ナチュラルな歪み感の少ない伸びやかで透明感の高い中高音の再生を求めて、
ツイーターの振動板に純マグネシウムを採用しています。
 金属固有の癖が無くソフトドーム特有のしなやかさと金属の持つ高い応答性を
両立した純マグネシウムツィーターは、音像の輪郭を鮮やかに描き出す高い再
生能力を実現し、ボーカルの溶け込むような微細な息づかいまで正確に再現し、
まさに肉声の実体感溢れる音像定位を実現しています。
 さらに、形状を起因とする共振音を排除するためにボイスコイルよりドーム先
端までの距離が異なる新開発のリッジドームを採用し、素材・構造共に徹底し
た低歪みの思想により奥行き感のある透明度の高い中高音を実現しました。
 これまで、金属系ツィータ用振動板では主にアルミ合金、チタンなどの軽金属が高い剛性と振動板を伝播する
音速の速さにより、使われてきました。 一方では、金属が持つ振動減衰性能の低さから、ピーク感や金属固有の
残響音があるなどの短所もあります。こうした短所を補うものとして近年になってマグネシウム合金を用いた薄
肉の振動板が開発されて来ていました。
 純マグネシウムは他の合金と大きくその物性が異なり、両立の難しい大きな内部損失と音速を実現している音

響用金属素材素材として理想のバランスを持っています。
 しかし、軽量・高剛性で振動減衰性能が高い純マグネシウムは薄肉化や成形などの加工が難しかったことから
実用化に至りませんでした。フォステクスでは純マグネシウムの持つ基本的物性に注目し、特殊連続温間圧延技
術や、金型設計、温間深絞り加工技術に加え、素材に特殊樹脂をコーティングしその潤滑効果により絞り性を向
上、初めて純マグネシウム振動板の成形に成功いたしました。
 ウーハーには固有の共振を押さえ、軽くて強靱な振動板形状として開発され
たHP振動板に新たな抄紙技術を投入し発展させたHR形状を持つ13cmウーハ
ーを採用しています。
 この振動板形状の能力の高さはさまざまな放送局スタジオや録音スタジオで
実証されています。スピード感溢れるトランジェントの高い低域を実現するた
めに磁気回路には13cmウーハーには異例の直径120mmもの
の大型フェライ
トマグネットを用いた強力磁気回路を採用し、優れたレスポンスと低歪みを実
現するショートボイスコイルを採用しています。
 また、癖の無い軽くて強い振動板をめざし独自の抄紙技術によりバナナパル
プをベースに、高弾性カーボンをはじめ7種類に及ぶ素材を複合したハイブリッ
ド振動板です。芯のある応答性の高い低音再生めざし、さまざまな角度からの
アプローチにより13cmの小口径を生かしハイスピードな再生とともにスケー
ル感のある低音が再現されます。
1)HPとは
 HPとは、通称HP Shell(双曲放物曲面)または、HyperShell
と呼ばれている建築構造力学の分野では知られている3次曲
面構造です。
 HP構造の基本的特長として、同一平面にない2つの線分間
を直線で結びながら移動させることにより、双曲面と放物面
が構成される点です。一見複雑な曲面ですが従来構造の曲線
で構成されている振動板と異なり、基本的に直線構造で構成
されています。
このため面内応力としてせん断力のみが存在し、曲げ応力が
働かないため高い強度が得られ、振動板の共振周波数が高く
なり従来の振動板に比べてスピード感のある立ち上がりの早
い音質を得られます。(図1)
 さらに、この直線は異なる長さで構成されているために、
特定の定在波が振動板上に立たないので、ピークが発生せず
スムーズなレスポンスを実現しています。HP構造の特長とし
て、ねじれた曲面構造をとり、特定の大きな共振が発生しな
いため、スピーカ固有の色づけが抑えられます。
2)複合材振動板
 従来の木材パルプNBKPのみでは、繊維レベルでの結合力不

による歪み音を伴っていました。これは、木材パルプコーン
が宿命的に抱えていた問題と考えられてきましたが、この問題
を解決するパルプ材として繊維径が細く長い上に結合力の高い、
バナナパルプをベース材に採用しています。複合材として、カ
ーボンファイバーの中でも特に超高弾性な性質を保有するファ
イバーを使用し、ダイアモンドと同等の16000mの伝播速度に
よって振動板の音速を高め、同時に曲げ剛性率を向上させてい
ます。
 さらに、破壊強度を向上させるために、一般的なアラミド繊
維の2倍の強度を持つスーパー繊維PBOを加えています。
また、振動板は高い内部損失を得ながら伝播速度を上げる要素

をバランス良く得なければなりません。そこで振動板の表面の
伝播速度を向上させることを目的にパールマイカ(雲母)を配
合し、スピード感の高い音質を実現しています。
 さらに、滑らかな右肩特性を実現するためには、振動板には

適度な厚さ剛性を取らなければなりません。この厚さ剛性と伝
播速度の両立は、困難とされてきた技術課題のひとつです。
 G1300では、伝播速度を落とさずに理想の内部損失を得る
ためにセルガイアパルプを採用し、材料の伝播速度を低下させ
ずに内部損失を向上させています。このさまざまな素材とパル
プとの結合力を高め、従来コーンでは得られなかった高い気密
性のある振動板を成形するために、バイオセルロースを結着剤
として配合し、さらに耐湿性を飛躍的に改善するため、新配合
の特殊ニトロセルロース系材料を採用し今までに無い耐湿性を
実現しています。
 ネットワーク素子にはOFC銅箔コイルをはじめクラスを越えた高音
質素子を使用した贅沢設計です。結線はすべて素子のリード線を金メッ
キスリーブによる圧着処理を行い接続ロスを極小に押さえ、音質阻害要
因を徹底して排除しました。
 さらに内部配線には、防振を行った高音質の銅・銀合金単線を使用し
力強さと繊細感を追求しています。
 ツィーターのネットワーク回路には、幅広い音楽ジャンルに対応する
ために、MIDコントローラーを組み込んでいます。このコントローラ
ーはツィーターの全帯域を減衰させずに、音楽再生に重要な中域のみを
+1〜ー2dBの範囲で調整することで、好みや音楽ジャンルにあわせた
調整が音質を損なわずに行えます。
楽器の持つ美しい響きを再現するためにはキャビネットは響きを大切で
す。
 G1300は素直な共振スペクトルと高い強度を持つ、厚み18mmの
ブナ合板を使用しています。さらに裏板には不要振動を逃がしキャビネ
ット自身が発する濁りを押さえために、高品質MDF材を配置していま
す。外観には音質検討を重ねた柔らかな響きを持たしたピアノフィニッ
シュ塗装仕上げを行っています。

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