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−「禁じられた歌」のリリース時以来、インタビューをさせていただくのは約1年4ヶ月ぶりになりますが、この期間は、基本的に今作「BAGHDAD SKY」の制作と全国ツアーなどでライヴをよくやっていたっていう感じなんですか?

亜矢(以下A):そうですね、バンドのメンバーとコツコツと固まっていきたい時期だったので、ツアーも含めライヴが多かったですね。今作「BAGHDAD SKY」のオケ自体は、もう「禁じられた歌」の時に出来上がっていたので、ライヴで固めたいなと思ってて。

−初の全国ツアーをやってみてどんな感想を持ちました?

A:まだまだ未熟だなっていうのを色々なところで感じたんですけど、ライヴを重ねる度にバンドのメンバーとの精神的な部分での繋がりというか、何でも打ち明けられるようになったという部分は、すごく自分にとってプラスになりましたね。

−僕、12月10日の渋谷BOXXでのツアーファイナルのライヴを観たんですけど、デビューから今日までの亜矢の集大成みたいなものを見ているような感覚に陥って、勝手に感動していたんですけど、亜矢さんの中でもある意味、集大成的な感覚っていうのはツアーファイナルをやっていてありましたか?

A:ひとつの区切りかなとは思っていましたね。でもあの日のツアーファイナルのライヴは空調の故障もあってスモークが異常に出てしまったり、別な意味で悔しかったライヴでした(笑)。あと照明も前半は暗過ぎて、ギターのフレットが全く見えない状況だったり。そういうこともあって、後から悔しさを噛みしめつつ、次のワンマンに向けて今はやってます。

−観てる側からすると、映像的に曇ってる中に影が浮かび上がってくるっていう演出だと思っていました。あと、あの日のライヴの時点で今回のアルバムに収録されている新曲が披露されていましたけど、あそこで新曲を披露したのは、新しい自分を早く見せたい気持ちが強くかったから?

A:そうですね。あと、どういう反応をするか楽しみたかったし。

−実際、あの日歌ってみて、感覚として自分ではどうでした?

A:ありかな?って(笑)。「ミス・ロックンロール」みたいな曲でもありかな?と思って。要するに自分が楽しんでファンも楽しんでくれたら、それに越したことはないから。

−それを確認できたと?

A:そうですね。

−あと、当時まだ曲名が決まっていなかったので、僕の記憶違いだったら申し訳ないんですけど、あの日のアンコールのラストで披露した曲は「BAGHDAD SKY」のラストの曲(「バグダッド・スカイ」)ですか?

A:そうです。

−あの曲をライヴのラストで聴いた時、かなり涙腺が緩んだんですけど、やっぱり歌ってる側からしても結構気持ちが高ぶりましたか?

A:まだまだあの曲を突き詰めていなかったというか、手探りな感じだったんですけど、今回の作品の中でも結構好きな曲で。本当のこと言っちゃうと、照明で目がクラクラしてて倒れる寸前で、でも「歌いきったぞ!」という感じでした(笑)。締めにはイイかなと。

−ちょっとした達成感というか。

A:はい。

−あと、去年のツアー中には会場と通販で「AYA BITCH PROJECT」というCDを出していましたよね。あのCDも「イチ早く新曲を届けたい」っていう気持ちから出す話になったんですか?

A:そうですね。結構今作(「BAGHDAD SKY」)を出すまでにすごく時間が掛かってしまったんで、日頃応援してくれているファンに対してのプレゼントというか。絶対世に出すことはないだろうと思っていた「EDEN」という曲もデモのまま入れて、喜んでくれてたから良かったな、と。

 今回で「hotexpress」としては3回目となった亜矢へのインタビュー。デビューアルバム「戦場の華」、7 ROCKS ALBUM「禁じられた歌」、それぞれのリリース時にやらせていただいたインタビューの内容もかなり濃いものとなったが、セカンドフルアルバム「BAGHDAD SKY」のリリースから2004年最初のワンマンライヴの間のタイミングでやらせていただいた今回のインタビューは、亜矢史上というより、「hotexpress」史上で見ても今までにないぐらい濃い内容のものとなった。一点の曇りも嘘も偽りもない彼女の“リアル”な言葉・・・中には話したくない話もあったかとは思うが、それでも真剣にこちらの質問に答え続けてくれた彼女に今僕は感謝の気持ちでいっぱいである。まぁ僕のゴタクはどうでもいい、彼女の言葉を体感してほしい。

対談

亜矢
×
Tetsuo Hiraga

2nd FULL ALBUM
BAGHDAD SKY

01.Blue Butterfly
02.NOBODY
03.1999
04.路上の影
05.we.
06.ミス・ロックンロール
07.雨に唄えば
08.Betty
09.DEAD END
10.バグダッド・スカイ

BVCS-24014
¥3,000(tax in)

2004.6.9 in STORES

(C) BMG FUNHOUSE
http://www.bmgrock.com/aya/index.html

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または過去の作品を知りたい方は
こちらまで

亜矢

−「EDEN」は結構昔からあった曲なんですか?

