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女性の飲酒と健康

近年女性の飲酒は頻度、量ともに増加し、男性に近づいています。女性はアルコールによる肝障害を来たしやすく、不妊、自然流産、乳がんの危険が高まります。妊娠中の母親の飲酒では、胎児性アルコール症候群を来たすことがあります。また短期間で依存が形成されることもあって女性のアルコール依存症も増加しています。

 これまで習慣飲酒者は女性に比し男性が多く、アルコール依存症をはじめとするアルコール問題も男性が大多数でした。しかし近年女性の社会進出に伴って女性の飲酒率、飲酒頻度が増加し、男女差は急速に縮小しています。特に若年女性での増加が顕著です。久里浜アルコール症センターに初めて受診するアルコール依存症者の女性割合も80年代は10%前後でしたが、最近20%近くになっています。

 一般的に女性は男性より体格が小さく、それに伴って肝臓の容積も小さくなります。そのため男性と同じ量を飲酒するとアルコール代謝のために肝臓にかかる負担が大きくなります。また、女性ホルモンとアルコールが関係して、有害作用をきたすという研究もあり、これらの結果として女性の飲酒は男性より臓器障害を来しやすいのです。飲酒による肝障害、肝硬変は、男性の半分量で来たすとされています。アルコール1日2ドリンク以上の摂取で乳癌の危険が高まります。性周期の乱れ、自然流産(1日2ドリンク)、不妊(1日6ドリンク)のリスクも高まります。母親の妊娠中の飲酒は、子の出生時低体重、顔面奇形、神経発達異常(軽度精神発達遅滞など)がみられる胎児性アルコール症候群(Fetal Alcohol Syndrome, FAS)のリスクとなります。また、女性飲酒者は自動車事故をはじめとした致死的な事故を起こしやすいとされていますが、他者からの暴力被害も受けやすく、特に夫からの暴力が多いとされています。

 大量飲酒を数年間続けると、飲酒をコントロールできず、強い飲酒欲求があり、様々な飲酒問題が生じるアルコール依存症を発症しますが、女性のアルコール依存症も増加しています。飲酒が習慣化してからアルコール依存症発症までの期間が男性では一般に10~20年以上とされていますが、女性は6~9年と短く、そのため女性は平均発症年齢も低くなります。女性アルコール依存症は、気分障害、パニック障害摂食障害、他剤乱用など、精神障害の合併が多く、特に29歳以下の女性アルコール依存症者は、約7割が摂食障害を合併するという報告があります。

 女性はアルコールの害を受けやすいため、健康日本21で示されている男性のローリスク飲酒の目安である「1日2ドリンク以下、週2日以上の休肝日」よりも少量の飲酒とすべきでしょう。また、アルコール依存症に至っている場合、治療の導入にあたっては周囲の協力が重要です。この際、問題を強調して強引に治療につなげようとすると、「そうではない」という否認の心理も強く作用してしまいます。アルコール依存症が病気であること、周囲が心配し、回復を望んでいることなどを共感的態度で伝えていきます。治療目標である断酒を継続するため、専門病院での入院や外来治療をおこないますが、回復を目指す依存症者のミーティング(自助グループ)参加も大きな力となります。異性を意識せず、自己表現しやすい女性のみのグループも実施されるようになっています。

宮川朋大

参考文献

  1. 厚生労働省: 成人の飲酒実態と関連問題の予防について
    http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/061122b.html
  2. 健康日本21-各論. アルコール.
    http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/kakuron/index.html