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社会保障のバランス―どんな社会がいいですか

 朝日新聞の世論調査で、安倍首相が消費増税を決めたことを「評価する」が51%に達した。

 反発も根強いが、首相は「社会保障を安定させ、財政を再建する」と強調する。

 いま一度、考えてみたい。

 社会保障をどう維持していくべきだろうか。

■家族と政府と市場と

 参考にするのは、都立高校で政治・経済を教える宮崎三喜男教諭(36)が、授業で使う教材である。

 丸は、日本、スウェーデン、米国の福祉サービスの量を模式的に表している。

 どの国でも、子どもやお年寄りの面倒をみたり、病気を治療したりといったサービスは、何らかの形で確保されている。

 違うのは、そのニーズをどこで満たしているかだ。

 日本は伝統的に家族(F=ファミリー)、特に女性の無償労働に頼むところが大きく、社会進出を妨げてきた。そのかわり税などの国民負担は比較的低く抑えられてきた。

 スウェーデンなど北欧の国々では、政府(G=ガバメント)の役割が大きく、貧富にかかわらず誰もが比較的平等に福祉サービスが受けられる。ただし、国民負担は重い。

 逆に国民負担が低い米国は、市場(M=マーケット)への依存度が高い。お金持ちだと「超豪華」なサービスを受けられるものの、貧乏だと何も利用できないことがある。

 政府の役割を削って税金を抑えれば、家庭や市場の役割が大きくなる。この分担割合は、人々がどんな社会にしたいかを映し出す。

 宮崎教諭は生徒に問いかける。「あなたは、どんな社会がいいと思う?」

■みんなが潤うか

 世論調査で示された消費増税への評価からは、政府にそれなりの役割を果たして欲しいという思いが伝わる。

 ただ、今後も消費税率を上げ続けることに抵抗感を抱く人は少なくないだろう。

 別の道として、「増税より経済成長を」という主張がある。「企業が栄えれば、みんなに恩恵が及ぶ」という考え方だ。

 安倍政権が打ち出した法人税減税にもそんな理念がある。

 高度成長期の日本では男性の稼ぎ主が安定した仕事を得て、会社の成長や年齢の上昇とともに収入が増え、家族を養うという仕組みが主流だった。政府は輸出促進策を講じ、公共事業で建設業界を支えた。

 日本のFは「日本株式会社」に裏打ちされていたといえる。

 問題は、このモデルが崩れていることだ。グローバル競争の激化、高齢化と人口減による需要の減少を背景に、低賃金で不安定な仕事に就く人が増えた。従来の仕組みではこうした層の生活が支えられない。

 もちろん、企業の成長は重要である。

 ただ、それが昔のように社会全体を潤せるのか、多くの人が疑問を感じているようだ。世論調査でも「法人税減税が雇用や賃金の増加につながる」と思う人は2割にとどまる。

 一方、消費増税で難しいのは、増税分がそっくり社会保障の充実にはつながらないことだ。政府の借金があまりに大きく、高齢化が急速に進むので、増税分の過半は財政の穴埋めに回さざるをえない。

 比較的所得のある人は、増税でもむしろ社会保障のサービスが低下する可能性が高い。

 典型は、医療機関に払う窓口負担だ。年収770万円以上からは月額の上限を引き上げる検討が進んでいる。

■「信頼の回路」築けず

 欧州の福祉国家では「負担が増えても受益がある」という信頼の回路が、政府と国民の間にあるとされる。70年代初頭までに付加価値税を導入し、経済成長による税収の自然増を社会保障に回せたからだ。

 日本では高度成長期に老人医療の無料化など社会保障を充実させ、受益が負担に先行した。その後、財源の手当てが遅れ、「信頼の回路」が築けないまま負担を引き上げ、受益を抑え込む必要に迫られている。

 民間がサービスの質を競う「市場の力」を活用し、社会保障を効率化する工夫が要る。

 しかし、市場に任せれば自然に効率化し、費用が抑制できるとも限らない。世界で医療費が突出して高いのは、国民全体をカバーする公的医療保険がない米国である。

 Gの割合を維持するには、今の世代が負担増を受け入れていくことが必要だ。同時に、家族の衰退を補ううえでも、福祉サービスを供給するNPOなどの社会連帯(S=ソーシャル)の役割を重視していきたい。

 FとGとM、そしてS。皆さんはその構成をどうすべきだと考えますか。

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