第88回世銀・IMF合同開発委員会 コミュニケ(ポイント)(平成25年10月12日)
- 開発委員会は、ワシントンDCにて、2013年10月12日に開催。
- 先進国における足元の回復の兆しは、それ自体、心強いものである一方、各国一様ではなく、幾つかの新興経済の成長は鈍化している。増加するボラティリティに対処し、また、力強く、均衡の取れ、持続可能なグローバルな成長を達成するためには、適切な政策対応と改革が全ての所得水準の国において引き続き求められる。世界銀行グループ(WBG)と国際通貨基金(IMF)は、ボラティリティや下方リスクをもたらす新たな原因の発生に対して、引き続き警戒する必要がある。我々は、IMFが、成長や雇用創出についてのみならず、リスクと脆弱性の分析やシステム上重要な国々における政策転換のグローバルな影響の評価について、一層重視していくことを歓迎する。国際貿易システムの開放性と公平性を確保し、増強することは、引き続きグローバルな成長にとり不可欠であり、この文脈で、我々は、来るべき世界貿易機構のバリ閣僚会合において進展がみられることを期待する。
- 過去二十余年に亘るとてつもなく大きな進歩は、開発における風景を一変させた。そこでは、貧困の削減と繁栄の共有の促進に資する新たな機会が生まれるのみならず、持続的な進歩に対する新たなリスクをも招くこととなった。1990年より世界的な貧困率は半減したものの、途上国における進歩は国によって大きく異なっている。低所得国のほぼ半数の国が、特別な課題に直面し、世界における極度の貧困の割合が増加する拠点となっている、脆弱・紛争後状態(FCS)に分類されている。
- 多くの途上国では、成長は不平等の増加を伴ってきた。世界の貧困層の大部分は、依然として中所得国に居住しているように、中所得国への移行は、貧困の終焉を示唆するものではない。繁栄の共有を作り上げる持続的な進歩がないことは、不安定を引き起こし、インセンティブを歪曲させ、上方への流動性を減退されることにより、成長を阻害する結果となる。特に若年層や女性に対する雇用の創出や民間部門の発展は、包摂的な成長にとって鍵である。
- 世界銀行グループの二つの意欲的な目標、すなわち、環境上、社会的、経済的に持続可能な方法で、2030年までに極度の貧困を撲滅し、繁栄の共有を促進することは、我々の先の会合において承認され、ポスト2015のアジェンダに対して大きく貢献するものである。これらの目標を達成するために、我々は、新たな世界銀行グループの戦略を強く支持する。我々は、この機関を、公的部門や民間部門とパートナーシップを組み、対話と行動を通じてグローバルな開発課題に貢献し、顧客に対してカスタマイズされた開発のための解決策を届けることを支援し、開発において役立つ知見の発展に資する「一つの世界銀行グループ」に位置づけなおすことを歓迎する。
- 世界銀行グループは、個別の開発課題を抱える国々を支援し、彼らが貧困を撲滅させ、将来的な財務的、経済的、社会的、環境上の課題に対する耐性を構築するのを助けつつ、グローバルな開発リザルツを提供するのに重要な役割を果たしている。我々は、各国の多様性や開発上のニーズを認識した継続的な強い顧客指向の必要性を強調する。貧困の最も高く生じる国や地域、脆弱・紛争後国、小国が直面する特有の課題に対しては、特別な注意が払われる必要がある。我々はまた、国際社会が気候変動を含む主なグローバルな課題を解決するのを支援する世界銀行グループの重要な役割を再確認する。最大限のインパクトを達成するため、世界銀行グループは、国内レベル・国際レベル双方においてパートナーとなる機関や民間部門と連携し、その目標を追求するべく南南協力や地域統合を促しつつ、その取組みに当たって選択と集中を明確にする必要がある。
- 戦略の成功のためには、効果的で、タイムリーであり、主な課題に関する改革や特定の取組みに関する明確な順位づけや世界銀行グループのステークホルダーとの通常のコミュニケーションを含めた、適切に管理されたインプリメンテーションが必要。エビデンス・ベースの国別支援モデル、世界銀行グループの内部組織、システム、プロセスや手続に係る改革、必要な文化の改変を促し、設計するような人的資源やリーダーシップに関するマネジメントが重要。我々は、世界銀行グループが、改革の移行期間の間、そのマンデートを引き続き行使することとともに、顧客のニーズをいっそう満足させるために、進捗を測定し、成果を評価し、行動を調整し、リザルツを見せるためのモニタリング及び評価に関するフレームワークを改善することを要請。新たな戦略を反映したアップデートされたコーポレート・スコアカードは、我々の次の春会合までの間に整備されるべき。
- 全ての加盟国による強力な参画を伴った力強いIDA17次増資は、世界銀行グループの戦略を提供するために基盤となるものである。IDA支援対象国のニーズや需要は引き続き高く、我々は、IDAが実質的なリザルツを達成できるような規模、質、政策内容を伴う増資を模索しなければならない。
- 我々は、世界銀行グループが戦略の意志を実現できるよう、既存のリソースをよりよく活用し、その財務能力を強化する方策を歓迎する。我々は、世界銀行グループが、リスクに対する適切な注意を払いつつ、一層の開発援助を提供する世界銀行グループの能力を高めるために、歳入の成長見通しを引き上げ、組織上・業務上の効率性の向上を通じた、より引き締まった費用ベースの実現に向けた支出の見直しを行い、内外のリソースをよりよく動員することを想定した財務工程プログラムを追求することを要請。我々は、世界銀行グループが、新興国や低所得国における成長や繁栄、貧困削減に重要なインフラに対する追加的な長期資金を動員し、呼び水効果をもたらすイノベーティブなアプローチに取り組むことを歓迎する。
- 我々は、よりよい分析、目標を絞った行動、より強力なモニタリングと評価を通じたジェンダーの平等に向けた世界銀行グループの支援をいっそう主流化し、強化することの重要性を強調する。ジェンダーの平等は、それ自体の重要性と共に、貧困の削減や繁栄の共有という包括的な目標を達成する手段としても重要である。我々は、ジェンダーの平等を促進させるため、世界銀行グループの戦略をアップデートし、更新する継続的な作業を歓迎し、一年以内での進捗報告を期待する。
- 我々は、世界銀行グループとそのスタッフに対して、グレート・レイクやサヘル地域のような脆弱な状況における彼らのイニシアチブや、中東地域における難民に係る彼らの取組みにつき、高く評価する。我々はまた、リエンゲージメント後のミャンマーに対して、世界銀行グループが支援を強化していくことを歓迎する。我々は、世界銀行グループが、国連システムと連携しつつ、脆弱性や耐性に対処し、経済的な機会や統合を促進するイニシアチブを通じて、サヘル地域やアフリカの角においてコミットメントをいっそう深めていくことを要請。我々は、持続的で安価なエネルギーへの解決に向けたものを含めた、変化をもたらす地域的なプロジェクトに対する世界銀行グループの新たな支援を歓迎。我々は、世界銀行グループと国際通貨基金が、健全な経済改革、雇用創出、能力強化プログラム、紛争の影響を受けた人々への基本的な人的ニーズ、近隣国への影響の軽減に係る支援を含め、中東・北アフリカ地域における取組みを拡大することを促す。
- 開発委員会の次回会合は、ワシントンDCにて2014年4月12日(土)に開催予定。