魔王少年リリカルカンピオーネ (ヤギ3)
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第21話 幹部集合

 管理局とは月村邸で、話し合うことになった。
 おそらく管理局のお偉いさんも出てくるだろう。なにせ、未確認の魔法文化を持つ人間と接触するのだ。それなりに上の人間が出てくると考えていいだろう。
 それなら、僕たちも数を揃えなくちゃいけない。
 『赤い鴉』(ロートクレーエ)の幹部を全員集めよう。
 そう思い、僕は権能を使って世界中を飛び回る。




 アメリカ ニューヨーク
 ここは、ジョン・プルートー・スミスがいるロサンゼルスよりは少ないが、それなりの数の邪術師がいる。
 そんな無法地帯に、僕の幹部の一人はいる。
 てくてくと道を歩いて行き、ひとつの路地裏へと足を踏み入れる。
 そこには、いつか見たチャラいお兄さん達が霞んで見えるほどジャラジャラとシルバーアクセサリーを大量につけた強面のお兄さん達が4人ほどいた。やはり本場は違うといった感じだ。

「何だァ? おい、ガキ! ここはガキの入っていい場所じゃねえぞ!」
「ねえ。ここにブラッドって男はいるかい?」
「ボスに何のようだ。ガキはさっさとママのいるところに帰るんだな。」

 ゲラゲラと品のない笑い声が路地裏に響く。
 正直、末端の人間に構っている暇はないので彼らには悪いが先に進ませてもらおう。
 そう思い、足を踏み出す。

「おいおい。聞こえなかったのか? 俺達はさっさと帰れって・・・。」

 ガタイのいいお兄さんが肩をつかんで来ようとするので、いつかチャラ男たちにやったように手首をつかみ、グルンと回転させて地面にたたきつける。

「かはっ!」
「て、てめえ! やりやがったな!」
「生きて帰れると思うなよ!」

 どう見ても三下のセリフだ。ここまでレベルの低い奴しか集めてないのか?ブラッドは。

「てめえら! うるせえぞ!」

 奥から一際体のでかい金髪の男が現れる。
 身長は190を超えるだろう。四肢は引き締まっており細長い。だが、弱い印象を受けないのは、程よく筋肉で包まれた体のせいだろう。むしろ、獰猛な獅子を思わせる。
 服装は、そこらにいるような奴らと違い、タンクトップにジーンズというだけのシンプルなものだ。それなのにかっこいい印象を受ける。相変わらず、かっこいい男といった言葉を体現したような奴だ。
 この男こそが、僕の部下の一人ブラッドだ。

「なっ! お久しぶりです兄貴!」

 獅子を思わせる青年が女のような顔の少年に90度のお辞儀をしている。かなり違和感がある光景にブラッドの部下たちは目を丸くしている。

「うん、久しぶり。元気にしてた?」
「はい。おかげさまで。」

 礼儀正しい言葉遣いの相変わらずのようだ。

「今日は連絡したいことがあってね。」
「連絡したいことですか。」
「うん。6人目の幹部を作ったことと、幹部を全員集合させたいことがあってね。」
「6人目ですか。そいつはどんな奴で?」
「女の子だよ。かなりの美人。みんな金銭の事とか苦手だろ?だからそっち方面のことを頼めるような奴を探していたしね。」
「そうですか。・・・それにしても、幹部招集とは穏やかじゃないですね。」
「うん。確かに穏やかとは言えない状態だね。詳しいことはまた後で。会場は日本。霧の権能を置いておくから、準備ができたらこっちに来てね。」

 そう言って、路地裏の一角に霧の権能で霧を充満させる。
 その光景を見た不良たちは一様にビックリしている。もう訳がわからないといった表情だ。

「あのーボス?こいついったい何もんなんですか?」
「てめえ! 言葉に気をつけろ!この御方はてめえらのボスでもある御方だぞ!」
「ど、どういうことですか?」
「そういえば自己紹介がまだだったね。」

