過去の反省と謝罪を渋る日本政府とは違い、ブラジル政府は1930年から45年にかけて行われた日系人に対する弾圧に関連して謝罪した。過去の軍事政権の非人道的な犯罪を調査してきたブラジル政府の「真実委員会」が、1930年に政権の座に就いたジェトゥリオ・バルガス大統領が行った日系人迫害を10日に公式謝罪した。産経新聞が14日に伝えた。日本人は1908年からブラジルに移住し始め、現在は2世・3世など日系人150万人が現地に住んでいる。
ブラジルの第1次バルガス政権は1938年に日系人学校を閉鎖するなど、外国人移民に対する差別政策を実施した。日本が1941年に米国の真珠湾を奇襲攻撃した後は、米国の同盟国として日本に宣戦布告し、日系人に対する弾圧を本格化させた。真実委員会が生存者を対象に調査した結果、当時数千人の日系人が潜在的なスパイと見なされ、強制収容・隔離・未開地開拓を理由とした強制移住などの目に遭った。「国家(ブラジル)への忠誠を証明せよ」と昭和天皇の肖像画を踏むよう強要されたり、日本の新聞社が閉鎖され、公の場で日本語を使用することも禁止されたりした。今回の調査では拷問や資産没収に関する証言もあった。
ブラジル初の女性大統領であるジルマ・ルセフ大統領は過去の軍事政権の人権問題を調査する真実委員会を立ち上げる法律に2011年に署名しており、同委員会は昨年から本格的な調査を開始した。真実委員会は当初、1964-85年の軍事政権下の人権実態調査が目的だったが、日系人社会の要求で調査対象を拡大した。
真実委員会のロサ・カルドソ弁護士は「(当時の日系人に対する弾圧の)背景には人種差別があった」「ブラジル国民を代表して謝罪するだけでなく、許しを請いたい」と述べた。ブラジル政府が日系人弾圧に関して公式に謝罪したのは今回が初めてだとみられるという。真実委員会は関連する内容を報告書にまとめ、政府に提出する予定だ。
日系人社会と人権団体は「謝罪だけでは不十分だ。金銭補償もすべきだ」と主張していると同紙は報じている。英日刊紙ガーディアンは「今回の謝罪が賠償につながる可能性もある」と伝えた。
■米国も真珠湾攻撃後、日系人12万人を隔離措置…1988年に公式謝罪・賠償
米国は第2次世界大戦時、米国内の日系人を隔離・収容したことに対して1988年に正式に謝罪し、賠償した。当時、強制収容措置に遭った生存者6万人に1人当たり賠償金2万ドル(現在のレートで約200万円)が支給された。
米国は1941年12月に日本軍にハワイ真珠湾を奇襲攻撃されたことから、日系人が敵国・日本と内通することを懸念し、日系人12万人を1946年までカリフォルニア州のマンザナー(マンザナール)など11の収容所に隔離・収容した。このうち一部は米国に忠誠を示すため米軍に入隊、日系人で構成された米陸軍第442連隊はヨーロッパ戦線で戦った。
第442連隊に所属してヨーロッパの戦闘で右腕を失い、1962年に日系人初の連邦上院議員になったダニエル・イノウエ議員(2012年死去)は、米政府を対象に謝罪・賠償運動を展開した。当時のジェラルド・フォード大統領は1976年に「強制収容は間違いだった。決して繰り返してはならない」と初めて謝罪した。米政府による公式謝罪と賠償は1988年に行われた。この時、当時のロナルド・レーガン大統領は補償法案に署名した際、「日系人が基本的な自由と憲法で保障されている権利を侵害されたことについて、連邦議会と国民を代表して謝罪する」と述べた。