魔王少年リリカルカンピオーネ (ヤギ3)
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第19話です。
主人公が思いのほか弱く見えますが、マルコシアス戦で消耗しているからだと思って下さい。
主人公が思いのほか弱く見えますが、マルコシアス戦で消耗しているからだと思って下さい。
第19話 対管理局戦
人が死んだ。
現実感がない。
なぜだろう。
それは殺したのが友達だから?
それとも
―――目の前のものが人の形をした黒い人形にしか見えないから?
私には、人が死んだことが理解できなかった。
「やっぱり耐えられなかったか・・・。」
僕はそうつぶやく。
最初から防がれるとは思っていなかったけど、もしかしたらいまの一撃ぐらいは耐えてくれるかと思ったのだけど、どうやら耐え切れずに消し炭になってしまったようだ。
加減がきかないのはルドラの権能の欠点だな。できる限り手加減をしても人間相手では強すぎる。
「またやっちゃったな。」
また人を殺してしまった。
僕は殺すと決めた相手以外はなるべく殺さないようにしているのだ。だが殺してしまった。
一応、人を殺したことに対する罪悪感ぐらいは持ち合わせる良心は残っている。
ロッテはどうかはわからないけど。
「なんで人を殺してそんなに平気にしているんだ!!」
「いや、これでも結構反省しているんだけどね。今のは完全に事故だよ。加減したのにそんなになるとは思ってなかった。」
「何ふざけたこと言ってるんや!あんた今、人を殺したんやで!?私たちはなんでそんなに平然としてられるか聞いてるんや!」
「態度が気に入らないのかい?それは許してほしいな。一応僕は人の形をしたものを殺す義務があるから克服したんだよ。・・・それに、人を殺すこともなかったわけじゃないしね。」
僕のセリフに3人とも絶句する。
当然だ。平和な日本で暮らしておけば人殺しなんてことと縁ができるはずがない。殺しをするシチュエーションなんて想像できないだろう。
「お前は危険すぎる。」
「自覚はあるよ。」
「あなたは私たち時空管理局が逮捕します。」
「それは了承できないな。どうしてもと言うなら。」
右手に持った大通連を3人に向ける。
「力ずくでやってみろ。」
その言葉を聞くなり、彼女たちは攻撃してきた。
「アクセルシューター。シュート!」
「スプレットレイ!ファイア!」
なのはの向けた杖から魔力弾が、龍馬の向けた銃から光線が飛び出す。
前の男どもとは格が違うな。数はもちろん展開速度も大したものだ。
だけどこの程度なら避けるまでもない。
霧の権能を体にまとう。
「っ!?」
「魔力弾が消えた!?」
そのまま転移させた魔力弾をそのまま彼女たちに向けた状態で転移させる。彼女たちからは魔力弾が跳ね返されたように見えるだろう。さて、彼女たちはどうするのかな。
「ちっ!」
「くっ!」
龍馬は舌打ちをしながら避け、なのはは自分の魔力弾を操作し、停止させた。というか操作可能だったのか。
「二人共避けて!クラウ・ソラス!」
ヌアザの神剣の名を持つ砲撃魔法をはやては僕に向かって放ってきた。
これはちょっとまずいかな。今の僕は左腕が負傷している。右腕一本で受け止められるかどうか怪しい。右腕一本でも負傷はしないと思うが、トリシューラを放った時にぐちゃぐちゃになった内臓に衝撃を与えるのは避けたい。砲撃よりも砲撃を受け止めた時の衝撃に気をつければなんとかなると思う。
受け止めるときに細心の注意をして大通連で受け止める。
「なっ!?嘘やろっ!?」
大通連で受けているところで2つに裂けている砲撃を見て絶句するはやて。
気にしていた衝撃もそこまでなくてよかった。攻撃を受けても戦闘には問題ないだろうがそれでも友人の前で胃の中のものを吐いてしまうようなことになりかねなかった。そんなことになったら僕は彼らの前に二度と姿を現せない。
砲撃が止んだところで攻撃に出たいが権能だと彼女たちを殺しかねない。だがやわな魔術だと彼女たちは落ちてくれないだろう。なら僕の使える最高の魔術を使おう。
「ダヴィデの哀悼を聞け、民よ。ああ勇士らは倒れたる哉。戦いの器は砕けたる哉。」
