JR横浜線:高齢者助け出そうと踏切へ…女性はねられ死亡

毎日新聞 2013年10月01日 21時46分(最終更新 10月02日 00時03分)

事故のあった踏切。村田さんは線路で倒れていた男性を助けようとして、電車にはねられ死亡した=横浜市緑区で
事故のあった踏切。村田さんは線路で倒れていた男性を助けようとして、電車にはねられ死亡した=横浜市緑区で
事故現場の図
事故現場の図

 1日午前11時半ごろ、横浜市緑区中山町のJR横浜線鴨居−中山間の川和踏切で、線路上に横たわっていた同区の無職男性(74)を助け出そうとした同区台村町、会社員、村田奈津恵さん(40)が、東神奈川発橋本行き下り普通電車(8両編成)にはねられて死亡した。男性も病院に搬送されたが左鎖骨の骨折で命に別条はないという。

 神奈川県警緑署などによると、村田さんは父恵弘(しげひろ)さん(67)が運転する乗用車の助手席に乗り、先頭で踏切待ちをしていた。男性が踏切内の奥の線路上にうつぶせで横たわっているのを見つけたため降車し、下りた遮断機の内側に入り込んで助け出そうとしたところではねられたという。

 踏切内に人がいるのに気付いた運転士が急ブレーキをかけ、付近にいた人も非常停止ボタンを押したが間に合わなかった。

 現場の踏切は中山駅に近い商店街の一角にあり、警報機、遮断機のいずれも設置されている。同署は男性が踏切内にいた経緯などを調べている。【一條優太】

 ◇「優しい子だった」…車同乗の父

 亡くなった村田さんの父恵弘さんは1日夕、報道陣の取材に応じ、「小さい頃から優しい子だった。『(助けようとした)おじいさんは助かったよ』と伝えたい」と語った。

 恵弘さんによると、村田さんは現場の西約300メートルの自宅で恵弘さんが経営する不動産会社に勤めていた。線路上にうつぶせで横たわる男性に遭遇したのは、仕事先から恵弘さん運転の車で会社に戻る途中だった。

 助手席にいた村田さんは「助けなきゃ」と言いながらドアを開けて飛び出した。恵弘さんは「やめろ」と制止したが、耳に入らない様子で踏切内に入っていったという。

 恵弘さんは「線路内に人がいたら誰でも『何とかしなければ』と思うはず。力は強くない方だから、助けようとして力尽きたのかもしれない」と肩を落とし、「娘は正義感と言うほど大げさではないが、人より少しはあったかもしれない」と遠くを見つめるような目をした。【河津啓介】

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