A:相当昔からある曲ですね。初めて曲を作り始めた頃の曲です。ジョン・レノンの「ラヴ」っていう曲があるじゃないですか。あんな感じをイメージして作ったんですけど、聴いたら「なるほどな」って感じると思いますよ。

−あと、2004年を迎えてからもライヴは何本か行なっていますが、最近では、東京キネマ倶楽部でライヴをやったみたいですね。僕も何回かあそこ行ってるんですけど、今他にはどこにもないようなレトロな会場ですよね。

A:ステージから見渡した風景が相当ステキで、なんか楽しかったなぁ。あの日は全く違うジャンルのバンドがいっぱい集まって、紅一点でやらせてもらったんですけど、主催したJelly→から「是非、出てほしい」って誘っていただいて。東京キネマ倶楽部は過去やった色々な会場の中でもベストに入るかもしれない。

−やっぱりライヴする時っていうのは会場の雰囲気は大事?

A:ありますよね。ステージ低くてお客さんの顔が近すぎると緊張しちゃったりするので。

−前回のインタビューで、ライヴに対して「良い意味で力を抜いて楽しめるようになった」と言っていましたけど、あれから1年4ヶ月経って、最近ライヴをしていて自分の中で変わったなぁと感じる部分とかありますか?

A:そうだなぁ、歌っていてすごく気持ちいい。演奏する側からの一方的なライヴではなくて、ファンと上手く中和されたライヴをしたい気持ちが強いですね。

−すでに6月9日にリリースされた「BAGHDAD SKY」の中で早くも今後のライヴの目玉になってきそうな楽曲ってありますか?

A:やっぱりタイトルトラックの「バグダッド・スカイ」は、次へ旅立てる曲というか、輪廻していけるというか。最後にこの曲をやると、また次が見えてくる、そんな感じですね。あと、「BLUE BUTTERFLY」。この曲はライヴのリハの練習中に数時間で作ってしまった曲なんですけども、全く自分がデモを作らずに作ってしまった曲で、バンドメンバーのアイディアがいっぱい詰まっていて、そこに私のメロディが乗っかって今までとは違う世界観というか、新しいフィールドを見つけたなっていう感じで。新しい亜矢を見せられるんじゃないかなと。最近はいつもライヴのオープニングでやるんですけどね。

−今回のアルバムの曲が出来て、今までの亜矢のライヴと違う世界観を見せられているっていうのは、結構自分でライヴをやっていて感じるんですか?

A:すごく聴きやすい曲、ノリやすい曲とかが増えたからかもしれないですけど、感じますね。で、実際すごくコアなファンの中には「どうしちゃったの?」って言う人もいるし、「最高!」って言ってくれる人もいる。自分の中では、ひとつドアを開ける度にもっと広い世界が広がっている感じでいきたいんですよ。だから次開けるドアはもっと広くいきたいし、どんどん自分の可能性を追求していきたいし。だからこの先、自分がどう変わっていくのか、一番楽しみなのは自分だし。

−どこまで広がっていけるのか?みたいな。

A:はい。だからと言って、自分が今まで築いてきたものとか、信じてやってきたロックとは絶縁しない。それをどう発展させていくかっていう感じですね。

−今作「BAGHDAD SKY」は、「禁じられた歌」の頃から作っていたと言ってましたけど、プリプロとかレコーディングに関しては、いつ頃入っていった感じなんですか?

A:「禁じられた歌」を録音した時と全く同じ時ですね。20曲くらい一気にガーッ!と。

−全収録曲その時には作り上げていた曲なんですか?

A:当初はその予定で録ってたんです。でもアルバム用の曲として集まった曲で、どうしても納得できない曲が3曲ほどあって。このまま出したら絶対後悔するなぁと思って、「やっぱりこの3曲ボツにさせて」って言って。

その後、納得できる新曲が生まれたので、またスタジオに入って。そういうのもあったりして、世に出すのが予定より遅くなってしまったんですけど。

−そこで新たに組み込まれた3曲っていうのは、今回のアルバムのどの曲なんですか?

