魔王少年リリカルカンピオーネ (ヤギ3)
<< 前の話 次の話 >>

権能全て出ます。

マイナーなものばかりですみません。



第11話 王の要求

【二十一世紀初頭、新たにカンピオーネと確認された日本人についての報告書より抜粋】
 日本の御伽草子などに登場する鈴鹿御前は複雑な神格を所有する神格です。
 彼女は登場する作品によって鬼女、天女、または立烏帽子という名の女盗賊として語られています。
 そんな彼女は智慧の神といわれる文殊菩薩の化身と言われる三つの刀を振るい夫の坂上田村麻呂と共に様々な鬼神を討伐してきた。まさに外敵をまつろわす《鋼》の英雄神と言えます。
 逆月結城とは、この《鋼》の戦乙女を殺し、真の七人目のカンピオーネとなった少年なのです。

【グリニッジの賢人議会より作成された、逆月結城についての調査書より抜粋】
 彼の権能、『智慧の三刀』は先ほど述べた戦乙女の所有する三振りの太刀だ。故に、文殊菩薩の化身と言われるこの刀の能力は物の真意を授けるものだと思われる。
 わずか11歳という若さでカンピオーネになった彼はほかにも権能を所有している。
 確認されたのは空間を操る天之狭霧神の権能『霧の境界線』、悪魔の軍団を召喚するキマリスの権能『悪魔の騎士団』(ナイト・オブ・マーチ)、複数の能力を操るルドラの権能『咆哮を上げる破壊の暴風』(ローアストーム・ディストラクション)である。さらに大騎士すらも凌駕する剣術を振るい、魔術も修め、男でありながら魔女術を使用することのできる少年だ。
 これほどの力を保有していながら彼は先達のカンピオーネ達の様に絶対的権威の獲得に至っていない。
 なぜなら彼は当時はまだ幼かったこともあり、存在を公にせず魔術の世界から遠ざかっていたためである。
 しかし忘れないでいてもらいたい。彼は間違いなくか弱き人の子に過ぎない我らを凌駕する魔王なのだ。

【ドイツの魔術結社『赤の鴉』(ロートクレーエ)についての調査書より抜粋】
 ドイツに新たな魔術結社が誕生した。その名は『赤の鴉』(ロートクレーエ)
 構成員は約十名の小規模な組織だ。それだけであるのならばわざわざ書くまでもないことだ。ドイツという魔術の本場から少し外れた国にできたごく小さな組織なのだから。
 しかし、そういう訳にもいかない。なぜなら総帥が真の七人目と明らかになったカンピオーネ、逆月結城だからだ。
 この組織は、ネット上を活動場所とする変わった魔術結社だ。
 総帥をカンピオーネ逆月結城、副総帥をシャルロッテ・クラウゼヴィッヒとし、総帥直属の部下4人を中心とした数人のコミュニティーを作り世界中で活動している組織である。
 逆月結城はこのネット上でも依頼を募集しており、報酬は金銭、または魔道具だ。
 自分の組織の手に負えなくなり、頼るべき王がいない時にはこの組織を通じて彼を頼ってみるといいだろう。




 これが私の目の前に座って紅茶を飲んでいる少年のプロフィールだ。
 女の子のような見た目からは判断できないとてつもなく恐ろしいプロフィールだ。
 『赤い鴉』(ロートクレーエ)は今やドイツの組織の中でも1位、2位を競う組織である。
 賢人議会のレポートなんて高いし、そしてなにより馴染みのないものだったから見落としていた。

『ねえお姉ちゃん。魔術関係者で、王様って呼ばれている人がいるんだけど・・・。逆月結城くんって言うんだけどね。』

 すずかからそう言われたときはとてつもなく焦った。
 何せ天下の魔王様相手に忘れていたなんて言えないし、万が一すずかが彼の逆鱗に触れていたら月村一族全滅のお知らせになりかねなかったのだから。本当に肝が冷えた。
 それをすずかに伝えたことが運の尽きだろう。
 すずかの急変した態度からこちらが魔術関係者だと見破っていきなり家に押しかけてきたのだから。
 私、月村忍はそう後悔した。

「それで王よ。一体どのような御用で当家に参られたのでしょうか。」

 使い慣れないながらも両親にみっちりと教え込まれた敬語を使い彼に質問する。この時ほど親に感謝したことは、後にも先にもないだろう。

「強いて言うなら探偵ごっこと要求を言うことかな?要求はついでに思いついたことなんだけど。」

 この魔王は自分が遊びたいが為に来たのだろうか。私の都合とかは考えてくれないのかな。・・・考えないんだろうな。そんな表情だ。
 だが、そんなことよりも大切なことがある。

