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防火扉 30年間点検されず
10月14日 19時13分

防火扉 30年間点検されず
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福岡市博多区の整形外科医院が全焼し、入院患者など10人が死亡した火事で、作動しなかった防火扉は、過去30年間、1度も点検されていなかったことが分かりました。
規模が小さいこの医院では、防火扉の点検が義務づけられておらず、制度の問題が指摘されています。

今月11日、福岡市博多区にある「安部整形外科」で入院患者など10人が死亡した火事では、熱や煙を感知して閉まる仕組みの防火扉が作動しなかったため、火元の1階から煙が階段をとおって上の階に広がり被害が拡大したとみられています。
防火扉は定期的に点検を行っていないと正常に作動しないおそれがありますが、この医院の防火扉は、過去30年、点検が行われていなかったことが消防や点検業者への取材で分かりました。
医院では消防の査察や業者による防火設備の点検は行っていましたが、防火扉は、消防法ではなく、建築基準法に基づく設備のため、点検は行われなかったということです。
一方、建築基準法で防火扉などの点検を義務づける対象は、自治体の裁量に任されていて、福岡市では、ベッドの数が20以上の病院だけが対象で、規模の小さい診療所は対象外でした。
今回、火事が起きた整形外科医院は診療所に当たるため、防火扉は、消防法でも建築基準法でも点検が義務づけられず、一度も行われていませんでした。
福岡市のように診療所に防火扉の点検を求めていない自治体は各地にあり、防火対策に詳しい早稲田大学の長谷見雄二教授は「医療機関の防火扉という、患者の命に直結する設備の点検が、制度のはざまで放置されている現状は大きな問題で、国が主導して義務化するなど対策を急ぐべきだ」と指摘しています。

国主体で対策必要

防火対策に詳しい早稲田大学の長谷見雄二教授は「防火扉の点検は建築基準法で定められているため、消防職員が防火扉を動かす感知器まで確認することは難しいのが実態だ。自力で避難する人が難しい人たちの命がかかった問題で、国が主導して点検の質を確保すべきだ」と指摘しています。

実態調べ対策検討

建築基準法を所管する国土交通省では、昭和59年に、診療所に対しても防火扉の点検を義務づけるよう各自治体に助言していますが、実際の判断は自治体の裁量に任されています。
国土交通省は「福岡市がどのような考えで診療所を点検の対象としなかったのか分からないが、今回の火災で防火扉が機能しなかったのは事実なので、点検などの実態を調べて対策を検討していきたい」と話しています。

防火扉点検の動き広がる

制度のはざまで防火扉の点検が義務づけられていなかった診療所では、今回の火事を受けて、防火扉がきちんと作動するか確認する動きが広がっています。
福岡市中央区にある「松本整形外科」は、火事が起きた医院と同じ、入院ができる「有床診療所」で、3階建ての建物の合わせて11か所に防火扉が設置されています。
松本光司院長は、これまで年に2回、消防法に基づいて業者が行う設備点検の中で、防火扉が作動するかについても確認されていると考えていました。
ところが14日、業者から提出された点検結果を改めて確認すると、火災報知機や煙を建物の外に出す排煙設備などは点検されていましたが、建築基準法に基づく設備の防火扉は入っていませんでした。
防火扉はセンサーが煙を感知してロックが解除されても、腐食などがあると壁に収納されたまま動かないおそれがあります。
14日、松本院長がみずからロックを解除してきちんと閉まることを確認しましたが、医院では早急に正式な点検を業者に依頼することにしています。
松本院長は「防火扉も点検されていると思い込んでいたので驚いている。患者の命を守る大切な設備なので、行政は縦割りにならずに漏れなく点検が行われるような制度を作って欲しい」と話していました。

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