先住民族アイヌの尊厳を重視 国立博物館構想
(2013年 8/30)文化庁は29日、白老町のポロト湖畔周辺に整備する「民族共生の象徴となる空間」(象徴空間)の中核施設に位置付ける国立博物館の基本構想を公表した。博物館の整備・運営調査検討委員会(座長・佐々木利和北大アイヌ・先住民研究センター特任教授)がまとめたもので、理念や目的など5項目からなる。2014年度中をめどに基本計画を策定し、施設展示の基本設計や実施設計を進める。整備予定地の白老町でも同日、町議会に説明が行われ、関係者から期待の声が上がった。
白老町では、文化庁の記者発表と同時刻に町議会の全員協議会を通じて構想概要を説明した。
町生活環境課が示した基本構想では、「先住民族であるアイヌの尊厳を尊重し、国内外にアイヌの歴史・文化等に関する正しい認識と理解を促進するとともに、新たなアイヌ文化の創造および発展に寄与する」とする理念を明記。次世代の専門家育成や歴史と文化に関する調査研究、他の博物館とのネットワーク拠点など四つの目的を掲げた。基本的な業務は、(1)展示(2)教育・普及(3)調査・研究(4)博物館人材育成(5)収集・保存・管理―としている。
博物館の組織・運営は国が主体的な役割を担うが、地元の白老町や北海道アイヌ協会、道アイヌ文化財団などが役割に応じて連携協力する仕組みをつくる。アイヌ民族の人たちが参画できる体制も構築していく。
基本計画の策定に向けては、調査検討委員会に「展示・調査研究」「整備施設」「組織運営」の三つの専門部会を設置し、検討を進める。
各部会には白老町から、村木美幸アイヌ民族博物館専務理事=展示・調査研究および組織運営の専門部会を担当、野本正博同常務理事・館長=同施設整備専門部会=、白崎浩司白老町副町長=同組織運営専門部会=の3人が委員として参加。新ひだか町から、藪中剛新ひだか町静内郷土学芸員が展示・調査研究専門部会の委員に加わる。
生活環境課の廣畑真記子アイヌ施策推進担当課長は文化庁の基本構想を踏まえ、「設計段階になればある程度の形が見えると思う。専門部会での検討を待って具体内容が出てくると期待している」と説明。各ゾーンの取り扱いでは「全体ができて初めて象徴空間としてオープンできる。文化庁と国土交通省、内閣官房が連携して作業を進めている」などと語った。
このほか、専門部会委員が現地視察のため、近く来町する見通しが示されたほか、9月11日に札幌で開かれるアイヌ政策推進会議の全体会合で、「(全体計画に関わる)スケジュールが示されるという話もある」などと述べ、プロジェクトの進展に期待を寄せた。