会計検査院:賠償業務の5社 東電出身の役員ばかり
毎日新聞 2013年10月17日 06時30分
東京電力が2011〜12年度、福島第1原発事故の賠償業務を関連会社5社に随意契約で発注していたことが、会計検査院の調査で判明した。うち4社は東電出身の役員が27人中24人を占め、残る1社も今年7月に買収されるまで役員6人全員が東電出身だった。価格競争をせずに身内の会社と契約し、膨らんだ費用は電気料金の原価に算入される。識者からは東電の「高コスト体質」を問題視する声も上がる。
5社の本社はいずれも東京にあり、東電との随意契約は13件、約94億円に上る。最も多い6件を受注した「テプコシステムズ」は東電が全額出資するシステム開発会社で、東電出身の役員は10人。売り上げの91%が東電やグループ企業との取引だ。
検査院によると、同社が請け負っていたのは、被災者に書類を送付したり、事務所を借り上げたりする業務。このうち書類送付業務は、郵便物の宛名印刷や請求書の封筒詰めといった作業が中心で、東京都内の印刷業者は「官公庁ではほぼ100%で入札になる。最近は民間企業でもほとんどが入札だ。作業内容も難しくないのになぜ随意契約なのか」と首をかしげる。
同様に書類送付業務を受注した「キャリアライズ」と「東京レコードマネジメント」は、いずれも役員4人が東電出身だった。
東電は業務用自動車のリースでも「東電リース」に随意契約で発注。同社は役員6人が東電出身で、ホームページに「東電・グループ会社社員専用」のマイカーリースのコーナーを設けるなど東電と関係が深い。
コールセンター業務を受注した「TEPCOコールアドバンス」も、今年7月の買収前は6人の役員全員が東電出身だった。
東電は取材に「短期間に賠償態勢を構築できることから関連会社に発注した」と説明した。
著書に「東電解体−巨大株式会社の終焉(しゅうえん)」がある経済評論家の奥村宏氏は「子会社に東電出身の役員が多いのは、職員の再就職先を確保する従業員対策だろう。コストを抑えるよりも身内を潤すために随意契約にしたのではないか」と指摘している。【神足俊輔、古関俊樹】