神をも傷つける魔術『ダヴィデの言霊』を使い、ヨナタンの弓を呼び出す。そして、4つの矢をつがえ射出する。
青い長弓から4つの彗星となってはやてを襲う。
「くぅぅぅぅぅ。」
彼女はシールドを展開し、なんとか持ちこたえているといった感じで耐え忍ぶ。だがだんだんとシールドにヒビが入っていき、あと1本耐え切ればというところでシールドは砕け散る。そして彼女の肩にヨナタンの矢が突き刺さる。
これには驚いた。左手の負傷した状態だから威力は出せないが2本は当たると思った。彼女は想像以上に優秀なようだ。
「あんた何もんなんや・・・。」
はやてがそう尋ねてきた。まあ、彼女たちからしたら怪物にしか見えないのだろう。砲撃を日本刀一本で防いで、火傷をして爛れた左腕で矢を撃ってシールドを貫いたのだ。並の、というか普通の人間にはできないことだ。
「何者か、という質問は久しぶりだよ。なにせ裏に関わる人間はみんな僕のことを知っているんだから。だけどせっかく聞いてくれたんだ。もう一度自己紹介するとしよう。僕の名前は逆月結城。7人目のカンピオーネ。八人の魔王のうちの一人だ。」
「カンピオーネ?」
「そう、カンピオーネ。イタリア語でチャンピオン、勝者って意味の言葉だね。」
「随分と仰々しいあだ名だな。」
「自覚はあるよ。だけどそれ以上に僕たちを表す言葉がないことも知っている。それについては君たちもその身をもって経験したからわかると思うんだけど。」
「まあな。正直勝てる気がしない。だけど勝たせてもらう!」
そう言って飛びかかってくる龍馬。
「いいね。前にやった試合の続きをやろうっていうわけだ。今回も勝たせてもらうよ。」
「それはこっちのセリフだ。」
彼は今度は小太刀二刀の持ち替えて斬りかかってくる。魔法で強化してあるのかとてつもなく速い。これは心眼が使えないと骨が折れるだろう。だが、僕は心眼を十全に使えない。もっとも、大通連の能力を使えば可能だが。
「我は智慧の化身を振るう者。鬼神を斬る剣を振るう者。嗚呼、鬼女よ。汝の武勇はすべての敵を捻じ伏せる。」
大通連の能力、技術取得に限らず『智慧の三刀』の力は一日三回まで。つまり大通連の能力は三回使える。三つの技術を取得できるのだ。今回、僕が取得した技術は『鈴鹿御前の剣術』『完全な心眼』の二つだ。だがこれだけあれば彼を圧倒できる。
「くっ!この速さについてくるか!」
「今の僕には速いだけの攻撃は通らないよ。」
「俺だけならな。」
龍馬がそうつぶやくと右側からピンク色の魔力弾が襲いかかってくる。魔力弾自体は僕の肌に触れただけで霧散したが、龍馬から気をそらしてしまった。その一瞬をついて龍馬が斬りかかってくる。かろうじて右手で防ぐ。そのまま右手で龍馬を弾き飛ばす。
「・・・・。」
「へっ。どうしたよ。」
「薄皮一枚切っちゃったなと思っただけ。」
「あの攻撃を薄皮一枚だけで済んでんのかよ。どういうカラダしているんだよ。」
「魔術が一切効かない体だね。だからびっくりしているのさ。・・・本来なら薄皮一枚たりとも傷が付かない筈なんだから。」
「へえ。それじゃもっと収束率を上げるか。」
「収束率?」
「ああ。俺はなのはやはやてたちと比べると魔力が少ないんでね。それに俺のユニゾンデバイスのリオンも戦闘はあまり得意じゃないんだよ。だから少ない魔力で最大の威力を出すために魔力を固めているのさ。俺たちは量より質をとったってわけ。俺のデバイス、ザミエルと赤雪もそのために他の機能を捨てているようなものだからな。」
だからか。
カンピオーネに効く魔術と言えば、僕の放った『ダヴィデの言霊』、それに草薙くんのそばにいるエリカ・ブランデッリの使う『ゴルゴダの言霊』などが有名だ。
だがなぜ『ダヴィデの言霊』や『ゴルゴダの言霊』が有効なのか。威力だけを見ればもっと威力の高い魔術もある。だがそれでも神と神殺しを傷つけることのできる魔術はこの二つだ。答えは魔力の質だ。『ダヴィデの言霊』と『ゴルゴダの言霊』が有効な理由はその魔術が内包する魔力の質が段違いで高いからだ。神や神殺しには量による力技は効かない。高品質の魔力を繊細に扱う技術が必要なのだ。
龍馬はそれを日常的に行っていたようだ。これは舐めると痛い目を見るかな?