 僕のセリフに全員がこちらを振り向く。

「はじめまして、僕の名前は逆月結城。『赤い鴉』(ロートクレーエ)の総帥なんかをやっている魔王だよ。」

 その言葉に不良たちの顔がサーと青くなる。

『す、すみませんでしたぁ!』

 不良たちも90度のきれいなお辞儀をする。別に気にしてないんだけどな。

「別にいいよ。それじゃあ僕はこの後もほかの奴らのところを回らなくちゃいけないから。」
「はい、お疲れ様です。」

 ブラッドの労いの言葉を背にして、僕は霧の権能を使いまた別の国に飛んでいく。




 ロシア モスクワ
 二人目はここにいる女だ。
 僕と同じ年ぐらいの少女なのだが、槍の腕はテンプル騎士が大量にいるヨーロッパの中でもトップクラスと言える腕だ。武術だけを見れば、『赤い悪魔』(ディアボロロッソ)以上と言えるだろう。
 彼女が住む家へと向かう。ロシアは寒い。さっさと暖かい家の中に入れてもらいたい。
 そう思い、歩くスピードを上げる。
 ようやくついた彼女の家は、歴史を感じさせるレンガの家だ。
 コンコンとノックをする。

「はぁーい。」
「アーニャ、いるんだろう? さっさと家の中に入れてくれ。寒くて凍え死にそうだ。」
「わかりましたぁー。」

 ガチャリと家の扉が開き、

「久しぶりぃ~! 会いたかったよ~!」

 いきなり小柄な女の子が抱き着いてきた。
 この少女こそが二人目の幹部、アーニャだ。

「さあどうぞ入っていって。ゆっくりしていくと良いよ!」

 今度は腕に抱きついてきて、僕を引っ張っていく。
 テンションが高いこととスキンシップが激しいことは変わらない。というより、もとから変わっていることに期待していない。
 いわれた通りに家の中に入っていって、リビングの椅子に座る。机にココアが出されるので、それを一口飲む。
 やっぱりうまい。アーニャはココアを入れることがうまい。僕がこのココアが好きなことを知っているから出してくれたのだろう。相変わらず気の利く少女だ。

「それで、なんで来てくれたの? もしかして私の顔を見たくなっちゃったから!?」

 キャーといって赤くなった顔を抑えながら、僕の隣に座ってくるアーニャ。

「まあ、あながち間違いじゃないかな? 今日は伝えたいことがあってね。」
「え? なになに?」

 僕はアーニャにブラッドに伝えたことと同じことを伝えた。

「ふーん。幹部は全員集合か・・・。あの灰色も来るの?」

 灰色とはロッテの事である。

「もう来ているよ。数日前からね。」
「え? なんで?」
「彼女が僕のいる学校に転校してきたからだよ。たまにドイツに返しているけど、もう日本で活動しているようなものだね。」
「な、なんですってぇぇぇぇぇ!!」

 そんな大きな声を出すな! 頭の中がキンキンする。
 しかも腕に抱きつかれていたから、耳を塞ぐこともできなかった。

「あたしも行く! 日本に! 結城のいる学校に!」
「駄目。君はここでやることがあるだろう?」
「うっ!」

 彼女はここら辺の治安を守っているのだ。
 やはり、ここでも邪術師がかなりいる。魔術の本場であるヨーロッパから流れ着いたものがたくさんいるのだ。だから、彼女にはここら一体の魔術関係の治安を守ってもらっている。勿論、依頼人から報酬をもらいながらである。傭兵のようなものを想像してもらえれば早いだろう。
 だから彼女はこの地域から離れられないのだ。

「まあ今回は例外だし、霧の権能を置いておくから準備ができ次第こっちに来てね。」
「了解! ふふふ。結城のいる国、住んでる町かぁ。楽しみだな!」
「じゃあ僕はこの辺で。ほかにも伝えないといけない奴がいるからね。」
「うん、後でね。」

 可愛らしく微笑みながら返事をするアーニャに背を向けながら、霧の権能を使いまたまた別の国へ飛んでいく。




 イギリス ロンドン
 アランという名の幹部がここにいる。
 アランはいわば、受付のようなものだ。
 ここ、イギリスには魔術界において重要なポジションの組織が多い。例えば、グリニッジの賢人議会だとか、コーンウォールの王立工廠などだ。
 そんな組織から極秘の依頼を頼まれる時、彼がいったん引き受けて僕に伝えてくれるのだ。いつの時代も自分の口で依頼を言う事が一番安全だから、彼の存在はこのイギリスでは重宝されている。
 彼の拠点は洒落た小さな喫茶店だ。
 表から入ると、普通の喫茶店。裏から入ると『赤い鴉』(ロートクレーエ)に直接依頼ができる唯一の場所になる。
 勿論僕は裏から入る。
 カランコローンと扉にかけた鈴が鳴る。