A:「BLUE BUTTERFLY」、「NOBODY」、「雨に唄えば」。ボツにしてしまった曲っていうのは、カッコ良さだけを追求しちゃった曲で、オケはすごくカッコイイんですけど、いざ録り終わってみると、その中に自分がいないなっていうのがあって、サウンド重視で、その時旬だった音色だったりするんですけど、出来上がってすごく寂しいと思っちゃった。これはライヴでも本当に気持ちを込めて歌えないんじゃないかなって。

−その3曲の中のどれかをいつか自分の歌として録り直して、認められる時がくる可能性はあると思いますか?

A:うん。それはそれで出来上がったものは保留で、いつかもっと自分らしく愛せる曲に変われたらなと思って。

−あと、今回レコーディングに関しては、デビュー以来、3年間一緒にステージに共に立ってきたメンバーと行なったということですが、実際にやってみてどうでした?

A:自分だけでなく周りの意見というのが何気に必要だったというか、何気なく「こっちの音色の方が良いんじゃない?」って言われたことが、出来てみてから正解だったなっていうことが多かったですね。やっぱり日頃一緒にステージに立っている中で、CDを出すだけじゃなくてライヴで曲を聴いて「おぉ!」って感動してもらいたいなっていう気持ちを共に持っているので、一緒にレコーディングすると物事がプラスに動きますよね。

−バンドのメンバーは、どんなキャラクターの方々だったりするんですか?

A:可笑しいですよ(笑)。なんかね、兄弟でもなく友達でもない、もっと違うところにいるっていうか、例えて言うなら“戦友”のような感じがするかな。

−ただ仲良いだけではなく、色々深いところでの絆で繋がっている感じ?

A:それまでは私1人でがむしゃらに頑張ってきたところがあって、周りを見てなかった。でもステージにはちゃんと4人がいて、同じ曲を一つになって弾いているわけだから。今はライヴ中に目が合っただけで暗黙のテレパシーのような、「イイね!」っていう合図とか、すごく心強くて。私がやっぱり絶好調の時は、やっぱり彼らも絶好調になっていくし、私がダメな時は全体もダメになっちゃうんですよね。

−完全に4人でひとつ。

A:うん。

−そのメンバーたちと今作を完成させた時の心境を聞かせてもらえますか?

A:「楽しかったね!」って、最初そう言いましたね。「その時出来ることをやったよ」って、「良いアルバム作ったね」ってみんなに言ってもらえて。

−じゃあ1stフルアルバム「戦場の華」が出来た時とはまた全然違う喜びというか。

A:うん、1stアルバムは本当夢の中の出来事だったような。1stアルバムを色々な人に「すごいね!」って言われたけど、その言葉には「こんなメンバーとやれて、すごいね!」っていうことをひしひしと感じていた部分があって、私の楽曲のことではないんだろうなって一瞬思った時もあったし。でもそれがあったから「禁じられた歌」が出来て、それがあったからまた次が出来て。で、これを出したから次に行ける、次を出したいっていう。

−このアルバムに関しては、胸を張って「私たちのアルバム」って言える?

A:このアルバムに関してはそうですね。次にはもっと・・・。

−すごいのが待ってると?

A:はい(笑)。

−今作「BAGHDAD SKY」のタイトルなんですが、「バグダッド・スカイ」という曲がありきだと思うんですけども、このタイトルにした理由を聞かせてもらえますか?

A:映画『バグダッド・カフェ』がすごく好きだったので、「バグダッド・スカイ」という曲を作った時のイメージが光に溶けいりそうな・・・まぁゴーストですかね。これから進む場所が眩しくて見えない、そういう心境だったということと、このアルバムをちょうど録り始めた時にイラク戦争が始まって、レコーディングでいつも夜中3時、4時まで掛かって家に帰ると、テレビを付けるとバグダッドのことしかやっていなかったんですよ。

