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全業務停止6ヵ月の命令を受けたアブラハムPB・高岡壮一郎社長を直撃! /伊藤 博敏

現代ビジネス 10月17日(木)8時5分配信

全業務停止6ヵ月の命令を受けたアブラハムPB・高岡壮一郎社長を直撃! /伊藤 博敏
「いつかはゆかし」公式HPより

金融庁は、11日、投資助言業者のアブラハム・プライベートバンク(PB)に対し、金融商品取引法に違反、無登録で海外ファンドの商品を販売していたとして、全業務を6ヵ月間、停止する命令を出した。

相当に重い。登録取り消しに次ぐ処分で、しかも顧客が海外ファンドを購入する際、助言とサポートを行う、というビジネスモデルを否定されたので、6ヵ月後に、また同じ事業を再開はできない。


*** 「海外ファンドへの投資助言は、認められない」 ***
アブラハムPBの社長は高岡壮一郎氏。東大を卒業後、三井物産勤務を経て、アブラハム・グループを立ち上げ、富裕層向けのプライベートクラブ「YUCUSEE(ゆかし)」を運営する。

アブラハムPBの「いつかはゆかし」は、将来の「ゆかし」を目指す若年層向けのサービスで、「1億円は貯められる。月5万円の積立で」という派手な広告戦略で、ここ1年の間に一気に知名度を高めた。

しかし、金融庁にビジネスモデルを否定され、今後、どう展開するのか。既存の顧客をどうするのか。

再建が容易でないことは指摘しておくべきだろう。

まず、信頼回復の難しさである。

アブラハムPBに対して、誰もが感じる疑問は、英系金融機関が提供する「海外積立(自分)年金」は、営業報奨金がつきものなのに、同社が「営業報奨金は受け取っておらず、投資助言手数料と会費で賄われています」と、断言していた点だ。



営業報奨金がないということは、確かに中立的な立場からアドバイスをすることができる。だが、受け取らないということは、例えば、「月に5万円の契約ならその8ヵ月分(40万円)、あるいは10ヵ月分(50万円)」などと決まっている英系金融機関の報奨金を軸に世界で営業展開するビジネスモデルを否定することになる。なにより、みすみす収益を逃すのはおかしな話だった。

これについて、証券取引等監視委員会の調査でアブラハム・グループ・ホールディングスは、海外籍広告代理店・サゲイシャス・トレンド・インターナショナル(STI)から成果報酬型の広告料として、海外ファンドの購入額に応じた報酬を受け取っていることが判明した。同社は、「営業報酬ではなく広告料」と説明するのだが、金融庁ならずとも納得できまい。

それ以上の問題は、日本国内での海外ファンド購入の「投資助言とサポート」というビジネスモデルが、「無登録勧誘であり販売」として否定されたことである。

高岡社長は、「日本人の金融リテラシーをグローバルスタンダードに近づけることで、将来不安を抱えるすべての人を安心へと導くこと」をビジョンとして掲げてきた。そのビジョンに対し金融庁は、「海外ファンドへの投資助言は、認められない」という方針を、明確に打ち出した。


*** 「優良な海外ファンドは、販売できるように登録取得を目指したい」 ***
高岡社長は、どう考えているのか。業務停止命令を受けた日に、高岡社長は、私の疑問に答えてくれた。

---金融庁の業務停止命令をどのように受け止めるか。

「重く受け止め、既存のお客さま(投資家)に迷惑がかからないようにサポートを継続するとともに、社としては業態変換をしていきたい」

---ホームページ上で、金融庁との「見解の相違」を主張されていたが、具体的にはどういうことか。

「第一に、当社アブラハム・プライベートバンク(APB)は事前に投資助言契約を締結した方に"助言とサポート"を提供しており、勧誘はしていなかったこと。第二に、バージン諸島のSTIは海外籍の広告代理店で、成果報酬型の広告料を親会社アブラハム・グループ・ホールディングス(AGH)が受け取っていたものの、営業報奨金は受け取っていなかったこと。第三に、広告業者AGHと、投資助言業APBは、一体ではないこと。以上の3つの当社の主張を金融庁は退けた」



---最も肝心なのは「第一の理由」だと思う。"助言とサポート"が勧誘にあたるということになると、国内で海外ファンドの購入をサポートするというビジネスモデルそのものを、否定されたことになるのではないか。

「そう受け止めた。従って、当社は今後、第一種か第二種の金融商品取引業者となって、国内で登録されたファンドを推奨販売しようと思っている。また、当社がこれまで投資助言したような優良な海外ファンドは、販売できるように、登録取得を目指したい」

---営業報奨金と成果報酬型の広告料の違いがわかりにくい。金融庁は、「勧誘の見合い」と受け止めた。英系ファンド発行会社のもの1社だけを扱ったのではないか。

「1社だけではなく、親会社AGHのメディアビジネスの対価として受け取っていたのだが、そう認定はしていただけなかった。また、AGH、ABP、STIは一体となって、海外ファンドのために、勧誘を行っているとみなされた」

---全業務停止6ヵ月は重い。その間の活動はどのようなものになるか。

「3000人以上のお客さまがいる。サポートは継続するし、AGHの広告ビジネスも続ける。また、当社の顧客サポートのためにも業態変換したうえでの事業継続が必要で、準備を進めたい」

要は、日本の金融機関が扱える海外ファンドを、認可を受けた金融商品取引業者として、"普通"に販売するということだ。

業務停止命令という"傷"を負いながら、特色を打ち出さずに再生できるのか。それが「茨の道」であることだけは間違いない。

最終更新:10月17日(木)8時5分

現代ビジネス

 

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