魔王少年リリカルカンピオーネ (ヤギ3)
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遅くなってしまいすみません。

今回はあまり出来がよくありません。

温かい目で見てください。



第22話 魔王と管理局の対談

 カンピオーネ
 イタリア語でチャンピオン、勝者を表す言葉だそうだ。
 ラクシャーサ
 ヒンドゥー教の鬼神のことらしい。
 エピメテウス
 後から考え、後悔するものと言う意味を持つ世界に厄災を撒き散らした神の名だという。

「どれもあの小柄な少年にぴったりだな。」

 月村邸に向かう道中に僕、クロノ・ハラオウンは呟く。
 思い出すのは、一人の少年。
 Sランク魔道士であるなのはたちを難なく倒し、その中の一人、神威龍夜を殺した少年、逆月結城のことだ。
 瓦礫と死体と血の上に立つ姿は正しく勝者であり、鬼神であり、先のことを考えない愚者だった。
 今から彼に会いにいく。
 正直、恐ろしい。
 路上でアイスを買うかのような気軽さで人を殺した少年だ。恐ろしくないはずがない。だが会いに行かなければならない。それが僕の信じてきた正義だから。父から引き継いだ正義だからだ。

「必ず勝ってやる。」

 もちろん、戦いに行くわけじゃない。
 だが、ある意味戦いだ。もちろん彼らには負けられない。弱みを見せられない。だが、一番の敵は臆病な自分だ。この敵に勝った時こそ、僕は僕の正義を貫けるのだから。

「よし。行こう、みんな。」

 皆一様に頷き返してくれる。
 そのことがたまらなく心強い。
 覚悟を決め、月村邸の門をくぐり、扉を開く。
 そこには、

「ねえ、草薙くん。僕はこんなに招待状を届けた覚えはないんだけど。」
「ごめん・・・。」
「悪くはないわね。アリアンナの入れてくれたお茶の方が私は好みだけど。」
「エリカ、せっかく入れてもらったのだからそういうことを言うものではないぞ。」
「そうですよエリカさん。」
「すみませーん。お代わりくださーい。」

 4人の女性たちが叱られている1人の少年のそばでお茶を飲んでいたり、

「畏まりました。」
「おーい。アランも給仕に回ってないでこっちでポーカーをしようぜー?」
「スリーカード! どうよ。さすがの灰色もこれには敵わないでしょ!」
「フルハウス。残念だったね?」

 給仕の男性に声をかけながらポーカーをしていたり、

「こういうことも考えられると思うのだが。」
「なるほど、興味深いですね。」
「確かにな。」

 休日のお父さんといった風貌の男性が上層階流であろう女性と仏頂面の青年に何やら熱弁していたり、と僕たちが想像していた光景とはかけ離れていた。

「なんだこれ?」

 そう呟いた僕は悪くないはずだ。




「えーと、名前を教えてもらえるかい?なのはたちも一応しておいて。」
「時空管理局次元渡航艦アースラ提督、クロノ・ハラオウンだ。」
「時空管理局教導隊所属、高町なのは2等空尉です。」
「時空管理局所属、フェイト・T・ハラオウン執務官です。」
「時空管理局特別捜査官、八神はやて1等陸尉です。」
「時空管理局所属、峰岸龍馬執務官です。」
「うん。これでいいかな。」

 とりあえず彼らに自己紹介をしてもらって、こちら側の人間たちに知っておいてもらわないといけない。

「さてと、それじゃあこちらも自己紹介と行こうか。主要人物だけで手短にいこう。僕は逆月結城。『赤い鴉』(ロートクレーエ)という魔術結社の総帥をやっている。」
「草薙護堂だ。一応、正史編纂委員会というところの代表ということになっている。」
「グリニッジの賢人議会の特別顧問をしております。アリス・ルイーズ・オブ・ナヴァールと申します。」
「王立工廠の総帥をしているアレクサンドル・ガスコインだ。」
「・・・これで終了か。さて、一体何から話したものやら。」
「ちょっと待ってくれ。彼らは誰なんだ?」

 いきなり、クロノとかいう青年がそんな質問をしてきた。

「自己紹介はしたはずだけど?」
「僕が言いたいのはなぜここに彼らのような人間がいるかと聞きたいんだ。」

 つまりどうしてこいつらは来やがったかということだろうか。

「みんなそれぞれ、組織の代表として来ているんだよ。今回は別の魔術体系を持つ連中との会談という大事だからね。僕たちの組織だけですべて決めてしまうわけにもいかないんだよ。」
「なるほどな。」

 どうやら納得してもらえたらしい。

「単刀直入に言おう。君たちは何者だ。」

 クロノがいきなりそんなことを言ってきた。
 確かに彼らからすると気になるところだろう。

「この世界には、神がいる。」

いきなり何を言っているんだという表情になる管理局の面々。

「元始の時代には奴らに名前はなかった。ただ漠然とした災害だったんだよ。だけど、歴史と共に名前と神格を得ていく。弱い人間たちが神々の猛威と恵みに備えるために名前と神格をつけたんだ。そうしたら神たちは自分の神格に沿ったことしかできなくなるからな。だけど、たまに原始の時代に回帰していく神がいる。神話から抜け出し、人間の手に負えなくなる化け物が生まれる。それが『まつろわぬ神』。僕たちカンピオーネはその『まつろわぬ神』を殺した神殺しなんだよ。」
「神殺し・・・。」