で、地上ではすごく醜いことが巻き起こっている中で、いつ来るか分からない平和を夢見て、バグダッドの空にはそういう希望とか願いとか、色々な人の想いが渦巻いているように私には見えて。その時の自分の心境とすごくリンクしたというか、私も今回アルバムを出せるかどうか、すごく不安だったし、本当は「出せないかも」ってちょっと思ったりしていて、諦めた時もあったんですけど、最後の最後に「BAGHDAD SKY」っていうタイトルを決めたのが、果てしなくどこまでも晴れ渡ってる、眩しいギラギラした空、私はそこに行きたいって。空に行きたいんじゃなくて、眩しい方向へ進んでいきたいなって本当に思って。それは私がそうやって望むときっとそこに行けるんですよね。そんな想いを託しましたね。

−それでは、その「BAGHDAD SKY」の各収録曲について聞かせていただきたいんですが、まず1曲目の「BLUE BUTTERFLY」。この曲に関してはどんなイメージを膨らませながら作っていったんですか?

A:これはですね、私最近ちょっとドラムをやり始めまして、リハの休憩タイムの10分とかの間なんですけど(笑)、一生懸命叩いている時に、バンドのギタリストが「BLUE BUTTERFLY」のリフを弾き出したんですね。それからどんどん2人で盛り上がっていって、サビの部分とかガーッ!てやってたら、「イイじゃん!これ曲にしようよ」って。そこからライヴ用のリハを一旦中止して、4人でセッションしているうちにすぐ出来ました。

−その時にある程度固めてしまった?

A:うん。

−すごいですね。完全に即興だったんですか?

A:即興で。で、その2日後にライヴがあったんですけど、そこですぐに披露した。

−早いっすね(笑)。その時は「おととい出来た曲です」とか言ったんですか?

A:言ってないです。

−誰もそんなこと思わないですよね。

A:スラーッとやっちゃった。

−じゃあもう今までの亜矢さんには無い作り方というか。

A:その時のアンケートとか見ると意外に反応が良くって。結構みんなビックリしてましたね。下手クソでビックリしてたのか分からないけど(笑)。みんなちょっと固まった感じになっていたんじゃないかな。これはちょっと面白いなと。

−「BLUE BUTTERFLY」という言葉自体は、何を形容した感じなんですか?

A:私の一番の親友である子の腰にキレイな青い蝶々のタトゥーが入ってるんですよ。彼女、突然軍人さんと結婚して海外に行っちゃったんですけど、すごく自由な女の子で、蝶のようにいつも色々な男のところに留まっては、最後はすごく幸せになって飛んでいったなっていう。あと、東京に来て行った海に結構大きな青い蝶々がいたんですよね。いるべきじゃない場所に蝶々が飛んでるっていう現実に、すごく感動しちゃったんですよ。そういう自由な感じで、そこが海でも空でも海外でも宇宙でも、ひらひら飛んでいけたらステキだなと。そんな感じのイメージですね。

−続いて、2曲目の「NOBODY」。この曲はどんなイメージを広げて作っていった感じですか?

A:私、よく街に出てすごく不安になることがあるんですよ。「私、生きてるのかな?」とか(笑)。で、自分の影を見て「あぁ生きてる」って。もしかしてさっき車が通ったところで本当は死んでいたんじゃなかな?って、よく思ったりして。自分が今生きてるっていう象徴は影と血だと、ずっと思ってるんですけど、街に行くと自分の存在もそうだけど、言葉を交わさないですれ違う人たちっていうのは、すべて他人というか、その人の人生には現れていない人間というか、そう思うと例え生きていてすれ違う人たちがいても、私の人生に関わらなかった、誰でもない「NOBODY」な人。最近ちょっと目が悪いせいかみんな同じ顔に見えて、みんな同じようなファッションしてるし。顔とかそういう肉体っていうのはあってないようなもので、魂の方が生きてるんじゃないかなっていうか・・・ごめんなさい、ちょっと狂ってる(笑)。

−いえいえ(笑)。

A:神様が人間を作ったって言われてるけど、誰も会ったことがないんですよね(笑)。そういうものに囚われてるだけで。じゃあ自分が神でイイじゃんって。自分の神は自分だ!みたいな。すべての決定権を持っていて、幸せに向かっていけるのも自分、陥るのも自分。

−その感覚はすごく分かりますね。あと、この楽曲自体は今までの亜矢の楽曲の中でも超攻撃的なナンバーの部類に入りますよね?

A:リハに行く前にちょっと時間があったから、部屋でギターの練習をしていたんですけど、そこでふと思いついたのがイントロのリフ。で、スタジオ行ってまた弾いてるとメンバーが加わってきて、適当にジャムって。そこからとにかく「何故なんだ!」っていうことを叫びたかった。「何の為に生きてるんだ!」、「私は誰なんだろう!?」みたいな。

なんかそういう風なシャウトとかを付けていくと、必然的にすごく攻撃的になって、「何の為に生まれたんだよ!」みたいな(笑)。

−さっき話していたような内容のところの葛藤をそのまま爆発させたというか?

