魔王少年リリカルカンピオーネ (ヤギ3)
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次の話が思いつかないので、つなぎとして作りました。
暇つぶしに見てください。
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日常編 逆月結城の日常
今、僕は外にいる。
家の中に居たくない……というより、居られないのだ。
それには深いわけがある。
数十分前のことだ。
「ちょっと、結城! これ、英梨の部屋に持って行って!」
珍しく、大興奮の母さんがそんなことを僕に頼んできた。
本音を言えば、断りたい。
管理局とのゴタゴタや、ほかの魔術組織との会議などで、世界中を飛び回っていたのだ。久々の休日ぐらいゆっくりしたい。
だが、断るわけにはいかない。
僕が王と言われるほどの権力者でも、家の中では、家計簿を持った母が一番偉いのだから。
「どうしたの? そんなに興奮しちゃって。……英梨の部屋には誰がいるのさ?」
ちなみに英梨とは僕の妹だ。(2話にちょっとだけ出ています)
彼女に何かあったのだろうか?
……考えづらいな。あいつは、僕よりも身長が高くて、体重も重いスポーツマンだ。(体重は勝手に身体測定の結果を覗いて知った)
しかも、柔道の有段者でもある。
危険が迫っているような状態ではないだろう。
「英梨が彼氏連れてきたのよ~~~!」
「……うそ」
そんな馬鹿な。
言っちゃあ悪いが、あいつは下手な男より男らしい女だぞ。
そんな奴に男ができたというのかっ!?
「嘘だろう…?」
「ホントよ! お母さん、手をつないで、自分の部屋に入っていくところバッチリ見ちゃったから」
見るなよ。
あいつにとって、見られたくないことだろう。
そんなものを野次馬精神、全開で覗きに行くなよ。
というか僕にのぞきの片棒を担がせようとしているのか。
「なんで僕なのさ。別に、母さんが持っていけばいいじゃない」
「お母さん、これからパートの時間だから。……ここに、お菓子とジュースを置いておくからよろしくね!」
「あ、ちょっと!……行っちゃった」
僕にどうしろと言うのだ。
……いや、持っていけというんだろうけどさ。
僕が持って行って、キスでもしていたら気まずいだろう。
だが、前述のとおり、家の中では一番偉い母さんの頼みだ。
無視をしたら、何をされるか分かったものじゃない。
仕方がない、持って行くか。
お菓子などが置いてあるお盆を持って、妹の部屋まで行く。
「おーい。お菓子持ってきてや…った……ぞ……」
妹と彼氏と思わしき人間は、共にベッドの上にいた。……彼氏(仮)が妹の上に覆いかぶさる感じで。
キスより最悪なシーンに出くわしちゃったよ!
「あの……ごゆっくり……。避妊はしろよ………」
こういうことがあって、家から出てきちゃったのである。
そのまま家の中にいて、彼氏(仮)とか英梨とかと遭遇したら気まずいだろう。
ということで、今は翠屋にいる。
たった今、モンブランを食べ終わったところだ。
「災難だったねぇ」
「全くだな……」
今日は天下の日曜日。
恭也さんや、美由希さんたちも翠屋でお手伝いという面目で働いている。
とは言っても、元々ウエイトレスを雇っているためか、二人の仕事はあまりなく、それこそ食べ終わった机の掃除ぐらいのものだ。
「今日、暇なんだよね。だったら、私たちと模擬戦でもやってみない?」
模擬戦?
首をかしげていると、恭也さんからフォローが入る。
「うちには道場があるだろ? あそこで戦ってみないか、と言っているんだ。……確かにいい案だな」
「まあ、いいですけど」
「それじゃあ決まり!」
2人は、桃子さんと士郎さんに断りを入れてから、道場へと向かう。
二人共、小刀を両手に一本ずつ持っており、僕は大太刀を左手で持っている状態だ。
初めの相手は美由希さんだ。
「それでは、始め!」
それぞれ、互いに持った得物で打ち合う……ていたのだが、最後の方は、
「剣筋が雑になっていますよ」
「もう少しフェイントをうまくやってみてください」
「速いだけなら如何とでもできますよ」
と、僕が彼女を教導する様な風景になっていた。
彼女も弱いわけじゃないのだが、人が振るう剣術を学び、リアルな戦闘経験がない彼女と、日本有数の戦乙女の剣術を振るってきて、神々と死闘を繰り広げてきた僕とでは、自然と差が出てきてしまうのだ。
「ふぐっ……えぐっ……」
美由希さん、若干泣いてるし。
これは、さっさと決めた方が彼女のためにもいいかな?
