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石川のニュース 【10月13日03時02分更新】
花いろ湯涌、衰え知らず ぼんぼり祭りに1万人
午前9時、祭りグッズを販売する湯涌みどりの里を訪れると、既に約2千人の列ができ ていた。メーン行事の「ぼんぼり巡行」は午後8時からである。 「朝の7時半から3時間並び、お目当てのグッズを手に入れました」と笑顔を見せるの は越前市の会社員紙谷明彦さん(31)。雨で全身びしょぬれだが、グッズはしっかり抱 えて守っている。 湯涌温泉では前日から9旅館全てが満室である。そんな中、埼玉県所沢市の会社員中村 昭道さん(27)は宿泊予約を入れることができた。もう10回以上、湯涌を訪れている 。 「『花いろ』がなかったら、湯涌を知ることもなかった」という中村さん。なぜ何回も 足を運ぶのか尋ねると「最初は、単に作品の舞台を見たい気持ちで来ていた。でも今は湯 涌のゆったりとした雰囲気が落ち着くんです」と返ってきた。 「花いろ」は、旅館に住み込んで働く女子高生の成長を描く、ほのぼのとした物語だ。 大学コンソーシアム石川の事業で学生と祭りの調査に訪れていた金沢学院大の酒井亨准教 授は「首都圏の癒やしを求めている人たちに湯涌の空気が合った」と推測する。 祭りはファン同士やファンと地元住民をつなぐ役割も果たすようになってきた。東京都 清瀬市の公務員高橋栄一郎さん(44)は昨年の祭りで相部屋になった4人と1年ぶりに 再会した。「旅館ではビジネスライクではない本当のおもてなしを受け、湯涌が本当に好 きになった。旅館の人にもまた会いたいので、来年以降も来ます」 「花いろ」というアニメをきっかけに、湯涌で癒やしや人のつながりを見つけ、また訪 れたくなる。そんなところに、1万人の来場者を集めた理由があるのではないか。 旅館の前で、車体に「花いろ」の主人公を大きく描いたスポーツカーを見つけた。持ち 主は自営業松田達也さん(39)=金沢市森山2丁目=。これまでにファンの交流イベン トなどを開催してきた。「みんな、あちこちから高いお金をかけて来てくれる。そうした 人たちの訪問が絶えないよう、自分たちも地元の協力を得ながら盛り上げたい」。自ら活 気を生み出そうとする姿勢が大事なのだろう。 湯涌温泉観光協会の安藤精孝会長は「湯涌を思ってくれるファンの声を大事に、独自の アイデアを作り出さんなんね」と語る。 暗くなった温泉街で「ぼんぼり巡行」が始まった。願い事が記された「のぞみ札」入り の籠(かご)を白装束の行列が担いで歩く。アニメがきっかけで生まれた地域の元気がも っと大きくなりますように。そう願いながら、しっかり目に焼き付けた。
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