実力主義 自ら見せる
勝ち気な姿勢は選手から兼任監督と立場が変わっても同じだ。会見で42歳での就任を問われると、質問が終わらぬうちにマイクを握った。
「別に若いとは思わない。プロに入って25年やってきて、現実2900試合出ている。その経験というのは、日本プロ野球の中でも、僕のほかにいらっしゃるのは野村(克也)さんだけ」
言葉の節々から強烈な自信が透けて見える。横浜(現DeNA)、中日の2球団で正捕手を任され続けてきた。守りの名手に贈られるゴールデングラブ賞もセ・リーグ歴代2位タイの6度受賞した。
貪欲に勝利を求めてきた。仲間にも志を高くもってほしい。今季、象徴的だったのが4月21日のDeNA戦。元同僚のブランコに3試合続けて本塁打を浴びた。厳しく内角をつけず、失投をはじき返された。「みんな優しい。戦う集団じゃない」。腹が据わらない投手陣を一喝した。
目指すは端的に「強いチーム」と表現する。それは伝統の守り勝つ野球だ。「3万人のお客さん誰が見ても、アウトだと思った打球をアウトにする野球をしたい」。4位に終わった今季の失策は78。2位だった昨季より23も増えた。守りの要として常勝チームを支えてきた経験がそう言わせる。
チームづくりはこれから。編成を任される落合GMは8年間の監督時代、4度のリーグ優勝、53年ぶりの日本一を達成した。名将の陰に隠れやしないか。ファンが感じそうな不安を一蹴した。「それは皆さんが言っていること。自分が思うようにやりたい」
今季はエース吉見ら主力にけが人が相次いだ。若手も力を伸ばせていない。全体の底上げが求められる難しい環境からチームを立て直さなければいけない。「厳しい環境に身を置いて自分を成長させたい」。逆境を乗り越え、強いドラゴンズを取り戻してみせる。(松山義明)
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谷繁新監督に中日ドラゴンズの再生が託された。2リーグ制になった1950年以降、中日では55年の野口明監督以来2人目の選手兼任。チームをどのような色に染め上げ、頂点へ導くか。若きリーダーの言葉から未来像を描く。