「いらっしゃいませ。おや、これは珍しいお客様だ。」

 道化のような笑い顔をこちらに向けながらそんなことを言ってくるこの男こそ、幹部の一人、アランだ。

「今日は直接話したいことがあってね。」
「ほう。それは楽しみだ。あなたが話してくれる内容はどのお客様よりも刺激的ですからね。」

 彼にも、すずかの事と招集の事を伝えた。

「やはり刺激的だ。幹部が全員集まるような出来事とは一体何か。興味が尽きませぬ。」

 くつくつと愉快そうに笑うアラン。

「それはついてからのお楽しみだ。準備ができ次第、霧に乗ってこっちに来てくれ。」
「了解いたしました。・・・さて、店の業務員たちに私が店を開けることを伝えてきますので、少々お待ちを。」
「別にいいよ。こっちは急いでいるからね。このまま帰らせてもらうよ。」
「左様でございますか。お見送りの方はいかがなさいましょう。」
「別にいらない。はやく店員たちに伝えてきなよ。」
「了解しました。それでは。」

 そう言って立ち去っていくアラン。
 ちなみに、彼の部下である『赤い鴉』(ロートクレーエ)のメンバーはみんな喫茶店の店員であり、みんな戦闘力は低い。魔術師としては2流、3流ばかりだ。
 なぜか聞いてみると、

「私の仕事は接客業でございます。故に、必要なのは力ではなくどれだけお客様の御心を害さないかでございます。」

 とのことだった。
 変わった奴だ。
 アランが見えなくなったところで、最後の幹部の場所へ飛んでいく。




 オーストラリア シドニー
 すずかを除けば一番の新参者である幹部がいる都市に着いた。
 ダニエルという名のその男は幹部の中で一番の新参者ではあるが一番の高齢者でもある。と言っても、40半ばぐらいだが。
 あいつはいわゆる考古学者というやつで、神話などに詳しい。その筋の話の相談役のような存在になっている。
 今時といった感じの白い家の前に立つ。ここがダニエルの家だ。
 ピーンポーンとチャイムを鳴らす。

「はい。」
「すみません。結城です。今日はダニエルに用があってきました。開けてください。」
「分かりました。少々待っていてくださいね。」

 母性溢れるといった感じの声がインターホンから流れてくる。
 しばらくするとガチャりと扉が開いて、温和そうな女性が現れる。
 この人はダニエルの妻、ソフィアさんだ。初めてその事を知ったときはよくあんなおっさんがこんな美人な奥さんをもらえたものだと思ったものだ。
 ちなみに、この奥さんも『赤い鴉』(ロートクレーエ)に属している魔術師だ。

「ようこそ。夫はリビングで待っています。」
「では、お言葉に甘えて。」

 ソフィアさんに連れて行かれるがままダニエルの待つ、リビングへと向かう。

「よく来たな。」

 渋い声をかけてくるのはソファーに座ったダニエルだ。

「今日は君に用があってきたんだ。」
「ほう、なんだ?また厄介ごとか?」
「まあね。それもかなりの厄介事だ。」

 僕の真剣な眼差しに気づいたのか、真面目な表情になるダニエル。
 そんな彼にも他のメンバーに散々伝えてきた内容を話す。

「なるほど。幹部の招集か。・・・そりゃあ確かにかなりの厄介事だな。」
「だろ? だから今すぐとは言わない。用意が出来次第こっちに来て欲しい。霧を置いておくよ。それで来るといい。」
「はあ、仕方ねえな。分かった。準備をしてこよう。そのあと、すぐにお前のところに向かう。」
「そいつは重畳。待っているよ。僕は先に帰っておくことにするよ。」
「ああ。」

 そんな会話を交わして、霧の権能を使い日本に戻る。

 アメリカのブラッド。
 ロシアのアーニャ。
 イギリスのアラン。
 オーストラリアのダニエル。
 日本のすずか。
 ドイツのシャルロッテ。
 そして、彼らの総帥である僕。
 さあ、こちらの役者は揃った。
 楽しみにしているよ管理局。



最近なかなかうまく書けないなぁ。

ちょっと更新速度落ちるかも。


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