社説:伊豆大島の災害 命を守る策尽くしたか

毎日新聞 2013年10月17日 02時35分

 台風26号による集中豪雨に見舞われた東京都大島町(伊豆大島)で、土石流などによって多数の死者・行方不明者が出ている。

 広域にわたって洪水や土砂災害が発生し、多くの家屋が押しつぶされた。警察や自衛隊などによる捜索・救助活動に全力を挙げてほしい。

 なぜ大切な命を救えずに大きな被害を生んでしまったのか。徹底的な検証が今後、必要だ。

 大島町の1時間雨量は観測史上最大の122.5ミリに達し、16日午前11時までの24時間雨量は800ミリを超えた。想像を絶する雨量だ。

 気象庁は8月30日から特別警報の運用を始めた。50年に1度の気象災害の発生が予想される時に出されるもので、ただちに命を守る行動をとるよう住民に呼びかける。

 気象庁がホームページで示した市町村ごとの「50年に1度の雨量」によると、大島町は「48時間雨量で419ミリ」だ。だが、特別警報は出なかった。気象庁によると、特別警報の発令は、予想される災害が「都府県単位の広がり」として発生することを基本としているため、今回は対象にならなかったという。

 差し迫った災害の危険性と避難の必要性をわかりやすく伝えるために始まった特別警報だ。きめ細かい対応が望ましいのは言うまでもない。今回のケースを教訓に、発令のあり方を検討し直すべきだ。

 もちろん、警報の有無に関わらず、早めの避難を心がけるのは防災上、もっとも重要なことだ。その最前線に立つのが市町村だ。

 大島町では災害時、避難勧告や指示を出さなかった。風雨が強く、避難は危険との判断があったようだ。確かに外出が危険な時は、家にとどまる判断もあり得る。だが、過去10年で最大級の勢力の台風だと事前に繰り返し報道されていた。現地は火山灰が堆積(たいせき)する地質だ。土砂崩れの危険性も考慮すれば、もっと早く避難ができたのではと悔やまれる。

 当時、トップの町長は出張で不在だった。そうした場合でも役所としての危機管理が適切に行われる体制が当然求められる。台風が頻繁に通過する地域だ。ハザードマップ作りなど日ごろの備えは十分だったのか。都との連携が機能していたのかも含め、自治体の対応は最大の検証対象だ。

 中央防災会議の防災対策推進検討会議は昨年、東日本大震災を踏まえ、防災対策の方策をとりまとめた。

 その中で、防災に当たっては「楽観」を避け、より厳しい事態を想定すべきだとうたう。また、災害対応は、「人の命を救う」ことをはじめとして、「時間との競争」であることを意識すべきだとしている。今回の大災害の教訓でもある。

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