「要求とはなんでしょうか。王よ。」

 そう。彼の言った要求だ。
 王の要求とはたいてい理不尽なものだ。有名なところを言うとヴォバン侯爵のまつろわぬ神を呼び出すために優れた巫女の素質を持つものを要求したことだろうか。

「うん。廃ビルとかあったら直してそれを僕に頂戴。」
「はい?」
「聞こえなかったかな?だったらもう一回言うよ。使わない大きな建物ちょーだい。」

 そんなこと?もっとひどいことかと思った。すずかを寄越せとかそんなカンジ。

「意外って顔だね?言ったはずだよ。要求はついでだって。」
「つかぬ事をお聞きしますが、一体どのようなことに建物を使われるのでしょうか?」
「魔道具を置くため。僕が仕事の報酬に魔道具をもらうこともあるって知ってる?最近魔道具の数が増えてきてさ。爺さんの所の物置使わせてもらっているんだけど、爺さんがうるさいから。そろそろ大きな物置が欲しかったんだよね。」

 建物一つを物置にしないといけないってどれだけ溜め込んでいるのよ。

「しかし、一般人が立ち入れるような場所に魔道具を置かれるのはどうかと思いますが。」
「その点は大丈夫。僕の権能使えばいいし、魔術でもできるし、いざという時は立ち入り禁止にすればいいからね。」

 人払いができる権能・・・。《霧の境界線》だろうか。確かに空間操作を可能とするあの権能であれば、人払いは出来るだろう。近づいても近づけないのだから。これならば問題ない。この程度でカンピオーネの機嫌取りができるのならば、安いものだ。

「分かりました。優良な物件を見つけ次第、追って連絡をいたします。」
「うんヨロシクね?で、次。こっちが本題なんだけど。」

 なんだろう。妙に嫌な予感がする。

「数年前、ここ海鳴市で不審な魔力反応がしたよね?その時の原因とか知らない?」

 やっぱり、とんでもない内容だ。こういう時の予感だけは妙に当たるから嫌になる。




 この反応。あたりだな。
 僕はすずかの姉、月村忍さんの反応を見てそう判断した。

「最近さ、妙な魔力反応があるじゃない?それを追ってみたらさ、不審な男と出会ったんだよ。そうしたらさ、管理局がどうとか、魔導師がどうとか、デバイスがどうとか言ってたからね。ちょっと気になったのさ。それで彼の使う魔術の反応が数年前ここで起こった反応に似ているのさ。・・・ああ。その男に関しては問題ないよ。ちょっと右腕とデバイスとやらをもらっただけさ。」

 これは本当のことである。
 最近、魔力反応が多発していて、興味本位で近づいてみたらコスプレをしたおっさんがたっていたのである。
 見たこともない魔術と魔道具を使って、僕を攻撃してきた。
 カンピオーネである僕をだ。権能をちらつかせても僕が何者かわからなかったようである。魔術師であるならひと目で魔王だとわかるはずなのに。
 彼の口ぶりから仲間がいるみたいだったから彼らは何者なのかな?と思ったのである。

「申し訳ございませんが私には、分かりかねます。」
「嘘はよくないよ、忍さん。本当に知らないって言うなら別にいいけど。その代わり嘘をついてたらひどい目に合わせるよ?・・・すずかに。」

 そう、これでいい。ああいう人は自分が何されても意地を張り続けるような人だ。だが、自分の大切な人が傷つくことだけは許容できないタイプなのだ。

「ちなみに僕の権能の中には嘘ぐらい見破れるものがあるよ?」

 小通連の情報共有はちょっと工夫すると一方的に、考えていることがわかるのだ。

「・・・分かりました。しかし私はあまり詳しくありません。後日すずかに話させるので、その時までお待ちください。」

 ニヤリと笑う。
 傍から見たら僕はとても悪い笑顔を浮かべていたのだろう。
 
 そうして数日後、
 月村すずかと月村忍、僕、逆月結城。そしてなぜか高町恭弥とシャルロッテ・クラウゼヴィッヒが集まり当時のことを語られる。
 それは、ひとりの少女が“魔法”と出会う話。
 それは、ひとりの少女がひとりの少女と戦った話。
 それは、ひとりの少女がひとりの少女を助けた話。
 それは、ひとりの少女、高町なのはの話。



権能の名前は語呂重視です。

リリカル側とようやく絡みが出てきます。

ようやく。


<< 前の話 次の話 >> 目次 ページの一番上に飛ぶ