福岡・整形外科火災 7カ所の防火扉が1つも閉まらず
福岡市の病院で11日未明に起きた火事は、無残にも入院患者ら男女10人の命を奪った。この病院では、2週間前に避難訓練をやっていたということだが、7カ所の防火扉が1つも閉まらなかったことが、被害拡大につながったとみられている。
発生から20時間が経過した火災現場。
火事があった医院の入り口、ドアの上部は黒く焼け焦げ、さらに足元には破片が散らばっていた。
40年以上の歴史があり、地元では人気のあった病院で悲劇は起こった。
安部整形外科・安部龍暢院長は「患者様、ご家族の方、その他関係者の方々に、多大な被害を発生させてしまいました。院長として誠に申し訳なく思い、心よりおわび申し上げます。本当にすみません」と謝罪した。
10人が死亡した病院での火災。
発生したのは11日未明のことだった。
窓から立ちこめる黒い煙。
周辺には住宅も多く、現場は騒然となった。
目撃者は「表出たらね、とにかく一番向こうの奥の部屋が真っ赤だった、もう。真っ赤な。なんか電線が燃えるような臭いがした」と話した。
通報からおよそ2時間半後、火は消し止められたが、この火事で10人が死亡した。
亡くなったのは、元院長・安部龍秀さん(80)、その妻・百合さん(72)の2人と、松隈芳子さん(70)、塚原 ヨシ子さん(88)ら入院患者8人で、いずれも70歳以上の高齢だった。
亡くなった松隈さんの弟は、「もう歩けないから、病院に入れてましたので、1人でもう生活できないから、介護関係でどこか、もう老人ホームに入れようかなと思っていました。本人も言っていたので、それが悔しいです」と話した。
現場は、JR博多駅近くの市街地にある安部整形外科。
火元は1階とみられ、医療機器の周りで、激しく燃えた形跡があるという。
安部整形外科・安部龍暢院長は「(出火場所と)ちょうど言われてる場所というのは、ホットパックといわれる、ぬくめる道具があって、それを入れる大きいお湯を沸かすような、金属製の箱があって、同じ空間にたくさんの機械を置いてるんですよ、いろんな機械を。夜間帯は全部、それに関しては全部電源を切ってる状態なので、ほかの機械っていうのは考えにくいと思う」と話した。
なぜこれほどの犠牲者を出してしまったのか。
福岡市消防局は会見で「通報が遅かった。それと初期消火がなされていなかった」と述べた。
最初に火災に気がついたのは、当直の看護師。
2階で出火に気づき、一度外へ出て、付近を通ったタクシーの運転手に通報を求めた。
運転手が110番をし、さらに警察が消防に連絡をしたという。
福岡市消防局は会見で「(消防の)先着隊が着いたときには、1階の窓、あるいは開放部から、もう火炎が噴き出していたことを考えますと、やはり、最初の出火時から時間が経過していたと思う」と述べた。
病院側の説明によると、夜間帯に1人で勤務する際の防火対策マニュアルは、作成していなかったという。
元小田原市消防本部職員・永山政広氏は「初期消火が成功しているとすると、これほどまでに煙が拡散しなかったであろう」と話した。
火元となった1階には診察室があり、2階が入院病棟、3階には前院長夫婦が暮らしていた。
10人のうち7人が2階で死亡した。
原因は、煙による一酸化炭素中毒とみられている。
煙などを防ぐため、1階から4階、あわせて7つの防火扉があり、火事の際には自動で閉まるはずだったが、今回、それらが自動では作動せず、全てが開いたままの状態だった。
安部整形外科・安部龍暢院長は「開かなかったといわれてる防火扉も、ちょうど開け閉めを(9日に)確認した。9日なんですけど、確認をしておったんですよ。ただ、2階に限ってが、給食を運ぶときに限っては、お茶が来たりとか、食事を運ぶ配膳車が(防火扉前)に来たりとかいうことで、もしその20分、その時間にもし火災が起こった場合に限っては、閉まらないということが発生します」と述べた。
消防によると、防火扉は業者が管理しており、6月に検査した際には、目視の確認しか行っていなかったという。