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インドネシアに息づく 日本人救世主伝説

WEDGE 10月16日(水)12時12分配信

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インドネシアに息づく 日本人救世主伝説

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インドネシアに息づく 日本人救世主伝説
写真・バリ島でも中国政府批判を行う法輪功

 インドネシアのバリ島に行った。家族共々、バリ島が大好きでリピーターである。大抵のビーチはよく知っているので、今回、島に渡ってダイビングをすることにした。すると、ある異変が起こっていた……。

 尖閣問題以降、日本には来てくれなくなった中国人観光客が、大挙して島に押し寄せていた。シュノーケリングやスキンダイビングのツアーの8割は大陸から来た観光客だった。マナーが悪くて煩く、静かな離島のビーチをイメージしていたが、江ノ島並みに混雑して参った。おまけに埠頭では法輪功の団体まで騒いでいた。

 他の東南アジアと同じく、インドネシアにも多くの華僑が渡っている。インドネシアには、福建省から渡ってきた人が多い。一方、マレーシアやタイでは広東省出身者が多い。福建人と広東人は何かにつけて仲が悪いが、海外に出た華僑の中でもしっくりこないようだ。

 よく「北京愛国」、「上海出国」、「広東売国」と言うが、広東人は「福建亡国」だと言って憚らない。福建人が通った後はペンペン草も生えないと悪口の言い放題である。習近平氏は福建省の幹部歴が長く(省長4年を含む17年)、福建華僑との関係が深い。福建華僑は客家であり、李光耀(リー・クアンユー)氏やインドネシア華僑の大富豪、ジュハル・スタント(林文鏡)氏や故スドノ・サリム(林紹良)が代表である。

 習近平氏は彼ら客家華僑との緊密な仲を通じて、福建省経済を躍進させた。彼の国家主席就任の背景は華僑コネクションにあると言っても過言ではない。

JKT48並みの活躍を安倍首相にも期待する

 バリ旅行には毎回良い思い出があるが、今回も良いドライバーさんと親しくなった。バリ島に来ていつも感じるのは日本人が大変好かれていることだ。対日感情がなぜ良いのかを聞いた。彼は日本語ガイドも兼ねているので歴史に詳しく、インドネシアの独立運動の話をしてくれた。太平洋戦争終結後、玉音放送を聞いた日本軍の将兵がインドネシアに残って、インドネシアの独立戦争に参加したというのだ。2000人の日本人将兵が、インドネシア兵に交ざってオランダからの独立を戦い抜いた。

 祖国は敗戦で戦争が終わったのにインドネシア独立のために戦い、多くの命が独立戦争で散ったという。当時の事情とその理由を知る由もなかったが、天皇陛下が終戦の際に「日本と共に東アジアの解放に協力してくれた盟邦に対して済まなく思う」との玉音放送を聞いた将兵たちが自ら進んでとった行動である。インドネシア人は、一緒に戦ってくれた日本人を心から尊敬し信頼しているという。

 もう一つ面白いエピソードがインドネシアに古くから伝わる「ジョヨボヨ王の予言」という伝承である。「我らの王国は白い人々に支配される。彼らは離れたところから攻撃をする魔法の杖を持っている。白い人々からの支配が長く続くが、空から黄色い人がやってきて白い人々を追い払ってくれる。この黄色い人も我らの王国を支配するがトウモロコシの寿命と同じくらいの期間しか居ない」。この伝承は12世紀の東ジャワのジョヨボヨ王の書いた「パラタユダ」という民族の叙事詩にある一節であるが、インドネシアの人々は350年間も支配したオランダから日本軍が解放してくれたことを感謝しているのである。

 今年のバリは建設ラッシュである。10月にはAPECがあるのでデンパサールのングラライ空港もAPEC会場へのバイパス道路の整備も急ピッチだ。今回のAPECはTPPの参加を議論する場でもあるが、アセアンにおける日本の存在感を示す場所でもある。JKT48はインドネシア人に受け入れられて大人気である。今回のAPECでは我が安倍晋三首相が大活躍することを心から期待している。

中村繁夫 (アドバンスト マテリアル ジャパン社長)

最終更新:10月16日(水)12時12分

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