だが腑に落ちない。
「ねえ。何で僕に教えたのさ。」
「準備に時間がかかっているみたいだったからな。」
準備?
そう思っていると頭上から膨大な魔力を感じた。
頭上を見上げていると巨大な魔方陣を展開したなのはとはやてがいた。
まずい。
根拠はないがそう感じた。だが、あれは僕を傷つけることができる魔法だ。それは間違いない。こちらにも根拠はないが、なぜかそう確信できる。
「全力全開!」
「響け!終焉の笛!」
『弓矢』で相殺する。
駄目だ。『弓矢』はマルコシアス戦で使い切ってしまった。
ならば『暴風』は?
これも駄目だ。『暴風』は基本的に嵐を呼び寄せるだけのもの。雷などを操る能力はオプションのようなものだ。だから、嵐の中から調達しなければならない。雷は落としてから発射までラグがある。間に合わないだろう。風や水はまだ扱いきれない。4つ目の権能はまだ剥奪してから日が浅い。さらに頻繁に使うわけでもなかったのでまだまだ扱いきれないことが多い。
ならば、騎士たちを召喚して耐えきる。
「我は魔神。悪魔の軍勢を率いるもの。すべての人はこの66番目の悪魔に恐怖するといい。」
キマリスの聖句を唱え、呪力を上げる。
そしてなのはたちの魔法が放たれる時が来た。
「スターライトブレイカー!」
「ラグナロク!」
巨大な楯を持つ騎士たちを10体ほど召喚し、巨大な光の奔流から身を守る。
一人、また一人と騎士たちが弾き飛ばされついに一人たりともいなくなった。右手を前に突き出し、身を守る。
どうやら彼女たちの技は聖絶と同等のようだ。右腕一本、それにマルコシアス戦で減った呪力にズタズタになった内臓といくらも問題を抱えているときつい。これは左手が痛いとか言っていられないな。僕は砲撃に向かって火傷で爛れた左手を突き出す。
「よっと!」
少し気合を入れて魔力を吹き飛ばす。どうやら防ぎ切ったようだ。そのかわり左手はもっとひどいことに、右手も少し負傷してしまった。
「嘘や・・・。」
「そんな・・・。」
彼女たちは今の一撃を防がれたのが信じられないようだった。
そんなとき、馬鹿がやってきた。
「ソウルスラッシャアアアアアアアアア!」
横から飛んできた深緑の斬撃を僕は右腕で受け止める。
「何、俺のなのはたちに手を出しているんだ?しかもアリサまで拉致しやがって。屑が!」
上空から見下ろす神威の手の中には眠ったアリサと深緑の鎖。
鎖の先には僕のところに来た時よりもボロボロになって気絶している大輔がいた。
「お前こそ、僕の親友に何してんだ。・・・殺すぞ。」
僕は今日、初めて本気の殺気を放った。だがあいつは、
「ハッ!犯罪者同士の庇い合いか?反吐が出る。」
そう言って吐き捨てた。
そうか。なら遠慮なく八つ裂きにさせてもらおう。
読者の方々が期待されていたような圧倒的な戦闘にならなかったかな?
力不足ですね。勉強してきます。
力不足ですね。勉強してきます。