魔王少年リリカルカンピオーネ (ヤギ3)
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遅くなってすみません。

なかなか納得のいくものが作れなかったんです。

スプラッタな表現って難しくないですか?



第20話 『処刑』の時間

 私は今、黒い馬に乗ってサーコートを着た騎士の後ろにいる。
 彼からいろんなことを聞いた。
 自分は人間ではなく、権能と呼ばれる力で生み出された存在であること。
 サーコートを着た騎士は喋る程度の知能は有していること。
 そして、大輔が隠れている廃ビルに逃げている途中であること。
 話している最中にも黒い馬は走り続ける。
 何分たっただろうか。ようやく廃ビルに到着した。

「アリサさん!」

 大輔が廃ビルから出てくる。

「無事で何よりです。・・・本当に良かった。」
「あんたが結城に知らせてくれたんだったわね。ありがとう。おかげで無事に帰ってくることができたわ。」
「はは。俺にできることはそのぐらいっすから。今の言葉、結城が帰ってからあいつに言ってやってください。あいつがいなかったらどうしようもなかったんですから。」
「そうね。」

 そう言って笑い合う。

「さ、ここは危ないですから。早く中に入りましょう。」
「そうね。」
「おおっと。そうはさせねえぜ。犯罪者のクソ野郎。」

 いきなり上空からそんな声がかけられた。

「ようやく見つけたぜ。てめえが犯人か。それとも犯罪者の協力者か?まあどっちでもいい。アリサからその汚ねえ手を離せモブ野郎。」
「犯人?協力者?何言ってんだお前。・・・というかなんだその格好は。」
「とぼけんじゃねえ。てめえはこの町を混乱に陥れた犯人の仲間だろう。そこの汚い騎士と一緒にいる事とアリサをさらったことが証拠だ。」
「アリサさんをさらった?違う!この騎士は攫われたアリサさんを助けてくれたんだ!」
「嘘をつくんじゃねえ!!俺のアリサをさらっておきながら口答えか?ふざけんじゃねえぞ!」

 駄目だ。こいつは話を聞いていない。

「本当よ。この人は攫われた私を助けてここまで連れてきてくれたの。」
「アリサ、お前は騙されている。いいからこっちに来るんだ。・・・くそ!このモブ野郎!よくもアリサを騙してくれたな!ぶち殺すぞ!」

 そう言って剣をこちらに向けてくる。
 嘘でしょう!?大輔は魔法を使えないし、武器になるものも持っていない。それなのにデバイスをこっちに向けてくるの!?
 私があいつの行動に驚愕していると隣にいた騎士が剣を抜いた。

「ハッ!見たかアリサ!こいつらは非殺傷設定もない剣をこっちに向けることができるぐらい頭のイカレた連中なんだよ。そんな奴らがお前を救うことなんてありえない!お前を救えるのは俺だけだ。さあこっちに来い。」

 彼が剣を抜いたのはお前が剣を向けてきたからだろう。彼は私たちを守るために剣を抜いてくれたんだ。
 そんな指摘を心の中でする。

「そうか、来ないか。・・・クソ野郎ども。アリサに何をしたあああああああああああああ!」

 そう叫んで騎士に斬りかかる神威。
 その神威をうまくいなしていく騎士。

「クソ!邪魔なんだよ。ソウルスラッシャー!」

 本来ならば避けることができる攻撃なのだろう。だが後ろには私たちがいる。騎士は私を安全な場所まで護衛することを命じられている。私を傷つけるような攻撃は自分の身を挺してでもかばう。現にあいつの攻撃を剣で受け止めている。受け止める必要のない攻撃をだ。

「ちっ!ゴキブリ並みにしぶといな。もう一度だ!ソウルスラッシャー!」

 今度も身を挺してかばってくれる。分かっているのだろうか。あいつは今、私たちを人質にとって攻撃しているようなものだということが。
 分かっていないのだろう。そうでなければあんなに笑いながら攻撃なんてできない。
 あいつは彼のことを頭がイカレていると言ったが、私にはあいつの方がイカレているようにしか見えない。
 どうしてあんなふうに笑いながら攻撃をできるのだろうか。どうしてあんな風にいたぶって笑えるのだろうか。
 そんなことを考えていると騎士の体にヒビが入っていく。そして砕けた。
 私を守ってきた騎士が今、私の目の前で砕けたのだ。その瞬間、足元が崩れるような錯覚に陥った。
 私は不安だった。誘拐してきた連中が追いかけてこないか。すずかが死んでしまうんじゃないか。そしてなにより、一人でこんな空間にいることが不安でたまらなかった。
 それを支えていてくれたのは目の前にいた騎士だったのだろう。それが今、私の目の前で砕け散った。
 私はその事実にぺたりと地面に座り込んだ。

「これでようやく邪魔者はいなくなったな。・・・いや、もう一人いたか。」

 そう言って大輔に足を向ける神威。
 そして、

ゴッ!

