かつての名将がチームを統括する新たな役割を担って戻ってきた。11日に会見した落合博満新ゼネラルマネジャー(GM)。佐々木社長ら球団幹部と会談も行い、「このままでは駄目だから現場を何とかしろ、ということ。球団への最後のご奉公と思ってやる」と力を込めた。
会見で古巣の再生に臨む決意を強調。監督時代は「現有戦力の10%底上げ」を掲げ、就任1年目にリーグを制覇した新GMは、今回も「優勝を狙わなかったら野球選手なんてやっちゃいけない」と断言した。
まだ正式に契約していない谷繁新監督の任期について、選手兼任で今後2年はプレーする見込みを示し、さらに監督としては「最低4年を考えている。5年目は彼の手腕に懸かっている」と長期契約の可能性を示唆した。
野球への没頭再び
まさに野球漬けの日々を予感させる落合新GMの初登場となった。
正午すぎに球団事務所へ現れ、幹部と早速懇談。午後2時から会見に臨んだ後、編成部門の責任者らと協議を重ねるなど精力的に動き、すべての日程を終えたのは午後8時だった。
「強いドラゴンズをつくって、お客さんがナゴヤドームに見に来てくれるような、そういう思いを込めて野球をやらないと。一度離れたお客さんは戻って来てくれない」。強くなければ繁栄はない。会見で発した思いこそ、白井オーナーが招請を決めた理由だろう。
そのためには何が必要か。8年間の半分でリーグ制覇を成し遂げた監督時代。黄金期を築いた原動力は、やはり野球への没頭だった。「どうやったら強くなるのかなと考えてきた結論は、練習しなければ選手はうまくならない、体力はつかない。そこが基本線」
今回は戦う態勢を整えるのが第一の役目。ただ、そのチームづくりにはこれまでの実体験が当然反映される。1年目から優勝を狙うかと問われ「それをしなかったら、野球選手なんてやっちゃいけないんじゃないですか」。静かだが、迫力十分の言葉が、再出発するチームを引き締める。(高橋隆太郎)
予算内で戦力増強
プロ野球でGMを導入しているのは中日を含めて5球団。落合新GMの明確な役割の範囲は最終的に決まっていないが、西山和夫球団代表は「球団の提示した予算の枠内で戦力を整えるのが仕事」と説明。監督、コーチの人事権についても与える方針を示した。
プロ野球のGMはロッテが1995年に広岡達朗を初起用。現在は巨人、阪神、DeNA、日本ハムで採用されている。
落合 博満氏(おちあい・ひろみつ) 社会人の東芝府中から79年にロッテに入団。82、85、86年に三冠王に輝いた。87年に中日、94年に巨人に移籍。97年から日本ハムでプレーし、98年を最後に引退。最優秀選手(MVP)を2度受賞し、首位打者、本塁打王、打点王を各5度獲得した。04年から8年間、中日監督を務め、4度のセ・リーグ優勝。07年はリーグ2位からクライマックスシリーズを勝ち抜き、53年ぶりの日本一に導いた。11年に野球殿堂入り。秋田県出身。59歳。