A:そうですね、気持ちって音になるんですよね。一番アグレッシブな曲ですもんね、今作の中で。

−続いてもかなり暴れる気満々の一曲になっていますが、3曲目の「1999」。この曲にはどんな想いが込められているんですか?

A:前からデモでは完成してた曲で、なんとなく出すタイミングじゃないなって思って温めていたんですけど、特に今自分がどこかに向けてものすごい勢いで突き進んで行ってる感じがして、何か吹っ切れた感があったり。だからもっと加速をつけて走れるような曲が欲しいと思ってたら、これがあったなと。とにかく作った当時の、モヤモヤを吹っ切りたいというか、そんな時に出来た曲だったので、それを一方通行の愛に例えて作り上げましたね。

−何故「1999」というタイトルにしたんですか?

A:1999年に出来たから(笑)。私、お酒ですごく太っていた時期があって、ほぼ毎日のように夜中2時くらいにウォークマンをして淡島通りを2時間くらい掛けて歩いて往復していたんですけど、その時ってまだデビューも決まってなかったし、とにかく気持ちだけはすごく爆走していて、それが音になったって感じかな。

−1999年となると少し前の話になるんですけど、その年っていうのは亜矢さんにとって、どんな年でしたか?

A:住む部屋を失くして東京でちょっと浮浪者になった時があったんですけど(笑)、やっと友達のところに居候させてもらいながら頑張って貯めたお金で部屋をやっと見つけた時かな。またそこからスタート出来た。とにかくこの時はすごくハングリーで。

−そんな時期に生まれた曲なんですね。

A:でも、今こうしてアルバムに入れても全然違和感なくて、何にも変わってないのかな(笑)?私は常に爆走し続けているなという。

−そこの部分に関してはずっと変わらないと。

A:うん。

−続いて、4曲目の「路上の影」ですけど、この曲にはどんな想いを?

A:これも曲のネタはすっごい昔からあったんですけど、サビのメロディだけがあって、もっと温めたかったというか、完璧な姿にしたかったんですよ。で、ここ数年で色々作ってきた曲の中で、Aメロ、Bメロ、サビ、最後のシャウトの部分を、全く別の曲から持ってきて繋げた。それでやっとこの曲が完成されたというか。私、バスに乗ってるのが好きで、バスに乗ると時間がすごいゆったり流れてて。で、一度、横浜の方かな・・・1人で海に行こうと思って。なんか青いラインが入ったバスがあったんですよ。それに乗って海に行ったことを思い出して。このままどこか全然違うところへ行きたいなとか、そんな時に心の支えになるような人が隣にいたらなぁっていう感じで、ロードムービーをイメージして作って曲かな。

−亜矢さんの中ではどういった映画のイメージとリンクしたんですか?

A:ジュリエット・ルイスとブラット・ピットが出ていた『カリフォルニア−狂気の銃弾−』ですね。ジュリエット・ルイスの恋人役のブラット・ピットは殺人者なんですけど、行くあてもなく恋人を連れて、一緒に同乗させてもらう車で旅をしていくんですけど、すごく儚いというか。結局みんな死んじゃうんですけど。例えば歌詞の中に出てくる、“傾いた標識のその先にあるものを2人は信じた”っていう歌詞があるんですけど、ドライブをしていると、標識が曲がっていたりとか、倒れていたりしていて、そこには車のブレーキ痕があったりするじゃないですか。そこでもしかして命を落とした人がいるかもしれない、その死んじゃった人はきっとその標識までが人生の終わりで、でも私たちにはその先に未来があるという。未来がどんなものか分からないけど信じた。目指していく、そこに何もなくても進んでいきたいなという、そういう想いもちょっと入っていたりして。

−実際に「路上の影」を歌っている時はどんな気持ちになりますか?

A:無気力な感じ。でも何か確固たるモノが自分の中にあったりして。曲の最後に“2つの影が路上に”っていう英語のフレーズをシャウトするじゃないですか。さっきも言ったけど、影ってやっぱり生きてる証。しっかりと地上に足をつけて、2つの影があるという。で、道ってどこかに行ける唯一の手段というか、その上に2人が立っているということは、いっぱい道ってあるから自由に選んでいけるんだなって。そういう感じかな。

−続いて、5曲目の「we.」ですが。

A:本当は私、「we.」はずっと歌いたくなかった曲で(笑)。でもデモテープには録ってあったんですよ。

−じゃあ昔の曲?

