奇襲に出た和田監督だったが…【拡大】
指揮官に代わって裏側を明かしたのは中西投手コーチだ。「長打でもやられていなかったし、トータルで考えてマエケンに当てた」。広島戦は先発2戦2勝。7月7日には敵地で前田健に虎投で唯一投げ勝っていた。その実績にかけた。
重圧を取り除き、かく乱する意図もあったのか首脳陣は“鉄のカーテン”で守ってきた。先発候補3人同時にキャッチボールを行い、登板日を推しはかる目安となるブルペン入りのタイミングもそろえた。音漏れを防ぐため、扉という扉を封鎖し、近づける通路は通行禁止になった。
また、藤浪自身も試合直前まで“偽装”。登板日に使用する試合用の黒一色のグラブを使わず、黒地に赤色の練習用のグラブを手にした。ぎりぎりまで、あらゆる手を使っての奇襲だったが…。
「調整するしかないので。(勝ち進んで)登板があると信じて調整したいです」
敗戦投手となった藤浪が声を絞り出した。大阪桐蔭高時代は負ければ終わりの甲子園大会で春夏連覇。聖地では今季5勝(1敗)の“申し子”もプロの短期決戦では、はじき返された。
「切り替えていくしかない」。和田監督にも悲壮感が漂う。13日に敗れればジ・エンド。4度目のCS進出ながらこの日の黒星で通算1勝7敗。これまで一度もファイナルステージに勝ち上がったことはない。歴史の壁を破るためには土俵際からの底力を信じるしかない。(長友孝輔)
3ラン初被弾
◎…藤浪がレギュラーシーズンを含め今季142回2/3で11本目の被弾。これまでソロ、2ランだけだったが、初めて3ランを浴びた。
◎…阪神が第1戦に敗れ、ファーストステージに出場した4度すべてで第1戦を落とした(通算1勝7敗)。過去6年間を見ても、セ・リーグで第1戦に負けてファイナルステージに進出したのは、09年の中日だけ。
(紙面から)