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アングル:ボーイング、JAL失注で製造の米国回帰加速も

ロイター 10月14日(月)18時10分配信

アングル:ボーイング、JAL失注で製造の米国回帰加速も

10月11日、日本航空のエアバス機購入決定は、ボーイングにとって当然痛手だが、米国の製造業に恩恵をもたらす可能性も秘めている。北京で9月撮影(2013年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[ニューヨーク/東京 11日 ロイター] - 日本航空(JAL)<9201.T>のエアバス機購入決定は、ボーイング<BA.N>にとって当然痛手だが、米国の製造業に恩恵をもたらす可能性も秘めている。現在日本企業が担っている機体製造業務の米国回帰が期待できるからだ。

ボーイングはここ50年、翼や胴体部分の製造を他企業に委託する傾向を強めてきた。ボーイング機の生産には多くの日本企業が関係しており、このため、日本の航空会社はボーイング機を購入し続けてきた。日本の製造業がボーイング機製造に携わり続ける限り、日本市場ではボーイングがエアバスを押さえて圧倒的地位を保つという好循環だ。

ところが、JALは今月7日、エアバス機の導入を発表した。大型機ボーイング777型機の更新にあたり、エアバスのA350型機を選定したのだ。契約額は95億ドル。発表を受け、業界関係者からは、ボーイングが今後日本企業への製造委託を減らし、委託先を本国米国を含む他国にシフトさせるのではとの声が挙がった。

ボーイングは777型機の次世代モデルである777Xの設計を年内に固め、2020年までに就航させる計画。

日本の航空会社は、トラブル続きの787型機(ドリームライナー)では大口顧客だが、777Xについては今のところ顕著な買い手ではない。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリスト、ロン・エプスタイン氏は、777Xの生産で、787型機の方針が踏襲されることはないとみており、日本企業は参画するが「ビッグプレーヤーにはならないだろう」と述べた。

ボーイングは、777Xの生産体制についてあらゆる選択肢を検討中とし、JALの決定が影響を及ぼすどうかは明言を避けている。

7日に発表した声明で「JALとの確固たるビジネス関係は50年以上にわたって築き上げてきており、今後もその関係が継続していくよう努力する」と表明した。

三菱重工業<7011.T>、川崎重工業<7012.T>、富士重工業<7270.T>各社の関係者は、777X生産参加の可能性について、機体が正式発表されるまでコメントできないとしている。

777Xのお披露目は11月のドバイ航空ショーと予想されている。ドバイ航空ショーでは、エミレーツ航空<EMIRA.UL>が大型機150機を発注する計画で、777Xが最も有力とされている。

787型機の翼部分を担当しており、ボーイングが翼の生産を米国に移した場合最も影響を受ける三菱重工の広報は、「ボーイングが下す決定。もし翼の生産を依頼されれば、最善を尽くす。依頼されなかったとしても、引き続きできる限りのことをする」と述べた。

<限られた選択肢>

ボーイングが777Xの機体や部品をどこで生産するかについて、選択肢は限られている。確実に成し遂げられる企業は一握りだからだ。

受注の可能性がある米国の企業は、スピリット・エアロシステム(カンザス州)、トリンプ・グループ(ペンシルベニア州)など。スピリットはすでにボーイング機の翼の一部や機体を製造している。トリンプは航空機の翼や機体などを製造している。ボーイングが、自社で生産する可能性もある。

スピリットは、関心があるとし、777型機の翼や胴体部品の製造実績があると強調した。トリンプのコメントは得られていない。

韓国と中国も、777Xの一部の生産場所の候補として取りざたされている。

ボーイングに近い筋は、ボーイングが世界的に進める経費削減によって、生産委託された日本企業は中国やインドで低コストの製造業者探しを強いられる可能性が高く、サプライチェーン(供給網)で中国の存在感が増し日本が低下するとの見方を示した。

ボーイングが2012年に始めた経費削減計画「Partnering for Success」は、日本企業を含むすべてのサプライヤーに3─4年で15%のコスト削減を求めているという。

(Alwyn Scott、Tim Kelly記者;翻訳 武藤邦子;編集 加藤京子)

最終更新:10月14日(月)18時10分

ロイター

 
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