A:そうですね。この曲を作っていた時はすごく幸せだったんですよ。恋人がいて本気で結婚しようと思ったくらい。で、その時は前に組んでいたバンドのリーダーが死んじゃった後だったから何も無くて、「彼と一緒になろう!」って一度は決めたんですよね。そんなこともあって、男女の「結婚してほしい」「いいよ」って言うところの「いいよ」が、フランス語だと“Oui”(ウィ)になるんですよね。そのフランス語の響きがなんかいいなって。そこから、最後に出来上がった詞の内容から響きが同じの"We"というタイトルになったんですけど。で、その後やっぱり私はどうしても歌は続けたくて、彼からは「歌をやめて欲しい」と言われてしまったんですね。それで、すごく悩んだんですけど、結果、彼にわざと嫌われるようなことをして別れてしまった。幸せだったけど、別れてしまった時の歌なんですよ。だから自分の中では封印したんですけど、そのデモがスタッフから好評で「これは良い曲だよ」ということで。最後まで「嫌!嫌!」言ってたんですよ(笑)。だからもうこの曲については、あまり触れたくないというか、それ以来・・・。

−じゃあライヴとかでも歌わない感じだったりするんですか?

A:ちゃんとしたライヴでは一度も歌ったことがないし、多分今後も・・・(笑)。

−この曲に関して、ひとつ気になった歌詞があって、“世界と相いれない それでいい”っていう言葉が、僕の中ですごく響いたというか、その言葉にすごく憧れたんですよ、その言葉が持つ風景というか世界観に。

A:当時、私たちはすごく未熟というか、若すぎて、何も考えず「結婚しよう」って。ありますよね、そういう時。友達からも親からも、すべての人に反対された。でも「2人で一緒にいれば何とかなる」「2人がいれば何もいらないじゃない」「誰もいらない」。すごく強気で、でもどこか不安で。とにかく恋をしている時って本当に周りが見えないじゃないですか。で、私は東京に出てきた一番の理由である「音楽をやるんだ」ということさえも忘れかけていたというか。それさえも投げ捨てられるほど、夢を見たというか。その時、本当2人は四面楚歌みたいな気持ち。

−僕もそんな感じのことは過去にあって。で、それはそれで結局ダメになって、今こうやって仕事をしているわけなんですけど、仕事を続けていく中でどこか転びそうになったりとか立ち止まりそうになった時っていうのは、逆にその過去はバッドエンディングなんですけど、更に自分を突き動かす原動力にもなっていたりするんですよ。なので、この「we.」を聴いて思い出される映像って言うのは、きっと亜矢さんと近いものがあって、この「we.」に共感した段階で僕の中では原動力の糧となる一曲になってるんですよね。そういう風にこの曲を受けとめる人は別に僕だけじゃなくて少なくないと思いますよ。

A:この曲で共感してもらったら、作って良かったんだなって・・・思います。

−続きまして、「ミス・ロックンロール」。去年末のツアーファイナルで亜矢さんが「ポップでしょ?」って言ったセリフが今でも印象に残ってるんですけど、この曲は結構最初からポップなロックを作ってみようという気持ちがあった上で作った曲だったりするんですか?

A:これは自分の中ではあり得ない曲だったんですけど(笑)、本当にすごく短い時間で作って出来上がった曲で、「これは私が歌う曲じゃないんだな。とりあえず保留して、そのうち誰かが歌ってくれても良いし、別にこのままカセットテープの中で眠ってるのも良いし」っていう感じだったんですけど、そうやって貯め込んでいた曲の中で、ディレクターが「これ、いいじゃない」って。で、「こういうポップなR&Rも入れたらバリエーションあっていいよ」って言われてすごく悩んだんですけど、たまには言うこと聞いてあげようかなって(笑)。「その代わり、歌詞は本当に言いたいことを自由に書かせて!」って言って。最初は歌うのが恥ずかしいと思ったりしたんですけど、今はすごく楽しく歌えるんですよ。私だって楽しむ時間はあるし、バカ笑いもするし、いつまでも悩んでないしとか、そういうヤケクソみたいな吹っ切れた感がこの曲に出てれば良いなと。

−最初は嫌だったけど、徐々に馴染んでいってるんですね。

A:うん。ビートルズとかキッスみたいなポップなロックンロール・チューン、ガールズポップ、ガレージポップみたいな感じに仕上げていって。

−さっき「歌詞は自由に書かせて」ということで、この曲に関しては書いたと言っていましたけど、

どんなメッセージ性というか想いを歌詞に書いたんですか?

