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せめて具体例をあげて欲しいヘイトスピーチに関する社会学者の言説

慶應大学法学部教授の塩原良和氏のヘイトスピーチに関する『ヘイトスピーチと「傷つきやすさ」の社会学』がよく理解できない。比較的長い作文なのに、用語定義と事実関係を曖昧にしたまま議論が展開されているからだ。主張の是非はともかくとして、心と心で通じあう社会学者以外にも読めるものにするために、少なくとも具体例を幾つかあげるような議論をして頂きたい。

1. マイノリティの「傷つきやすさ」にマジョリティは配慮すべき?

塩原氏の主張は次のようなものだ。歴史・社会的に構築された不公正な社会構造が理由で、マジョリティ(多数派)とマイノリティ(少数派)では罵倒されて気分的に凹む程度である「傷つきやすさ」が異なる。社会構造が理由なのだから、マイノリティの「傷つきやすさ」に対して、マジョリティは支援・優遇措置をとるべきである。

2. 具体的に何がヘイトスピーチになるのか?

この手の議論ではいつもの事だが、「明らかに非道徳的で非人道的である」と強く形容されるが、ヘイトスピーチが何かが明確にされていない。しかし幾つか在特会の発言を並べてみるが、全てが明らかに問題だとは言えない。塩原氏の基準ではどれがヘイトスピーチになるのであろうか?

  1. 「(朝鮮人は)死ね」
  2. 「(朝鮮人を)殺せ」
  3. 「日韓国交断行」
  4. (地方自治体の市民税の半減措置や特例的な不動産の貸与に関して)「在日特権を許すな」
  5. (北朝鮮労働党の下部組織である朝鮮総連の影響下にあるとされる朝鮮学校に対して)「北朝鮮による侵略行為を許すな」
  6. (公園の不法占拠が発覚した朝鮮学校に対して)「我々の先祖から奪った土地を返せ」
  7. 「日本の法律を遵守できないのであれば、どうぞ、地上の楽園にね、北朝鮮に帰ってくださいよっと言う話なんですよ」

(1)と(2)は口が悪いので不道徳な感じもするが、(3)以降は外交政策や地方行政に関する意見に取れるので明らかに非道徳的で非人道的には思えない。威力業務妨害や名誉毀損に該当するような方法であれば問題であろうが、デモ中にこれらを主張することはヘイトスピーチなのであろうか?

3. 政治的主張で傷つく事が問題なのか?

マイノリティが政治的主張で傷つく事が問題で、そうなれば何でも不道徳だと主張する事もできるかも知れない。実際、“日本から出て行くわけにはいかない在日外国人のグループ”が、その法的立場を弱めようと運動をされたり、グループそのものの反社会性を糾弾されれば傷つくのだと思う。しかしそれが問題だと言うのであれば、塩原氏は日本国憲法第二十一条、国際人権規約の自由権規約の第十九条と第二十一条の修正もしくは削除を主張しないといけないが、そうは言っていないように思える。

4. 歴史・社会的に構築された不公正な社会構造って何?

在日韓国・朝鮮人に対しては、最近に入居差別が問題になった事例もあるが、就職差別は随分となくなっているとされるし、居住地域が定められているわけでも、言論活動などが規制されているわけではない。不公正な社会構造と言うけれども、著しく具体性に乏しい。

むしろ在日韓国・朝鮮人は、自らの発言力が低くなるような選択を行っている。何代も日本で生活しており、韓国語よりも日本語運用能力に優れ、かつ将来的にも日本で生活する人々が、日本国籍を取得していない。世界中に少数民族はいるわけだが、法的権利の確保に勤めていない集団も珍しいように思える。

ある種の疑いを招くような行為も行っている。例えば彼らが民族学校と主張する朝鮮学校は、北朝鮮の影響下にある。金日成と金正日を崇める事を民族教育だと主張しているわけだが、北朝鮮ができたのは1948年なので、それがその前後に流入してきた在日韓国・朝鮮人の文化とは考えづらい。

さすがに在日韓国・朝鮮人は過半数が密航者であったこと、終戦後から1950年代ぐらいまでは阪神教育事件など共産主義者と結託して暴動を繰り返していた事は忘れ去られつつあるようだが、不公正な社会構造があるのか謎ではあるし、日本人の在日韓国・朝鮮人への印象は、在日韓国・朝鮮人の自己実現的に形成されてきた歴史があるように思える。

5. 曖昧すぎる社会学

塩原良和氏の議論を読んでいると、前提となる用語定義と事実関係が曖昧なままなので、よくよく考えると何を言っているのかさっぱり分からない。抽象的な議論も大事だと思うのだが、それなりの量の文章なのに具体例が一つも出てこないわけで、これだとレトリックで何かを誤魔化そうとしているようにさえ読めるわけだ。少なくとも説得性は無いように思える。これが社会学の方法なのであろうか?

uncorrelated
WEB+DB屋。計量分析・経済政策にも詳しい。

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