数話完結のオムニバス形式(「ACT1」〜「ACT10」)で構成され、エピソードを幾重にも積み重ねて描いていく、いくえみ綾の人気漫画『潔く柔く』。今回、映画化の軸としたのは、高校時代に自分に想いを寄せていた幼なじみの男の子・ハルタを亡くし、喪失感を抱える瀬戸カンナのストーリー「ACT2」と小学校時代に同級生の女の子と交通事故に遭い、自分だけが生き残ってしまう赤沢禄のストーリー「ACT6」、そしてカンナと禄が運命的な出会いを果たす「ACT10」。企画の立ち上がりは2010年。連載が間もなく終わるというタイミングで、原作の大ファンでもあるC&&Iエンタテインメントの八尾プロデューサーが、出版社に企画書を持ち込むところから始まる。
「他社さんも名乗りをあげていたので、まずはシノプシスを作り、原作権も取れていないのにシナリオまで作ってプレゼンに通いました」(八尾)
原作では13巻に渡って紡がれた膨大なエピソードを、映画では2時間に収めなくてはいけない。どこを映画化するか全貌が見えるような構成案を提出し、何度もいくえみ先生とのやりとりを繰り返した。そしてほぼ同時期、原作を読んだ日本テレビの畠山プロデューサーも名乗りをあげ、共に映画化実現に向け、開発を進めることになった。
「オムニバス形式で映画化するというアイデアもありましたが、各エピソードがそれぞれ非常に深い原作なので、2時間という制約の中であれば、カンナと禄のエピソードを中心にお話を作った方がいいなと。いくえみ先生も同じ気持ちでしたね」(畠山)
いくえみ先生からも、「全編通しての主軸はカンナで、禄はカンナを救う存在として登場させたキャラクター。エピソードを絞り込むのであればこの二人以外は考えられない」との話があったとのこと。
さらに、感涙の大ヒット純愛映画『僕の初恋をキミに捧ぐ』を手掛けた畠山プロデューサーには「最愛の人を亡くした主人公の女の子は、その後どう生きていったんだろう。次に映画を作る時は、大切な人を失った人がその悲しみをどう乗り越えて生きていくかを描きたい」という思いがあった。
「亡くなった人のことを想い続けるのは、それはそれで美しいけれど、それでも人は生きなくてはいけない。ごはんを食べて、働いて、笑って、怒る。その中で、亡くなった人への想いを抱えつつも、また誰かを愛することもあると思うんです。すぐには無理かもしれないけれど、いつかは誰かを好きになって前を向いて歩いて欲しい。そんな思いを込めて作りました」(畠山)
こうして、カンナと禄を軸にして紡がれる映画『潔く柔く きよくやわく』の制作が始まった。