
盾
盾はもっとも早く人間達が持ち始めた防具で
人間の腕は2本あり片側に武器を持ち
もう片側に盾を持つと言った考えが早期に発達した物と思われます
特に盾は鎧と比べて体に直接密着していないために
その防御効果は遙かに上と言えます
そのためまだ鎧が発達していなかった時代には
盾だけを持って戦闘に赴いた時代などもありました
ただし例外的に盾のあまり発達していない地方などもありましたが
それはごく一部でしかないと言えます
しかし一部の盾には
武器を一緒に組み込んだ物なども見られ
かなりのバリエーションが作られていきました
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ラウンド・シールド(round shield)
ラウンド・シールドはその名の通り丸い(ラウンド)盾の総称として用いられる言葉ですが、一般的には中性暗黒時代に西欧諸国で多用された盾として知られています。特徴は完全な円形であると言うことで、中央にはアンブー(umbo)または、オーブ(orb)と呼ばれる金属製の円形具が取り付けられていました。この部分は盾の裏側から見れば、薄板の中空状になっておりその部分に取っ手を付けて盾を握る拳が収まるようになっていました。ラウンド・シールドの大きさは直径30pから100pくらいで、重さも0.5sから3s程度の物だったとか言われています。
ラウンド・シールドがなぜ丸いかと言うことですが、これを愛用していた人達はほとんど騎乗することを得意としない者達ばかりだったと言うことが要因としてあげられます。つまり、徒下の兵士がその歩行に邪魔にならないようにするためにもっとも適した形状が円形だったと言えます。
ホプロン(hoplon)
ホプロンは円形の大型の盾で、全金属製又は、木製の物の表面に金属を張り付けたりした物でした。ホプロンの大きさは元々は直径1m程度でしたがその後60p位の物に変化していきました。重さは2から3s程度だったようです。この盾は、古代ギリシャ時代のホプリタイ(hoplite)と呼ばれた兵士が使用していた物で、その特徴は中心に腕を通すためのバンドがあり、円周上にグリップを取り付けこの二つを持ってがっちりと固定してました。
ホプロンは盾の構造上盾を構えると盾の右半分は自分の体を覆い、左半分ははみ出してしまうことになりますが、ホプリタイ達はこのはみ出した部分を密集体型(ファランクス:Phalanx)を組むことによって左にいる兵士のが守るとった形態が出来ていたのです。しかし、一番右端に来る兵士は自分の体の無防備な面を曝すことになるために、ここに配置される兵士はもっとも勇敢な者の証とされていました。逆にこの密集体型において、戦列を崩すと言うことは自分だけでなく全体を危険にさらしてしまうことに繋がり、自分だけで逃げ出すことはもっとも不名誉なことだとされていました。
スクトゥム(scutum)
スクトゥムは、楕円又は長方形の古代ローマ時代の兵士が用いた大型の盾です。木製で厚さ2o程度の薄板3枚を重ね合わせて固定したもので、大きさはどちらも1から1.2メートル、横幅が60から80pで、重さは1から2s程度でした
楕円形のスクトゥムは、中央が縦一本で太く盛り上がり凸状に反っていました。表面には羊毛のフェルト加工で縫い合わせ、上下を金属の縁金具で補強してあり、中央には盾心がありました
また、長方形の物は1世紀初め頃から作られた物で、盾心は鉄か青銅で作られた円形又は真ん中が球状に突起した正方形の物でした。盾は全体が革張りで、表面にさらに布が張り付けてありました
カイト・シールド(kite shield)
カイト・シールドは、その名の通り西洋の凧(カイト)の形状をした盾です。その特徴は逆三角形を伸ばした形状にあります。盾の裏にはイメーナ(enames)と呼ばれる盾を腕に止める革帯と、ギーガ(guige)という吊り革紐が取り付けられていました。大きさは横幅が30から40p、縦幅が50から100p程度で、重さは1s程度有りました。
カイト・シールド又は、カイト・シャープド・シールド(kite shaped shield)は11世紀中期になった頃にノルマン人からもたらされたために、ノルマン・スタイルとも呼ばれています。この盾の特徴は、それまでのヨーロッパで主流だった徒下の兵士用の盾とは違い、騎乗の兵士を対象として作られていました。特に逆三角形を長く伸ばしたような形状は、騎乗した場合に無防備となる下半身を防備するのに適した大きさでありながら、下部が盾に引っかかることなく左右に自由に動かせるという物だったのです。
