福島第1原発:汚染水問題 茨城産シラス、風評被害で受難 買いたたかれ3割安
毎日新聞 2013年09月19日 東京夕刊
「茨城産は売れにくい。在庫がいっぱいだから出荷を見合わせてくれ」。一部の業者は6月中旬から7月にかけて、市場関係者に通告された。7月下旬に汚染水の海洋流出が発覚した際、出荷自粛を求められた業者もあるという。
市内で唯一シラスが水揚げされる大津漁港の周辺では原発事故前、12業者がシラス干しを生産していた。全業者が稼働すれば1日25トンの生産能力があるが、現状は1日500キロ〜1トン。しかも全量を出荷できるわけでなく、残りは在庫として冷凍庫に積み上がっていく。シラス干し生産用の釜は、人件費や燃料費などで毎回20万円が消えていく。
県水産試験場によると、大津漁港のシラスの抽出検査で、放射性セシウムはすべて「不検出」だ。にもかかわらず続く風評被害。杉本佳幸組合長(67)は、安倍首相の「汚染水はブロックされている」との発言に「何でそんな大風呂敷を広げたんだ」と怒りを覚えた。それよりも「政治家はどうやったら風評被害がなくなるか考えてほしい」と注文をつける。