Jリーグを見ているファンが思ったことだろう。柿谷はどうしたのか? シャープな動き出しと柔らかなファーストタッチ、そして抜群の決定力。だが、そんなシーンは皆無だった。5戦連続不発。桜色のユニホームを着て躍動するエース候補はどこへいったのか…。「2試合連続でゼロ得点だったので、それだけだと思う。個人的な技術のところ。入らないときは入らない。決められるように頑張るだけ」。決定機は前半13分の一度だけ。仕事らしい仕事もできなかったストライカーに、語るべき言葉がなかったのもうなずける。
何度も、何度も走った。味方がボールを奪った瞬間、柿谷はクルッと素早く半回転。相手DFの視界から消えるように外へ膨らみながら裏側のスペースを狙って走った。そうやってC大阪では好機をつかみ、ゴールを量産してきた。だけど、この日は一度として配球されなかった。
「(柿谷)曜一朗君は常に裏へ動き出していた。それでも誰も(出さない)。見ていて(パスを)出してないのか分からないけど、そこが一番の持ち味やのに生かし切れなかった。もう少し早く出していれば、というシーンが何回かあった。曜一朗君が窮屈にしてるのかなって感じた」
呼吸、タイミング。それを「連係」というのだろうが、それ以前に欧州組が柿谷という男を知らない。柿谷がブレーク直後ということもあるのだろうが、ベンチから見守ったGK権田も「みんなに理解されていないですよね。どの形が得意なのか。曜一朗ももっと要求していかないと」と歯がゆそうだった。
唯一無二の武器は、DFラインの裏側へ抜け出す駆け引きとタイミング、スピードにほかならない。そこから先の技術については言うまでもない。1カ月後、欧州で強豪2連戦。苦境を脱するカギは、柿谷を理解することにある。
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