A:私がすごく日頃思っていることとか。格好付けてない、気張ってない、私の等身大のような感じがして。15才でバンドを組んだあの頃のままの幼稚な自分というか。

−あと、この「ミス・ロックンロール」のPVには、土屋アンナさんが出演しているそうですが、元々何がキッカケで知り合いになったんですか?

A:アンナちゃんは以前Spin Aquaというバンドもやっていて、一緒に対バンしたことがあって。アンナちゃんが私の曲とか気に入ってくれたりして、私も彼女の声とかすごく好きだったり。で、一緒に飲んだりとかしたら、結構分かり合える子で。

−それで、どういった経緯で「ミス・ロックンロール」のPVに出てもらうことになったんですか?

A:あの子はロックンローラーというか、もう生き方がすごくヤンチャだし、日本のプチ・コートニー・ラヴみたいな感じがしてて、中指を立てた姿が似合う子は絶対アンナちゃんしかいないだろうっていうことでお願いしたら、「やる!やる!」って(笑)。

−実際、PVが上がってきてどうでした?

A:今回は今までと全く違う風にして、自分が履きたいと思ったからなんだけどスカートとか履いちゃったりして。とにかくいつもリハとかでやってる自然の姿。今までだと「カメラに襲いかかってきても良いから、ブチ切れて!」っていうオーダーが多かった中で、今回はカメラがいることを忘れて、「カメラを見ないで自然にやって」って。だから缶ビール飲みながら、みんなでセッション風にやらせてもらったんですけど。なんか爽やかですよね。重いモノがすべてドサッと落ちたような。純粋にすごく楽しめたし。

−続いて、7曲目の「雨に唄えば」なんですが、この曲も「ミス・ロックンロール」に負けないくらいノリの良い曲になってますけど、この曲はどんなイメージを広げて作っていった曲なんですか?

A:これはですね、とにかく疾走感を失いたくなかったんで、しかもギターリフを1本で、あまりド派手な展開の曲にはしたくなかったというか、メロディもいっぱいあってという曲にもしたくなくて。例えて言うならTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか、そういうロックンロールってあまり作ったことなかったんで。あと、映画『時計じかけのオレンジ』で「Singin' in the rain」を歌いながら人を蹴りまくるような、そういう愉快な中の狂気というか、どこか突っ張っていながらもその中身はすごい空洞だったり。私、よくオールナイトの映画を観に行くのが好きで、そういう時に映画を観ていてもすごく心細くなったりとか、でも外に行けば全然平気な顔をしていたりとか。本当は東京に出てきてすごく不安なんだけど、変に強がったりとか。そういった人間のギャップをイメージして作った曲ですね。

−この曲の歌入れはどうでした?聴いた印象では、かなり気持ちよくハマっているなと感じたんですけど。

A:エンジニアの方と2人だけで録ったんですけど、とにかく自分が好きなように歌って(笑)。で、自分が満足いくまで歌ったら「もういいや」って止めて。で、時間も無かったので、そのあとすぐミックスのスタジオに向かって。とにかくサウンドも歌も好き勝手やりました(笑)。

−続いて、「BETTY」ですけども、この曲もレコーディング自体かなり熱い感じだったんですか?

A:うん。すごくテンションが高かったから、速いスピードで録っちゃったというか。何かを考えてるヒマもなく、その時のテンションがそのまま出てる感じで私は好きなんですけど。

−「BETTY」は、想い的にはどんな想いを爆発させている曲なんですか?

A:ある意味、自分の中の嫌いな自分っていうのを“BETTY”というのに例えたのかもしれない。その中でストーリーを組み立てていって。酒にただただ溺れていた時の自分、そんな自分はちっともカッコ良くないし、私が望んでもいない姿だよっていう、そういうのがあると思いますね。特に意識したわけじゃないけど、すごく自分が嫌だった時の自分というか。

−それで自然に出てきた言葉が“BETTY”っていう?