一気に彼女の懐まで踏み込み、切っ先を喉元に突き付ける。
「……参りました」
僕と美由希さんの戦いは終わった。
「悔しい~」
少し涙目になりながら、美由希さんは、そう呟きを漏らす。
気持ちは分からんでもない。
年下の僕に、最後は教えられる形になったのだ。まともなプライドを持った人間であれば、普通にへこむだろう。
僕は同じことになったら、三日は泣き続ける自信がある。
「仕方ないだろう。……こいつはこんなでも、地球最強の8人の戦士の中の一人なんだから」
「こんなだからってどういうことですか」
ちなみに、高町家には月村家経由で僕が神殺しであることが教えられている。
士郎さんはそれを聞いて納得したらしい。
彼曰く、僕には、目の前に立たれると目の前に巨大な壁があるような圧迫感があるらしい。
一目見て相手の強さが分かるとか、士郎さんはどれだけ強いのか不思議になってくるものだ。
「それじゃあ、次は俺だな」
「よろしくお願いします、恭也さん」
向かい合うと同時に、それぞれの得物を構える。
僕も、今回はサルバトーレの猿真似ではなく、正眼と呼ばれる構えを取る。この構えが僕の本来の構えなのだ。
「はぁぁ!」
気合を入れ、彼に近づく。
大太刀を一閃、しかし、簡単に交わされてしまう。
だが、この程度のことは想定済みだ。
次々に彼の体を砕こうと木刀を振り続ける。
ただの剣道家なら、即座に数発喰らって数秒で決着がつく。そんなレベルの打ち込みだった。
だが、僕の目の前にいる剣士はそこらにいる剣道家ではない。
実践を前提に考えられた殺人剣を修めた稀代の剣士だ。間違いなく、この日本でもトップクラスを争うだろう。
実際、草薙くんに侍っている
剣の力に頼ってばかりのへっぽこである自分よりは才能に溢れている。
そんな相手との戦いがすぐにつくはずもなく、模擬戦はすでに一時間が経過していた。
「お、やってるな。」
士郎さんのそんな声が聞こえたのは、僕が何とか恭也さんの頭に大太刀を叩き付けたすぐ後だった。
というか、恭也さん強すぎる。
僕は、カンピオーネの頭おかしい身体能力に、権能を使って体に染みついた神の使う剣術というチートを使っているのに、それでも互角にやりあうあの人が信じられない。
「それで、どうしたんですか士郎さん」
息も絶え絶えになりながら、士郎さんに尋ねる。
どうやら、後に人がいるようだ。……ちらりと、桃色が視界に入る。
まさか―――、そう思ったとき、思った通りのことを彼は口にした。
「どうやら、彼女も稽古をしたいらしくてね。……ちょうどいいから、君たちの稽古に混ぜてもらおうと思ったんだよ」
彼のその言葉と共に出てくるのは、ヴォルケンリッターの将、シグナムだ。
神威を殺した後、なのはたちとは疎遠になってしまったが、ヴォルケンリッターとはそれなりに仲良くしている。
話を聞く限り、彼女たちは死というものに免疫を持っているからだろう。
それに、血で血を洗う様な戦争を経験しているらしいし、そのあとに同盟を結んで相手国と仲間同士になった経験もあるらしい。
人を殺した人間と交友を結ぶことに抵抗がないのだろう。
余談だが、恭也さんたちは『戦いの中で殺されても仕方がない』という、殺人剣を習う人間にふさわしい考え方をもっているため、翠屋にやって来れたのだ。
非難の目を永遠と向けられながら優雅に食事ができるほど、僕は神経が図太くはない。
またまた余談だが、シグナムはアーニャとブラッドとは仲がいいらしい。二人とも戦闘狂で、戦い好きの武闘派だからだろうか。
「やっぱりシグナムか……。それで、だれとやるつもり?」
「頼めるか、結城」
「僕、3連戦になるんだけど」
「なに、貴様であれば問題あるまい」
「そうだけどさ」
結局、戦うことになりました。
結果は僕の辛勝。……大騎士以上の奴がこの町には集まりすぎだ。どんな人外魔境だよここは。……一番の人外は僕だと思うけど。
「……やはり強いな。しかし、次こそは私が勝つ」
「僕は、勝ちを易々と譲ってやるほど人が良くないよ?」
「望むところだ」
フッ、と微笑みながら僕に返事を返してくる。
少し、僕も面白くなってきた。
爺さんのところに行って、腕を磨いてこようか。あそこでは、本気の殺し合いができるからこの世界のどこよりも腕を磨ける。
僕たち魔王を鍛えるには、戦火に焼かれ、敵の血を浴びることが一番なのだから。
シグナムの微笑みに対して、僕も微笑みで返す。
「それじゃあ、僕はもう帰ります」
「分かった。今日はありがとう」
「それはこちらのセリフですよ」
にっこりと笑いながら去っていく。
今日はいい休日を過ごすことができた。……満足だ。
今度は、この道場にアーニャやブラッドも連れて来よう。楽しみだな。
そう思いながら、家への帰路に着く。
「ただいま」
お帰りの返事は、投げられたクッションだった。
ほっぷ、とよく分からない声を出す僕。
いったい投げたのは誰だ、と思い見てみると、顔を真っ赤にした妹が……。
そうだ! 僕はとんでもない所を見てしまったから家を出たんじゃないか!
まずいまずいまずい!
とてつもなくまずい!
「ねぇ、兄ちゃん? よくもあんなシーンを覗いてくれたね、この変態」
「ち、違っ……!」
「死ね! この変態! DNAの一片たりとも残さず消え失せろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「い、痛い! 痛いって! 謝ってるじゃないか!」
外では剣を振るい、勝利を手にする勝者の中の勝者、忌み嫌われる災厄の羅刹。家の中では、権力ワースト1を父親と争っている、駄目兄貴。
究極の外弁慶、内地蔵が僕だった。
結城は絶対妹に甘いと思う。