 誰のつぶやきだったのだろうか。
 静寂な室内にただその呟きだけがむなしく響き渡る。

「神殺しを成し遂げた人間にはね、様々なオプションが付いてくる。大魔術師の数百倍の魔力、魔術の一切効かない体質、そして、殺した神の能力を得る。」

 管理局側の人間が息をのむ。
 今さっき散々災害だの化け物だのと言った存在の能力を手にすることができるという事がどういうことか全く分かっていないわけでもないようだ。

「まあ、そんなこともあってか僕たちは魔術界では魔術師たちの王、魔王と呼ばれているんだよ。」

 少し喋りすぎた。
 お茶を一口含む。

「こちらからの要求だが、一切関わるなと言わせてもらう。」
「な、なんでや!?」

 アレクが言ったセリフにはやてが噛みつく。
 おそらくあちらが管理したいとでも思っているのだろう。はた迷惑な話だ。

「別に、関わるなとは言っているが絶対にというわけでもないよ。僕たち『赤い鴉』(ロートクレーエ)とならば、関わってもいいと思っている。なのはたちは友達だしね。」

 そう言ってやるがどうにも納得できないといった表情だ。

「何故かを聞いてもいいか?」
「カンピオーネ、魔王たちの中には縛られるのが大嫌いというやつらが多い。僕も大嫌いだ。そんな奴らが一斉に癇癪を起こすと地球が真っ二つになってしまいそうだからね。」
「だからこそ、我々管理局が・・・!」
「もうこちらにも秩序というものがございます。それをかき乱され、王の逆鱗に触れてもらっては困るのですよ。」

 アリスさんの言葉に、口を閉じるクロノ。

「まあ、ここには3人も王がいるからあまり迂闊なことは喋らない方がいいよ。キレて、襲いかかられても困るでしょ?」
「「誰が襲うか!」」

 相変わらず息がぴったりだな、この二人。仲が悪いくせに。
 管理局側もさっきの言葉で顔を青くしている。なのはたちを難なく倒した僕と同格の人間が後二人もいることに対して恐れているのだろう。人間かどうかは怪しいところだが。

「この世界に対してちょっかいをかけられても困るから、見張りをつけようと思うんだ。」
「見張り?」
「そう、見張り。この世界に対してなんらかをした場合、管理局を滅ぼせるような奴が必要だと僕たちは判断を下したわけ。」
「なっ!?」

 管理局側は皆一様に驚く。
 お前たちを滅ぼすと言われて驚かない奴はいない。

「その役は僕がすることになった。僕の権能は自由に空間移動ができるからね。それに組織を率いている長だ。別の世界にいてもそれなりにやっていけると思っての判断だよ。そのためには、君たちの世界に行かなければならないわけだけども、どこらへんか教えてくれないかな?管理局のトップたちと話さなければいけないしね。」
「それは・・・。」
「必要な措置だよ。巨大な組織は一枚岩じゃない。念には念を押す必要がある。」

 苦虫を噛み潰したような表情になるクロノ。

「大丈夫だよ。君たちが何もしなければ、何もしない。それは約束しよう。なんだったら僕たちに依頼をしてくれてもいい。・・・なるべく良好な関係を築きたいと個人的には思っているんだよ。だからこそ、こちらの機嫌を損ねないでくれ。君たちを殺すようなことはしたくはない。」
「ならば何故、神威を殺した。」
「・・・僕は、友人を痛めつけた奴に対して情けをかけるほど出来た人間じゃない。」
「何故、あんなことをした。」
「友人のために力を振るわないほど、冷たい人間でもないと自分では思っているんだけどね。」

 ふぅ、とため息をクロノはつく。

「分かった。上は僕が何とかしよう。場合によっては君にも本局に来てもらうことになるかもしれない。」
「了解した。それと、この資料を持っていくといい。上の人間に対して説得がしやすくなると思うよ。」
「あ、ああ。」

 資料をクロノに持たせる。
 ・・・これで、終わりかな。

「よーし。それじゃあ解散。」

 その言葉に、各々席を立つ。
 アレクは、『電光石火』(ブラックライトニング)でさっさと帰るし、草薙くんは、エリカさんたちとデート(強制)をしてから帰るらしい。
 僕も帰ろうかな。幹部たちの顔見せもできたし、今回はこれで満足だ。

「ねえ、結城は私たちの事をどう思ってる?」

 いきなりそんなことをフェイトから聞かれた。

「友人だと思っているよ。」
「じゃあ、龍也は?」
「友人と呼ぶには接点が少ないんじゃないのかな?」
「・・・それでも人殺しはいけないよ。」
「分かっているし、知っている。」
「なら、なんで殺したの?」
「それは、僕が魔王になるような人間だからかな。」

 魔王。
 神すらも殺すような奴らが人を殺さないわけがない。
 僕はそう思っている。だから、僕は人を殺すことができるんだろう。死んだ人に対して何も思わないんだろう。
 人の為に戦う。
 とても愚かな願いだと思う。そして同時に、美しくもある。そんな願いを持って僕は戦えるような人間じゃない。だから、

「ちょっと君たちが羨ましいかな?」
「えっ?」

 フェイトが間抜けな声を出す。

「なんでもないよ。さ、帰ろう。」
「え、ちょっと。待ってよ。」

 魔法の世界か。
 少し楽しみだ。
 僕は期待に胸を膨らませながら、僕たちはそれぞれの場所へと帰る。



最近、スランプ気味。

気分転換でもしたほうがいいかなぁ。


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