A:“BETTY”っていうのは、私が15才の時に組んでいたバンドの名前で、エリザベス女王の愛称の“BETTY”から取ったんですけどね、「可愛いな」って。ベティー・ブープをイメージしたり。

−マスコットみたいなイラストがありましたよね。

A:そうそう。

−あれが“BETTY”ですか?

A:BETTYちゃん。マリリン・モンローのちょっと違うバージョンっていうか。

−続いて、9曲目の「DEAD END」ですが、この曲ってもしかすると亜矢さんの中で、サウンド的な重さで言ったら一番ヘヴィですよね。

A:そうかもしれない。「NOBODY」と「1999」とこれはヘヴィですね。

−この曲ってライヴでやったことあるんですか?

A:2回ほどあります。けどちょっと失敗したのが、キーが高くて、けっこう歌うのが苦しいんですよ(笑)。レコーディング中、あごが本当に外れかかったというか、すごくシャウトしないと出ないんですよ。曲自体はすごい好きで、すごく疾走してる、なんかどこかに向かいたがっているというか。後から気付いたんですけど、今回は詞に乗り物がすごく出てきてるんですよね。自分はものすごい勢いで次へ進みたがっているんだなと思って。この曲は特にそういうのが特に出てますよね。ぶつかるまで、行き止まりまで行こうって。行き止まりだったらそこも飛び越えてしまおう、クラッシュしてもいいって(笑)。

−そして、ラストのタイトルトラックでもある「バグダッド・スカイ」。去年末のライヴでも「自分にとって大切な曲になりそうです」と言っていた曲ですけど、もう現段階ではかなり大切な曲に育ってるんじゃないですか?

A:うん!メロディもすごい好きだし。さっきも言った通り、輪廻していけるような曲。

−心境的にはどういった心境の時に作った時の曲なんですか?

A:一番最初この曲を作った時、イントロのギターとベースのリフ、それからメロディを乗っけたんですけど。作ったそのリフをずっと録音して、エンドレスでずっと聴いて、とにかくあの『バグダッド・カフェ』のイメージで。ギラギラした、溶け入りそうな、光の中に溶けちゃいそうな、眩しさ。悲しい光なんだけど、すごく温かくてっていう。私、よく自分が死ぬ夢を見るんですけど、本当に死んじゃったって思うくらいすごくリアルで。で、それが肉親に殺された夢とか、誰かに殺された夢とかだったりするんだけど、その時ってすごく真っ白で、霧の中に浮いているって感じがして、目覚めると「あれ!?」って、また生まれ変わったような、生まれてきたような感覚に陥る。そういう夢をよく見てたから、そのリフを作った時にまた真っ白から生まれ変われるという、そういうイメージを大切にして膨らませていきましたね。というか、スタジオで一気に膨らんじゃったんですけど(笑)。

−ここまで大きく膨らんでいった曲っていうのは、結構今までにないくらい感じでした?

A:そうだなぁ、やっぱり空っていうイメージがあったから、果てしなく膨らませられる。どんなに壮大な曲でも、歌っている詞の世界観が狭かったら狭いし、だから今回あえて死んでしまったその先という詞を付けたんですけど。その果てしない先に自分は何を見つけて、何を得たんだろう?っていう。そういう時が来るまで、色々な果てしない場所を果てしなく彷徨って、色々見つけたいなと。ある意味、旅立ちの感じで、また別な場所へ、といったイメージですね。

−今作「BAGHDAD SKY」の収録曲について色々聞かせてもらいましたが、このアルバムを引っ提げたワンマンライヴが8月10日渋谷O-WESTであるんですよね。どんなライヴになりそうですか?

A:やってみないと分からないですけど、悔いのないようにしっかりと楽しみたいな。全力で楽しみたい!あまり期待されてるって感じちゃうと結構臆病だから、プレッシャーとかになっちゃったりするんですけど、自分なりの良いパフォーマンスして、良い歌を歌って、良いライヴだなって、演ってる最中にステージ上で感じられるほどのライヴをする自分に期待したいですね(笑)。最近はちょっとした余裕も出てきて、会場の空気感、ファンの楽しんでいる熱気とか、今真剣に聴いてくれてるっていうバイブレーションみたいなものが伝わって来るのがわかるんです。そういうのも楽しみです。

−そういったライヴを作っていきたいと。

A:まだ中には構えて観ている人とかもいるので、ステージも客席もスタッフも、お互い我も忘れて爆発するようなライヴが出来たらなって。なんて言ったけど(笑)、とにかく楽しみたいですね。

Interviewer:平賀哲雄