 剣で大輔を殴りつけた。

「てめえ!生きていられると思うなよ!俺のアリサを攫った上に誑かしたんだ!ぜってえ許さねえ!」

 何度も何度も剣を振り下ろす神威。大輔も抵抗しようとするが、剣と拳のリーチさもあって、なかなか反撃できない。
 ついに大輔は膝から崩れてピクリとも動かなくなった。

「ふう。これで本当に邪魔者がいなくなったな。アリサ、助けに来たぜ。さあ、帰ろう。」

 神威が私の腕を掴んでくる。

「い、いやっ!離して、離してよ!」
「なっ!?クソ!連中、何をしやがった!?落ち着けアリサ!俺だ。わかるだろう?もう大丈夫だ。落ち着いてくれ。」
「離しなさいって言っているでしょう!?」

 私は神威の手から逃れようと精一杯暴れた。
 あんな奴に連れて行かれたらどうなるか分かったものじゃない。こんなやつに連れて行かれるぐらいなら誘拐犯に連れて行かれる方がまだマシだ。

「ちっ!・・・済まないアリサ!しばらく眠っていてくれ!」

 私の後頭部に激痛が走る。

「大丈夫だ、安心してくれ。次に目が覚めるときには俺の腕の中だからな。」

 私の意識はそこで途切れた。




「ハッ!犯罪者同士の庇い合いか?反吐が出る。」

 あいつはそう吐き捨てた。
 むしろ大輔は被害者だ。あいつは何一つしていない。僕が傷つくことは一応納得できる。それだけのことをしている自覚ぐらいはある。だがなぜあいつが傷つかなければいけない?

「だから神は嫌いなんだ。」

 そう呟いて神威に跳躍で一気に近づき左手、つまりアリサの抱えられている方の腕と大輔が括りつけられている鎖を一気に切り裂き、彼女たちを抱える。

「ガ、アアアアアアアアアアアアアアア!!」

 形のいい桜色の唇から悲鳴が漏れる。

「テメエエエエエエエエエエエエエエ!よくも俺の腕をおおおおおおおおおおおおお!」

 右手で剣の切っ先を突き出し、魔力を収束し始める。

「デッドブラスタああああああああああああああ!」

 巨大な砲撃が奴の持つ金の剣から射出される。
 その砲撃を霧の権能で包み込む。
 幸い大きさはあったので奴の砲撃を26分割にし、縦横無尽に神威を取り囲むように砲撃を転移させる。
 上から、横から、下から襲いかかってくる砲撃を避けるすべはない。もちろん防ぐこともできない。なぜなら、あいつが放った砲撃なのだから。
 ああいう奴は攻撃にばかり目がいって、防御を全く考えない。それにあの局面で出したということはそれなりの威力なのだろう。そんな攻撃をあいつが防げるはずがない。
 現に、

「ぐああああああああああああああああああ!!」

 悲鳴を上げながら空中でのたうち回っている。
 おまけとして『処刑』の権能で召喚した細長い鉄の串を射出し、霧の権能で転移させて体中を串刺しにする。だけど急所はつかない。まだ死んでもらっては困る。

「ガハ、ハァ、ハァ・・・。」

 力なく息をする神威。呼吸器系を痛めたのかひゅうひゅうと息をする音がここまで聞こえてくる。
 僕は『処刑』を使い、鎖を召喚する。
その鎖を振るい、神威を地面に叩きつける。
 ドゴォォォォォン、と大きな音と土煙を立てながら神威が地面に衝突する。

「満身創痍ってやつだね。諦めて死んだら?君、目立ちたがりだろ?だから大衆に見られるように死体を晒しておいてあげる。」

 血の湖を作り上げる神威に対してそう声をかける。
 『処刑』の権能を使い、ギロチンの刃を降らせて神威の体をバラバラにする。
 ふぅ。すっきりした。
 ピクッ!
 何かは知らないけど、こちらに向かってくる。明確な敵意を持って。
 咄嗟に後ろに下がる。

ドゴォォォォォン!!