その後の西欧の騎士達の代表的な盾の形状として定着していき、13世紀末期にはヒーター・シールド(heater shild)とも呼ばれていました。また、13世紀から14世紀にかけてカイト・シールドは鎧の発達に伴って軽量化され大きさも小さくなっていきましたが、その形状は変わることはありませんでした。
アダーガ(adarga)
アダーガは剣身と穂先を持った特殊な盾の一種で、羚羊の皮革を表面に張った盾と、槍状の柄と穂先を握りの両側に向けて取り付け両端に向くように固定し、盾の全面に剣身を設けた物です。大きさは槍の柄と穂先を含めた全長69から80pで、重さは1.5から2sと言ったところです。
アダーガは攻撃にも防御にも使用できるという特殊な盾で、相手を突いたり払ったり、攻撃を受け止めたりと色々な用法で用いることが出来ました。
モロッコの中北部の都市として知られたフェズで生まれた盾の一種で、アラビア語のエル・ダラクァ(el-daraqa)又は、エル・ダラク(el-daraw)を語源としています。当初のアダーガはアラビア語でラント(lamt)と呼ばれた羚羊の皮革を表面に張った丸い盾に、短剣を取り付けた物でしたが14世紀になって盾の両端に槍状の柄を追加されました。
タージェ/ターゲット(targe/target)
タージェは軽装であることを必須とされた射程武器を持った徒下の兵士が部分的に体を防護するために身につけた防具の一種です。手で持つわけでなく、肩越しに吊されたり、固定されたり、関節部分に取り付けたりした物で、形状は円形であったり、角を丸めた四角形であったり様々でした。大きさは30p四方の鉄板か直径30pを越えることはなく、重さも0.5sくらいの物でした。
タージェは13世紀から16世紀に散兵戦を行う徒下の兵士が用いた盾の総称で様々な形の物が存在しました。タージェの用法としては肩や肘などの関節部分を覆う物で、怪我をすると致命的になりやすい部分の保護にも用いられ、弓を引くには大切な肩関節の付け根などを保護する目的で取り付けられていました。
また、徒下の兵士だけでなく騎馬の兵士に用いられることもありました。特に騎兵は両肩に取り付ける事もあったようです。16世紀以降になると戦場よりもトーナメントにおける防具として用いられるようになりましたが、これらの盾はロンダンス(rondanche)と呼ばれ、表面を金属で覆った物でそれ程小さな物でなく時には左肩のほぼ全部を覆う物もあったようです。
パビス(pavise)
パビスは長方形をした大きな盾で、中世ヨーロッパにおいては弓兵やクロスボウ兵が用いました。大きさは1メートルから1.5メートルほどの大きな物で、重量も4sから8s有りました。特徴としては大きさも重さも手で保持して簡単に持ち運べる物ではありませんが、地面に埋め込んだ杭に立てかけ、その背後に隠れて使用すると言った方法を採っていたようです
パビスはイタリア北部のパビア(Pavia)という街を起源に発達した物で、イタリア戦争を経てたちまちのうちにヨーロッパに広まっていきました。14世紀から16世紀にかけて射程武器で武装する兵士によって用いられましたが、彼らはこの大きな盾を背負って移動し戦場において戦闘が始まる前にいち早く杭を打ち込んでこれを立てかけその物陰に隠れて敵を攻撃していました。特に、発射後の次弾装填に多くの時間を要するクロスボウを装備した兵士にとっては大変有用な盾であったと言えます。しかしその設置方法から、一度設置した盾は戦闘の決着が付くまでその場を動かすことは困難であったと言わざるを得ません。

様々な盾の取っ手
1.中央の取っ手を握るタイプ:平らな盾では中央に穴を開け、穴の表面はお椀型をした金属でふさぐ
2.腕をベルトに通し棒又はもう1つのベルトを握るタイプ
3.湾曲した盾を横切っている棒を握るタイプ
4.取っ手の他に肩紐を付けたタイプ:紐を肩に掛けた手を力の限り出すようにすれば、強い打撃力も耐えられる

盾の持ち方(イメーナを使用した物)
1,2:2本の革ひもを一緒に握る
3:肘を使って固定して握る
4:腕を通して握る
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