魔王少年リリカルカンピオーネ (ヤギ3)
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権能、地味かな?



第4話 『赤の鴉』

 チャラ男どもを蹴散らして、大輔を家に送り、ようやく家に帰ってくることができた。長かった。実に長かった。
 チャラ男撃退の後、金髪の少女達、フェイト・T・ハラオウンとアリサ・バニングスに自己紹介されたりした。バニングスってあのでかい家に住んでる実業家の苗字だったよな。彼女お嬢様だったのか。
 ちなみに、大輔は初めから彼女たちの名前を知っていたらしい。

 家に帰ったあと、自分の部屋に行きパソコンを付ける。
 別にネットを徘徊する訳じゃ無い。そういうことも嫌いじゃないけど。
 ネットに入り、一つのチャットへ入る。

 『赤い鴉』(ロートクレーエ)

 それがこのチャットについている名前だ。
 このチャットは普通じゃない。何が普通じゃないってこれを見る人間が普通じゃない。
 このチャットは同名のドイツの魔術結社が運営している。魔術関係者しか立ち入れないチャットなのだ。ちなみにトップはカンピオーネであるこの僕だ。ドイツの結社のトップをやっているのは僕が4分の1ドイツ人だからだ。
 『赤い鴉』(ロートクレーエ)には他の魔術結社にはないある特徴がある。
 一つ目は、こういう風にネット上で活動をしていること。
 二つ目は、他の魔術結社の魔術師も利用できるということだ。
故に、『赤い鴉』(ロートクレーエ)は、魔術師同士の情報交換、カンピオーネの動向の共有、合同の作戦の打ち合わせ、アンドレア卿の愚痴によく利用される。そして一番利用されることが多い理由は、

「今日も来てるなー。依頼。」

 そう、カンピオーネの力が必要な時に僕に頼むための依頼掲示板として利用されることがもっとも多いのだ。
 僕の権能は、破壊規模の小さいものが多いし、カンピオーネの中で唯一、大規模破壊を修復することのできる権能を持っているからである。草薙くんあたりはすごく羨ましがっていた。

「えーと。今回は・・・。うん、これにしよう。」

 そうして選んだのは神獣の討伐依頼だ。ただの人間ならとても危険だがカンピオーネからすればとてもお手軽な仕事なのだ。それに場所もドイツだ。久しぶりに『赤い鴉』(ロートクレーエ)の本部に顔を出すのもいいかもしれない。
 そう思い、依頼を受けると言う旨を伝えて、いざドイツへと準備を始める。こういう時に移動用の権能があると便利である。
 支度を終えて、(といっても制服から私服に着替えただけだが)いざ出発と思い、権能を発動する。
 瞬間、部屋にどんどん白い霧が立ち込める。
『霧の境界線』
 天之狭霧神(アメノサギリノカミ)より剥奪した権能だ。
 天之狭霧神は、霧と境界線を司る神だ。山岳信仰の根強い日本では山頂は聖なる神域として考えられてきた。その聖域である山頂と俗世を分け隔てる霧を神格化した神こそが天之狭霧神なのだ。この神は聖域と俗世を繋ぎ、隔てる存在。故にこの神の権能は土地と土地を接続、または遮断するといった権能だ。わかりやすく言うと、瞬間移動や、脱出不可能な結界を張ったりできる。今行っているのは日本の僕の部屋から『赤い鴉』(ロートクレーエ)までの瞬間移動だ。

「それじゃ行きますか。」

 そう言って気軽に日本を旅立つ。
 こんなこと誰にもできないだろうな。そう考えるとクスッと笑いがこみ上げてきた。
 神を殺した神殺し。カンピオーネ、魔王、エピメテウスの落し子、ラクシャーサ、羅刹王。どれも線の細い体付きをした自分には仰々しすぎる名だ。だけど、どれも自分をとてもよく表している。人を遥かに凌駕した魔力、非常識な運動神経、さらに神より剥奪した特殊能力付きときた。そんな反則気味の力を振るって今の地位にいる自分にはピッタリな名だと思う。地上の誰ひとりとして僕たちに抗えないからみんなひれ伏す。まさに魔王だな。と、そう思って今度は自嘲気味に微笑む。
そろそろ目的地だ。
そう思って意識を切り替える。
 霧が晴れて、見えた先には大量の機械と

「久しぶりだね王様。来るなら来るできちんと連絡入れてよ?」
「次からは気をつけるよ。」

 狼を思わせる灰色の髪と灰色の瞳をした少女
 『赤の鴉』(ロートクレーエ)副総帥 シャルロッテ・クラウゼヴィッヒがいた。


実は、主人公はクォーターでした。
もうひとつ、設定があるので人物紹介をつけておきます。


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