、ドラム缶から遺体で見つかった大江和子さん（当時６６歳）への傷害致死罪などに問われた長女香愛（かえ）被告（４５）ら３人の裁判員裁判が１７日、神戸地裁であった。３人の精神鑑定を担当した医師が証人出廷し、自殺した角田（すみだ）美代子元被告（同６４歳）の影響に触れ、「３被告は善悪の判断に従って自分の行動を制御する能力が失われていた」とする鑑定結果を述べた。

　鑑定は公判前に弁護側が申請し、地裁が実施。弁護側は「心神喪失状態だった」として無罪主張しており、鑑定結果が責任能力の有無にどう影響するか注目される。

　公判で鑑定医は、３被告が美代子元被告から暴行されたり食事や睡眠を制限されたりして、「隷属状態になった。美代子元被告と自分との考えの区別がつかなくなっていた」などと指摘。さらに「（脅迫や暴力などにより行動しても状況が変わらないと考える）学習性無力感に陥っていた」と述べた。

　その上で事件当時の善悪の判断能力に関して、次女裕美（４２）とその元夫の川村博之（４３）両被告は「失われていた」とし、香愛被告は「著しく損なわれていた」と指摘した。ただ、鑑定時には３被告とも精神障害はなかったとした。【椋田佳代、山川淳平】