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“楽曲の力”で考える 「あまちゃん」がヒットした理由

楽天SocialNewsに投稿!
2013年10月5日 掲載

冒頭からツカミはOK! 家族揃って口ずさみたくなる


能年玲奈の魅力に加え…/(C)日刊ゲンダイ
 とことん惜しまれながら、最終回を迎えた「あまちゃん」。周囲にも「あまロス(あまちゃんロス症候群)」が続々の今日この頃だが、連続ドラマの楽しさを復権した「あまちゃん」は、同時に“家族で聴く”音楽の楽しさも大いによみがえらせた。

 まずは朝8時になると流れてきた、あの軽快なオープニングナンバー。ノイズミュージックやフリージャズの分野でも名を馳せた、大友良英の手によるものだが、コントの舞台転換の際に流れるようなコミカル成分と甘酸っぱい懐かしさが交錯する大名曲。あのワクワク感に導かれて、テレビの前で家族揃って心を躍らせた方も多いのではなかろうか。

 冒頭からツカミがOKなのだから、当然、本編でも音楽の力はスゴい。物語の中で大きなキーワードになっていたのは、母・春子(小泉今日子)が、アイドル歌手を目指していたティーンエージャーの頃、今から30年前のニッポン。西暦でいえば1980年代だが、まだ着うたもiTunesもなかったあの時代、日本のヒットチャートは、アイドルやニューウエーブ、ムード歌謡や演歌までもが混然一体となってランキング争いをしていた。聖子ちゃんやキョンキョンがアイドルステップを踏む傍らで、演歌歌手の大川栄策が特技としてタンスを背負い、RCサクセションが「バンド」としての存在感を見せつける――そんな時代だったのだ。

 だからこそ、いい曲はジャンルを問わず、世代を超えて愛された。「あまちゃん」の背景を彩っていたのは、そういう時代の名曲たちである。その詳細は脚本家・宮藤官九郎セレクトによる「春子の部屋」という2枚のコンピレーションアルバムで一目瞭然だが、松本隆(作詞)+筒美京平(作曲)というゴールデンコンビや、大瀧詠一、YMO、井上陽水、松任谷由実、沢田研二、三浦百恵(山口百恵)といった豪華すぎるクリエーターたちが手腕をふるった楽曲は、どれもこれも「思わず口ずさみたくなる」、歌ごころとポップの魔法にあふれている。

 ただし、「あまちゃん」における音楽は、単純にノスタルジーだけに偏ったものではない。小泉今日子が歌う「潮騒のメモリー」も、実はふんだんにイマの気分を含んでいるし、母娘揃って振り付けをマスターしたファンも多いと聞く。「あまちゃん」が、“みんな揃って”見ることのできる連続ドラマの魅力を取り戻したように、「潮騒――」もまた80年代と現在、そして2世代を結ぶ大きなブリッジになったのだ。(音楽ライター・結城雅美)

▽ゆうき・まさみ 月刊誌「音楽と人」編集長、音楽サイト「Listen Japan」編集長を経て、現在はフリーランスで編集および執筆を行う。ラジオの構成作家としても活動中。
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