 神威を地面に叩きつけた時以上の轟音を響かせながら、鞭、いや連結刃が地面に突き刺さる。

「てめえ!何やっている!」

 幼いと言っていい声が辺りに響く。
 また上空からだ。彼女たちは空が好きなのだろうかと考えながら上を向く。
 いたのは、顔を青くしているなのは、はやて、龍馬、そしてフェイト。あとは見慣れない桃色の女性と赤い子供、青い犬の2人と1匹。
 だけどそれ以上に僕の目を奪ったのは、

「いやー。すごくスプラッタだったね王様?相変わらず恐ろしいなぁ。」

 なんて呑気に喋っているボロボロのロッテだ。案の定、鎖で縛られている。それが何故か無駄な色気を出している。なんでだろう。服が破れて扇情的になっているからかな?なんて馬鹿なことを考える。というか今の今までシリアスだったよね?あいつの態度を見ているとなんだかいろいろ白けてくるから不思議だ。・・・まあ、だからこそ僕のパートナーになったんだろうけど。

「何してるのロッテ?」
「いや、捕まっちゃってね?今は捕虜っていう状態。助けて王様。」
「はぁ、仕方ないな。魔女の翼よ。我が飛翔を助け給え。」

 魔術の中でも最高の速度を誇る魔女の飛翔術を使い、ロッテの捕まっている鎖を大通連で切り裂く。
 どうやら、ピンクのお姉さんたちはあっさり出し抜かれたことにびっくりしているようだ。僕としてはこの程度でびっくりされる方が心外だ。
 踵を返し、この場を立ち去ろうとする。

「ま、待ってください!」
「明日の午後4時。月村の屋敷で話を聞いてあげる。たぶん話の席を設けるぐらいはしてくれるだろうから。」

 フェイトが言おうとしたことを察して話す。
 勝手に決めてしまったが、まあ大丈夫だろう。

「待て。」
「まだ何か?僕はもう帰りたいんだけど。」

 凛とした女性の声に対して、うんざりしたような声でそう返す。

「それは出来ない相談だ。私たちにはお前を捕まえる義務があるからな。」
「ああ。おとなしくお縄につきやがれ。」

 赤い子供と桃色の女性、青い犬が臨戦態勢に入る。
 他は未だに顔を青くしたままだ。
 あの3人はそれなりに場数を踏んでいるのだろう。あれだけスプラッタな光景を目にしても動じないとなると、人が死んだ光景を何度も見たことのある一人前の兵士だと考えていいだろう。
 まともに付き合う気もないので、大通連をしまいアリサと大輔を地面において、悪魔の権能で短剣を呼び出す。

「しかたない。ちょっと遊んであげる。子供とワンちゃんはサービスで痛いのは無しだ。」
「舐めやがって!」

 3人同時に襲い掛かってくる。
 速いし、技術も大騎士はいくだろう。エリカ・ブランデッリやリリアナ・クラニチャールよりも強い。
 だけど、今の僕は彼女たちを圧倒できる技術の持ち主だ。この程度じゃ捉えられない。
 桃色の剣戟を躱し、腕の腱を切り裂いて剣を落とし、顎を強打し気絶させる。

「シグナム!」
「くっ!なんだこの鎖は。」

 子供とワンちゃんを鎖で捉えて、動きを封じる。

「それじゃあ今度こそさようなら。明日を楽しみにしているよ。」

 霧の権能を使い、アリサと大輔を抱えてこの場をあとにする。途中ですずかを拾うことも忘れずに。
 それにしても、すずかのやつなんで山の方にまで移動していたんだ?なのはたちのせいかな?




 負けた。圧倒的な差で。
 私たちはSランク魔道士だ。自分たちで言うのもなんだが、かなり強いほうだろう。
 その私たちが為すすべもなく負けた。龍夜なんか殺されてしまった。
 ちらりと龍夜の死体に目を向ける。彼の体はバラバラになって串刺しになっていた。吐きそうになる気分をグッとこらえて殺した方の彼のことを考える。
 彼は完全に手を抜いていた。
 一体、逆月結城は何者なのだろう。
 私たちの中にそんな疑問が頭の中でグルグルと回り続けていた。



いやぁ、難しい。

あまり納得いかないかもしれませんが、今回はこれで勘弁してください。

本当にすみません。


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