<2013年7月=東スポ携帯サイトより>
007シリーズの最新作「ボンド24(仮題)」の製作&公開が正式に発表された。公開は2015年。前作に続きサム・メンデス監督がメガホンを取り、ジェームズ・ボンド役もダニエル・クレイグが4度目の登板となる。
第1作「ドクター・ノオ」(1963年の日本初公開時のタイトルは「007は殺しの番号」)から半世紀以上も続く超人気シリーズ。それだけに映画やドラマに限らず数々の亜流作品を生み出したし、数字によるコードネームを囚人チックなモノからオシャレなイメージとともに流行させたのも、このシリーズの功績だ。
亜流と呼べば聞こえも良いが要はパチモン…。あまりに堂々と007シリーズを真似てしまった映画が存在する。それが昭和41年12月に、日本でも公開されたイタリア映画「077/地獄のカクテル」だ。
「マカロニ・ウエスタン」なんて言葉が一般化しているほど、他国の売れ線映画を、ひょいと真似してしまう技術に長けたイタリア映画界だけに、同じ欧州の英国産シリーズをマネするなど朝飯前。この「077」という紛らわしいタイトルは邦題だけではなく、原題からして「AGENT 077:MISSIONE BLOODY MARY」となっているから完全な確信犯だ。
公開直前には本紙にも「楽しさ007の11倍」なんて、憎たらしくもキチンと計算が合っている比較コピーとともに広告が掲載されている。
そこには「全ヨーロッパをかけめぐり 最新スパイ兵器の大攻防!」の煽り文句とともに、本家007ことジェームズ・ボンドよりも11倍は腕利きと思われる国際諜報部員ディック・マロイ(演じたのは“67年型世界のヒーロー”ケン・クラーク)の特徴がこれでもかと表記されている。
「指輪にしかけたノコギリ」「懐中電燈から飛出すナイフ」「6連発ピストルから7発目」「焼けた紙の文字を読む薬」「スーツケースで運ぶ原爆」「完全殺人スーパー・サイレンサー」。
ディック・マロイはこれらの武器とともに、勇猛果敢に国際スパイ組織「ブラック・リリー」と戦うのである。
この広告を眺めているこちらが、パチモン商品を見る偏見の視線がバリバリなため、ボンドならぬマロイの武器すらも、洗練された英国産スパイのボンドと比べると、どこかサンスターのスパイ手帳と同レベルな感覚を抱く…。
47年も昔のことだ。おそらく本家007シリーズと間違えて映画館に入ってしまい、ついうっかりと、この077シリーズを鑑賞してしまった人もいたことだろう。
いや昭和41年といえば本家007シリーズですら、まだ4作目の「サンダーボール作戦」まで。ショーン・コネリー以外のボンドが存在していなかった頃のことだ。映画を見終わり、映画館ら出てきた後でさえも「今度の007は主役がジェームズ・ボンドじゃなく、ディック・マロイって奴なんだよ」なんてノン気に話していた人すらも、いたかも知れない。
こういったパチモン映画は大抵、一発屋…というか、いわゆる出オチで終わるものだが、驚くべきことに、この077シリーズは第2作「077/地獄の挑戦状」、第3作「077/連続危機」と全3作が製作され、いずれも日本で公開されているのである。
海外ではDVDも発売されているようだし、単に歴史の闇に埋もれてしまっただけで、意外やパロディ精神に溢れた人気シリーズだったのかも知れない。