今月に入り、福島第1原発で立て続けにトラブルが起きている。ほとんどが「タンクにゴムパッドを置き忘れた」といった単純ミスだが、原因は作業員の人手不足と士気の低下だ。事故の年は3万円近かった日当が今では半分以下に。なのに、国と東電が「急げ、急げ」とプレッシャーをかけるから、ミスが増えるのも当然だ。
士気の低下はカネのせいだけじゃない。福利厚生面の待遇悪化が作業員のやる気をそいでいるという指摘がある。
以前は線量オーバーで離職した作業員は、無料で健康診断や人間ドックを受けられたが、今ではよほどの高線量を被曝(ひばく)しなければ認められないという。作業員の取材を続けているジャーナリストの布施祐仁氏が言う。
「東電のコストカットで、事故直後は温泉旅館やホテルだった作業員の宿がプレハブみたいな仮設住宅になりました。しかも個室ではなく相部屋がほとんど。これではプライベートを保てないし、疲労回復は望めないでしょう」
作業員は床にマットを敷いただけのプレハブ内で雑魚寝をして休憩する。全面マスクと防護服で包まれた作業員はいつも汗でビッショリ。そんな男たちが集まれば、異臭もするし食事どころではなくなる。しかも、以前は新品の下着が毎日支給されていたのに、今は洗濯して再利用するようになった。他人の臭いが残っている場合があるという。
<ムワッと漂う男臭で仕事どころじゃない>
「作業員が口を揃えて『クサイ』と訴えるのがマスクにこびりついた臭いです。呼吸口のフィルターは毎回交換しますが、ヘルメット部分は事故直後から使い回しているものがあるそうです。かぶった瞬間、ムワッとした男の臭いで息苦しくなるといいます」(布施祐仁氏)
福島原発はただでさえ危険な現場だ。給料が安いうえ環境が不衛生では、腕のいい働き手が集まらなくなるのは当然といえる。蟹工船みたいな労働環境の改善は喫緊の課題だ。
(日刊ゲンダイ2013年10月16日掲載)