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「国債への信認は財政健全化が重要」
10月9日 18時35分

「国債への信認は財政健全化が重要」
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国の借金の総額が1000兆円を超え財政状況が一段と厳しさを増すなか、国債への信認をどのように確保し、安定的に発行していくかを話し合う懇談会が開かれ、有識者からは「財政健全化目標の達成が重要だ」という意見が相次ぎました。

この「国の債務管理の在り方に関する懇談会」は、日銀が、ことし4月から大規模な金融緩和策として国債の大量購入に乗り出し、市場に大きな影響を及ぼしていることや、国の財政状況が一段と悪化していることなどを受けて、3年ぶりに開かれ、学識経験者や国債の取り引きに関わる機関投資家などが出席しました。
はじめに古川財務副大臣が「国債を円滑に発行し、かつ調達コストを抑えていくためには、適切な国債管理政策が重要で意見を頂きたい」とあいさつしました。
続いて意見交換が行われ、出席した有識者からは、国債の信認を維持していくには「財政健全化目標の達成が重要だ」という意見が相次ぎました。
また、国債の発行残高が増え続けるなか、利払い費が膨らまないよう金利を低く抑えていくことが必要だとか、全体の10%に満たない海外の投資家による国債保有が今後、増えるとみられ、それに備えるためにも信認の維持が重要だといった意見が出されました。
懇談会は、年内に3回開かれる予定で、財務省では、有識者の意見を踏まえて来年度の国債の発行計画を策定するとともに、中長期的な国債の安定発行に生かしていくことにしています。

財政再建の重要性を強調

懇談会に出席したSMBC日興証券の金融財政アナリストの末澤豪謙さんは「日本が借金を返すことができるという意思と能力を持つことが必要だ。財政の健全化と成長戦略は、車の両輪で両方を一緒に回す努力がより重要になっていく。財政状況を良くしていくとともに、市場参加者と日々、意見交換し、どうやって日本の国債の信認を維持向上させていくか相談して、今後の対策を打ち出していく姿勢が必要だ」と述べました。
また、三菱総合研究所のチーフエコノミスト、武田洋子さんは「今は非常に国債市場は落ち着いているが、成長戦略が、仮にうまく企業の背中を押して、投資が増えていくという環境になると、企業が持っている現金が、投資に回り出すことを意味し、国債に向かうお金が減っていくという見方もできる。景気の回復は必要で、デフレ脱却も大事だが、そのタイミングで、中長期の財政再建に向けた道筋を、しっかり確保していくことが、より一層重要性を増してくる」と述べました。
作家の幸田真音さんは「質的・量的緩和ということで、毎月7兆円もの国債を日銀が買い入れており、マーケットの需給をずいぶんゆがめている。債券市場というのは、国の政策が正しくないときに、ノーを突きつけるマーケットであると思っているが、そういうことがワークしていないなかで本当に大丈夫なのか、今こそ将来に向けて議論していくことが非常に大事だ。財政規律を守るとか、財政健全化を図るというメッセージを国内に向けても、海外に向けても、常に示していくことが必要だ。安倍総理大臣は、経済を活性化させつつ、財政を健全化すると言っているが、決して簡単ではないので、どういう方法があるのか、もっと議論を尽くさないといけない」と述べ、財政健全化を図っていくことの重要性を強調しました。

金利上昇すれば財政圧迫も

なぜ今「国債」について考えることになったのでしょうか。
国は今年度、財源の不足を補うためにおよそ42兆円もの国債を新たに発行する計画です。高齢化で社会保障費が増え続けることなどから、国は今後も巨額の国債発行を続けざるを得ない状況です。
そこでカギになるのが「国債への信認」です。国債の金利は、経済や物価の動向などによって変動しますが、国の財政への信頼度も大きく影響します。財政への信頼が高ければ、投資家は、通常「低い金利」でも国債を購入します。
一方、財政への信頼が低下すると、「高い金利」を払わないと購入してもらえなくなり、国の資金調達のコストは増加することになります。日本の国債は現在、90%以上を金融機関をはじめ国内の投資家が保有し、大量に発行しても安定して消化されています。また、金利も日銀の大規模な金融緩和策などによって低い水準で推移しています。
しかし、景気が緩やかに回復し、物価も上昇基調となるなか、今後、金利が上昇していくことも予想されます。経済成長に伴う形で金利が上昇しても、国債の利払い費が税収が増える分で賄えれば問題はありませんが、経済成長のペースを上回って急激に金利が上昇すると、国債の利払い費が急増し、財政を大きく圧迫しかねません。
このため政府は、本格的な景気回復を目指しつつ、金利上昇を一定水準に抑えるという難しい経済財政運営を迫られることになりそうです。

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